ビビッドな色のスーツでエレガントにキメたコンゴ共和国の「サプール(SAPEURS)」が、NHKの特番で紹介されてから1年あまり。その後、写真集『SPEURS』〔2015年刊〕をはじめ、近いところでは西武渋谷店での展覧会、それに合わせての本国からの「サプール」来日など、ブームは過熱するばかり。単に上辺のオシャレというだけでなく、精神性の高まり、ファッションを通じて「自分革命」を起こすという、外と内の両輪の相乗効果が見る者を惹きつけるのでしょう。
今、「サプール」に代表とされるファッションルネッサンスともいうべき現象が、ファッションの辺境と思われていた場所で局地的に発生しています。「サプール」を世界に先駆けて写真集にまとめたダニエーレ・タマーニは、その動向にいち早く気づき、南アフリカのストリートダンサー、ボリビアのスカート姿のレスラー、ボツワナのメタルヘッズなど、7ヵ国の〝ファッショントライブ”を取材しました。タマーニはそれらのグループの信頼を勝ち取るため何日も一緒に過ごします。その結果、彼の撮る写真は被写体の個性そのままの、唯一無二の記録となっています。
ダニエーレ・タマーニ
フリーランスのファッション&ドキュメンタリー・フォトグラファーでミラノを拠点に活動する。『SAPEURS the gentlemen of Bacongo』の著者でもある彼は、2010年にはインターナショナル・センター・オブ・フォトグラフィー(ICP)の美術&エンターテイメント部門で賞を受賞。作品は世界中で展示されている。
被写体のグループらに共通するのは経済状況などの劣勢を、自らのクリエイティビティで超越していること。その姿が見るものの感動を呼びます。本書は写真とともに、ファッションジャーナリスト、社会学者、美術研究者らによって執筆されたスタイルの側面を探求するエッセー、被写体のメッセージも収録した、画期的一書です!
書籍内容紹介
第一章:南アフリカ/ヨハネスブルグ
2005年に南アフリカのポップカルチャー・シーンで大人気を博した「スマーティーズ」をはじめ、
ダンスとファッションを通して自己表現を行っている野心的なグループ「ヴィンテージクルー」、
エレガントで個性的なファッションセンスの「ザ・サルティスト」など、南アフリカのファッションシーン最前線を紹介。
第二章:セネガル/ダカール
伝統的なファッションに身を包み、セネガル人女性の代表のようなふくよかな女性たち「ディリアンケ」と、片や「グザリー・ファッション」と呼ばれるセクシーなファッションに身を包みナイトライフを楽しむ女性たち。
第三章:キューバ/ハバナ
ハバナのストリートのキューバ人たち。ドルチェ&ガッバーナ、ナイキ、ルイ・ヴィトン、アルマーニなど、よく知られた西洋のブランドで着飾り街を闊歩する。
第四章:ボリビア/ラ・パス
伝統的な衣服を纏い身なりを整え、レスリングをする女性たち「フライング・チョリータス」
第五章:コンゴ共和国/ブラザビル
ブラザビルの貧しい地区であるバコンゴを中心に活動する、我が道を行くエレガントな紳士たち、「サプール」。SAPE(おしゃれで優雅な紳士協会「La Societe Ambianceurs et des Personnes Elegantes」)のメンバー。
第六章:ミャンマー/ラングーン
70年代中盤のイギリスのパンクスにインスパイアされた、都会の若いビルマ人たち。そのスタイルは本書で取り上げられた他の国の例と異なり、わざと着くずした、エレガントではない過剰さがある。
第七章:ボツワナ/ガボローネ
80年代のヘビーメタルに、西洋のカウボーイスタイルとアフリカのアクセントをかけ合わせて誕生した、タフでクールで威圧的なスタイル「アフロメタル」。