近年では高齢出産が珍しくなくなってきていますが、母体の年齢があがるとどうしても染色体異常のリスクは高くなります。
実際に数値で表すと、この確率は35歳で0.5%、40歳で1.5%、45歳になると4.7%です。

そんななか、この可能性を事前に知ることができる出生前診断を行う夫婦が徐々に増えてきているようです。

出生前診断とは

出生前診断とは、妊婦の血液から胎児の染色体異常(13、18、21トリソミー)が分かる検査です。
以前の出生前診断には母体血清マーカー検査などがありましたが、新しいものはそれと比べて飛躍的に精度が高いため、「新型出生前診断(通称NIPT)」 と呼ばれています。

新型出生前診断は、「母体から採血し、その血液を検査することにより胎児の染色体異常を調べる検査」です。

本検査で陽性となったからといっても100%の診断制度ではなく、羊水検査や絨毛検査をすることで100%の診断を得ることができます。
しかしこれはお腹に針を刺すので流産のリスクが伴うこともあり、血液検査だけで精度も高いNIPTが注目されています。

日本における出生前診断の歴史

2013年4月 日本産婦人科学会の認定施設に限定し臨床研究としてスタート
2014年度は47施設で約1万人が検査を受けた
2016年4月にはのべ3万人が検査を受けた
2018年3月日本産科婦人科学会は臨床研究から一般診療として実施する方針を発表

これまで出生前診断を行った人は約4.5万人

2013年4月から国内で臨床研究として始まり、4年経った2017年時点でこの診断を行った人の数は約4.5万人。おそらく国内では最多といえる八重洲セムクリニックではすでに約4000件ほどの実績があります。

なおかかる費用は13、18、21染色体及び性染色体検査、性別判定で195,900円(税別)とのこと。

もし染色体異常が認められたら?染色体異常を回避する方法は?

八重洲セムクリニックでは、患者さんが納得するまでカウンセリングを行いより確かな結果を得るために希望する方には羊水検査も無料で実施しているそうです。

染色体異常を回避する方法としては、ネット上で葉酸が効くということが出回っているようですが、実際にはすべての染色体異常に効果があるという医学的なエビデンスはありません。

葉酸は厚生労働省から神経管閉鎖障害の発症について一定の効果があるという発表もありますが、神経管閉鎖障害は赤ちゃんの先天性疾患の一つにすぎません。さらに神経管閉鎖障害についても、葉酸を摂取すればかならず防止できるということでもありません。

染色体異常が発生する大きな原因は加齢によるものですが、それ以外にも遺伝的な要因等もあり、確実な防止方法はないというのが現状です。

出生前診断の利点って?

まだまだポピュラーとはいえない出生前診断ですが、
1)採血のみのためリスクがない
2)精度が高い(21トリソミーの場合99%以上)
3)10週から可能(他は15週以降)
などの理由から高齢出産に不安を抱える方から徐々に支持を得つつあります。

今後妊娠・出産を考える上で、この染色体診断、選択肢の一つとして覚えておくといいかもしれません。

<取材対象者>
八重洲セムクリニック 奥野院長