喫茶室に入るや「お水下さい」と、いきなりの懇願がいけなかった。たまさか扉の近くに居たウエイターの顔を見ただけで、店全体に瞬時に拡がる、場違いな闖入者に向けられる怪訝さが察知出来た。頓服薬(葛根湯)を早く服用したかったから、気が急いていたのだ。右脚の鈍痛に加えて高熱で斑になった顔は、かつて行ったことのある、あちらこちらの悪所の地図と化していた。そのうえ水洟が垂れかかっている見苦しい身なりだもの、か...このコンテンツは Fashionsnap.com が配信しています。