セイコーでは、6月10日の「時の記念日」にちなみ、生活者に時間についての意識や実態を探る調査を2017年から実施、毎年『セイコー時間白書』として発表しています。コロナ禍が本格化して1年が経過。仕事やプライベートを問わず生活環境が大きく変化したことによって、「時間の使い方」は多様化し、時間をどう使うか、時間の価値を改めて見つめ直した人も少なくないようです。『セイコー時間白書』では、コロナ禍において創造された時間の新しい価値や、時間の使い方の多様性を“レガシー”(社会の資産)にすべく、多様化した時間の使い方や深まった時間への
意識を探り、ひもときます。
時間の多様性が加速
コロナ禍だからこそ気付けた、幸せな時間がある
■コロナ禍で気付いた これからも維持したい時間は、「趣味の時間」と「家族との時間」
私たちの生活を大きく変化させたコロナ禍ですが、弊害だけではありませんでした。コロナ禍で増えて良かった時間を聞くと「趣味の時間」(39.4%)や「家族とのコミュニケーション時間」(36.1%)が挙げられました[図1-1]。また、減って良かった時間には「会社の飲み会・食事会の時間」(33.3%)や「通勤時間」(28.8%)が挙げられました[図1-2] 。
増えて良かった時間の中で、今後も維持したい時間を聞くと「趣味の時間」(38.2%)と「家族とのコミュニケーション時間」(36.8%)が選ばれました[図1-3]。コロナ禍という逆境だからこそ、気付くことができた大切な時間です。そこで、コロナ禍で生まれた「幸せな時間の使い方」を聞くと、[図1-4]のようなさまざまな時間の使い方が寄せられました。人それぞれが、自分のペースや趣向にあった豊かな時間の使い方に気づき、実践していることが感じられます。
コロナ禍で時間を「価値あることに使う」方向にシフト
時間の使い方をきちんと見直す“時律”のススメ
■コロナ禍で「人生をより豊かにするための時間の使い方について」考えた人が2人に1人
次に、時間の使い方について考えた経験の有無を聞きました。コロナ禍による時間の過ごし方や使い方については52.2%、より効率的に生活するための時間の使い方については48.6%、人生をより豊かにするための時間の使い方については54.1%が考えたことがあると答えています。半数の人にとって、コロナ禍は時間について見つめ直すきっかけとなったようです。年代別に見ると10代や学生のスコアが高く、リモートワークをしている人の方がしない人より考えることが
多くなっています[図2]。
■半数が臨機応変にスキマ時間を活用/自らの時間を充実させるための“時間マネジメント”の意識が高まっている
また、コロナ禍によるプライベートな時間の使い方の変化を聞きました。臨機応変に自らの裁量でスケジューリングしながら過ごしていると答えたのは46.8%[図3-1]、隙間時間も工夫しながら過ごしているのは46.1%[図3-2]と、半数の人がプライベート時間にも工夫を凝らしています。
■コロナ禍で自由な時間はできたけれど… うまく使えないジレンマもあり
コロナ禍での時間の使い方について詳しく聞いてみました。55.6%がコロナ禍で「自分で使い方を決められる時間の増加を歓迎」していますが、「自由な時間を得ることは、自分で負う責任が強くなる」と、責任を自覚する人も51.3%います。一方、3割は「使い方を決められる時間は良いけれど持て余している」(31.3%)と困惑気味で、「人に委ねていた時間も今思えば良かった」(29.1%)と思いをはせる人もいます。属性別で見ると、一番はしゃぎそうな「学生」のスコアがいずれも高く、コロナ禍の学生への影響力の強さが感じられます[図4]。
現代人の時間価値はオンタイム4,253円、オフタイム12, 992円
オフタイム価値が観測史上最高に(17年調査開始)
■オフタイムの時価がさらに上昇し遂に1万円超え! プライベートな時間がより一層大切に
自分の1時間の価値(=時価)を値付けしてもらいました。仕事や家事・勉強をするオンタイムは1時間4,253円となり、20年4,443円よりやや下がりました[図5-1]。一方、プライベートなオフタイムは1時間12,992円と、20年8,346円から+4,646円(2020年比155.7%)、17年6,298円から+6,694円(2017年比206.3%)と2倍以上も高くなっています[図5-2]。
オンタイムとオフタイムの価格差は年々広がり、17年は2,629円差、20年は3,903円差だったものが、21年には8,739円もの大差になっています。オフタイムの価値がそれだけ高くなり、大切な時間として認識されているようです。
■最も大切な時間は、「金・土夜」と「月朝」で変わらず
1週間の中で最も大切にしている時間帯は「土曜日22時台」「金曜日22時台」「金曜日21時台」「月曜日6時台」「月曜日5時台」の順となりました[図6]。プライベートを楽しむ週末の夜
と、オンタイムに突入する月曜の朝の、切り替えの時間が大切な時間帯となっています。この傾向は、17年、20年とほぼ変わっていません。
