高校で写真部に入ったが、部員は俺一人だけだった。現像は顧問の先生が一から教えてくれた。
一番初めの部活のとき、現像の練習をするためのフィルムをカメラに詰め、
写真部の腕章をして校内に撮影に出かけた。
偶然にも入学式の日に一目ぼれしたクラスメイトに出会った。これはチャンスと思い、
「現像教えてもらうためにフィルム一本急いで撮らなきゃいけないから協力してよ。」
といって、一気にフィルム一本撮りきってしまった。
その後、暗室ですぐに現像し、翌日プリントした。指導が良かったおかげで完璧な出来だった。
その最初の一枚を、「俺がはじめて撮ったポートレートで、はじめて撮ったモノクロ写真で、
はじめて現像してはじめてプリントした一枚だから、記念にもらってよ。」
といって彼女にプレゼントした。彼女はすごく喜んでくれた。
でも、その彼女には告白できないまま3年が過ぎ、ただの友達のまま卒業してしまった。
その後クラス会で再会したときに、
「あのときの写真、大事にしてるよ。だってあれ以上によく撮れてる写真ってないんだもん。」
と言ってくれた。周りに誰も聞いているやつがいなかったので、どさくさにまぎれて、
「そりゃそうだよ。だって、一番好きな人がモデルだったんだもん。気合の入れ方が違うよ。
俺だっていまだにあれ以上の写真は撮れてないよ。だって今でも好きなのはおまえだけだもん。」
なんて恥ずかしげもなく言ってしまった。
それから月日は流れ、今年の春、彼女はその写真を持って俺のところへ嫁に来ました。