■コロナ禍で自分時間が増えた一方、コントロールの難しさを痛感する学生も
オフタイムの価値が高まる一方、時間の使い方で困っていることを聞くと、「他人がどのような時間・リズムで生活しているかがわからない」(46.2%)、「生活のメリハリがはっきりしなくなった」(42.3%)、「時間を自分で効率的に計画し、使うことが難しい」(41.8%)などが困りごととして挙げられました[図7]。
これを属性別で見ると、「学生」のスコアがいずれも高く、「時間を自分で効率的に使うことが難しい」(72.9%)、「生活のメリハリがはっきりしなくなった」(70.4%)など、自分で時間をコントロールすることに戸惑いを感じている様子がうかがえます。また、「リモート環境による怠け癖」(62.6%)を心配する声も上がっています。コロナ禍は、時間の使い方を再認識させる機会にもなっているようです。
リモートワーカー メリハリ問題のその後
2年目にしてやや緩和、うまく折り合いを付けられるように
■リモートワーカーの仕事の裁量度80%に伸長 前年比4.4ポイントアップ
次に、有職者を対象に、重要なオンタイムとなる自身の仕事の進め方について聞きました。すると、「自分の裁量で時間をコントロールしながら進められる」24.5%、「業務量など、タスクによっておおよそ決まるが、ある程度自分で進められる」38.6%と、働く人の63.1%が自分の裁量で仕事がコントロールできる環境にいます。リモートワークする人では80.8%が自分の裁量でコントロールができ、リモートワークしない人(56.5%)より24ポイントも高くなっています[図8]。リモートワーク元年の2020年と比較すると、有職者全体の裁量度はほほ横ばい(62.3%→63.1%)ですが、リモートワーカーでは76.4%から80.8%へと4.4ポイント伸びています。
■2年目でリモートワークのマイルールが確立か? メリハリの付けにくさがやや改善
自分の裁量で仕事を進められる人は増えていますが、メリハリのあるワークスタイルはできているのか、時間のメリハリについて聞いてみました。すると、有職者の6割が「時間のメリハリを付けにくい」と答えており、リモートワークする人は63.5%と、しない人(58.7%)よりメリハリの付けにくさを感じています。しかし、昨年はリモートワークする人の74.7%がメリハリを付けにくいと答えていたことから、11ポイント改善されています[図9]。
ウィズコロナ生活2年目となり、リモートワークする人もオンオフの切り替えができるようになってきたのかもしれません。
■自己管理にも気を付けたい リモートワーカーの4割が「集中しすぎ」を経験
自分の裁量で仕事がしやすいリモートワーカーですが、それだけ自己管理も重要になります。仕事に集中しすぎて気が付いたら日が暮れていた、そんな経験があるかと聞くと、20年は35.0%でしたが21年は40.4%に増えており、週に1日以上リモートワークする人では42.9%とさらに増えています[図10]。集中しすぎや抱え込みすぎてオーバーワークにならないよう、メリハリのあるワークスタイルを心掛けたいものです。
コロナ禍での時間速度は例年の2倍以上に
若い世代ほど速く感じている
■体感速度 2020年は例年の2倍の速さで過ぎ去ってしまった
2020年を振り返って、それまでの年に感じていた時間の速 [図11]例年を速度1とした2020年の体感速度度を1倍速としたとき、2020年の時間の速度はどのくらいに感じたか聞きました。すると、2020年の体感速度は平均で2.03倍という結果になりました。
年代別で見ると10代2.66倍、20代2.31倍と若い世代の体感速度が速く、学生は2.57倍です。また、有職者1.88倍より専業主婦・主夫2.04倍の方が速く感じています [図11]。
■約半数が時間がたつのが「速く感じる」 10代、20代、学生と若い世代は速く感じる人が多い
コロナ禍で生活時間に変化があったと答えた人に、生活に関する時間の速さの変化を聞きました。すると47.5%が「速く感じる」と答えており、前回(35.6%)より11ポイント増えています。年代別で見ると10代64.0%、20代52.5%に多く、学生は65.9%が「速く感じる」と答えています。上記の体感速度の感じ方と一致しています[図12-1]。
仕事に関する時間がたつ速度について聞くと、3人に1人は「速く感じる」(33.9%)と答え、リモートワークする人では40.7%が「速く感じる」と答えており、リモートワークしない人(30.5%)より10ポイント高くなっています。一方、前回は仕事時間が速く感じると答えたのは30.7%で今回より少ないものの、リモートワークする人では43.5%が速く感じると答えていました[図12-2]。リモートワークに対する慣れが、速さを感じさせないのかもしれません。
コロナ禍ダメージが大きい若者たち
SNSや倍速視聴で時間にもコスパを求める?
■コロナ禍ダメージが大きい若者たち/学生の7割がオフィシャルな時間が減ったと回答
コロナ禍により、仕事や家事、勉強をするオフィシャルな時間が減ったかと聞くと、約半数(46.6%)が減ったと答えました。10代70.5%、20代46.0%、学生67.0%の若い世代やリモートワークする人59.6%がより強く感じています[図13]。
一方、「何もしない時間が増えた」と答える人は33.7%となり、約3人に1人が時間の使い方を持て余していることがわかります。特に学生では半数以上(55.7%)が「何もしない時間が増えた」と感じていることから[図14] 、これからどうすればいいのか、今どう過ごせばいいのか、時間の使い方がわからずぼうぜん自失となっている様子がうかがえます。人生の中で最も楽しく濃密な時間を謳歌(おうか)する世代だけに、非常に酷な環境に直面していることがうかがえます。
それ故か、10代62.0%、20代51.0%、学生60.1%が「コロナ禍後、もっと世の中と関わる時間を増やしたい」と望んでいるようです[図15]。
■スピードアップ視聴が学生のスタンダード?/学校のオンライン講義は半数がスピードアップ視聴で受講中
若い世代に多いスピードアップ視聴。スマホなどで動画を見るときは学生の32.7%が、録画した番組を見るときは23.2%が倍速で視聴しています。学校のオンライン講義は51.2%と半数がスピードアップ視聴しています[図16]。
2021年のウィズコロナ生活を表現する言葉、昨年に続いて1位「粛々」
アフターコロナは「のびのび」に
■ウィズコロナ生活は今年も「粛々」と。アフターコロナ生活は「のびのび」に
最近3カ月のウィズコロナ生活と、コロナ収束後のアフターコロナ生活を表現する時間にまつわる言葉を選んでもらいました。ウィズコロナ生活は、昨年も今年も1位「粛々」(20年19.1% 21
年17.3% -1.8ポイント)、2位「だらだら」(20年15.3% 21年13.8%-1.5ポイント)ですが、スコアはやや下がっています。逆に「ばたばた」(20年10.3% 21年13.0% +2.8ポイント)や「せかせか」(20年6.8% 21年10.2%+3.3ポイント) のスコアが高くなっています。息を潜める自粛生活から、動きだしたいという気持ちが表れているようです[図17-1]。
コロナ収束後は、昨年同様「のびのび」(25.7%)がトップで、「のんびり」(14.4%)、「てきぱき」(13.4%)の順になりました。昨年は「のびのび」(20.5%)に次いで、「てきぱき」(13.3%)「ばたばた」(13.1%)の慌ただしい言葉が選ばれています[図17-2]。今年の方があわてずゆっくり、という意識が強いのかもしれません。
■ウィズコロナ生活、先が見えずに「ぼうっと」しちゃうことも…、早く「ほっと」して「わくわく」したい
次に、コロナ収束後のアフターコロナ生活の心情を表現する言葉を選んでもらいました。コロナ収束後は、昨年同様「ほっと」(24.8%)がトップですが、「わくわく」(23.8%)が2位に浮上し、1位とのスコア差もわずかです[図18]。ほっとしながらも、何をしようかわくわくする前向きな気分がより強く感じられます。
■コロナが収束したら、「友人と外食」「配偶者と旅行」を堪能したい!
コロナが収束したら、誰と何をしたいか聞きました。外食は「友人」(55.6%)や「配偶者」(39.5%)や「子ども」(31.8%)、旅行は「配偶者」(40.2%)や「友人」(32.6%)、映画は「友人」(24.0%)や「配偶者」(21.8%)だけでなく「1人で」(18.7%)見たい人も。遊園地は「友人」(28.9%)や「配偶者」(25.6%)や「子ども」(23.3%)。スポーツは「友人」(20.8%)と一緒か「1人で」(20.4%)、コンサートは「友人」(24.8%)と楽しみたい、という結果になりました[図19]。