CSRとはCorporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略語で、 企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことです。この記事ではCSRとは何かを説明し、ハイブランドのCSR活動を中心にアパレル業界の取り組みを紹介します。

企業に求められるCSRとは

まずはCSRとは何か、言葉の意味や目的について説明します。

「企業の社会的責任」という意味

CSRとはCorporate Social Responsibilityの略称です。日本語にすると「企業の社会的責任」となります。社会の健全な発展を目指して企業ができることは何かを考え、自社の利益追求だけでなく社会へ与える影響への責任を考えて行動することを意味します。

活動を通して企業の信頼を確かなものにすることが目的

企業の社会的責任に焦点を当てた取り組みや活動が、CSR活動です。それは消費者、投資家、従業員、取引先、地域社会など、あらゆるステークホルダー(利害関係者」を対象に、社会的ルールや環境への配慮を取り込む活動でなくてはいけません。最終的に企業の信頼を確かなものにすることが目的で、さまざまな企業がCSR活動への取り組みを強化しつつあります。

CSRとサステナビリティの違い

CSRに関連する言葉として、サステナビリティという言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。CSRとサステナビリティは似たような意味を持ちますが、意味合いが異なります。サステナビリティは「持続可能性」の意味を持ち、主に、環境・社会・経済の観点で社会全体が目指す共通の価値観のこと。一方、CSRはサステナビリティを実現させるために企業が取り組む活動の1つです。

アパレル業界が取り組んでいるCSR活動例

アパレル業界においても、さまざまなCSR活動が行われています。特に海外のアパレル企業が行っているCSR活動の中には、サステナビリティにつながっている例も多く存在します。ここでは世界トップクラスのハイブランドが、サステナビリティの実現のために取り組んでいるCSR活動の事例を紹介します。

グッチ(Gucci)

グッチは経営方針・企業活動の中核に「持続可能な価値」の実現という理念を掲げ、サステナブルを意識した活動を展開している企業です。国際的な規格・基準や評価方法を採用し、CSR方針の効果的な実施、モニタリング、継続的な改善を行っています。2019年には自社および全サプライチェーンにおいて、年次ベースで温室効果ガスの排出を相殺することに成功。さらに製造過程で生じる布やレザーの端切れのアップサイクル「Gucci-Upプログラム」などの循環型アプローチも行っています。

またオーガニック繊維や再生ナイロン・再生カシミヤの使用を増やし、プラスチックや金属をリサイクルのものに切り替える他、児童婚の廃絶や少女・女性のエンパワメント支援、さらに野生生物の保護といったさまざまな試みを実施しています。グッチのCSR活動実績は、サステナビリティに特化したデジタルプラットフォーム「Gucci Equilibrium(グッチ エクリブリウム)」で確認できる他、自社事業が地球環境に与える負荷を金額ベースで開示する「環境損益計算書」も公開中です。これらの実績はラグジュアリーブランドで2年連続1位を達成しています。

プラダ(Prada)

プラダはオンラインでCSRレポートを公開しており、人材、環境、文化遺産という3つの観点でさまざまな取り組みをしていることがわかります。例えば、2020年度には「再生紙・森林認証紙の利用88%」「再生可能エネルギーの使用43%」「女性従業員の比率62%」などの成果を出しました。またプラダのナイロンは、2019年に「リナイロン(Re-Nylon)」という名で大きな進化を遂げました。海から回収したプラスチック廃棄物や漁網、繊維廃棄物を再利用&浄化してできた再生ナイロン糸「エコニール(ECONYL®)」を使用し、サステナブルな活動に取り組んでいます。

その結果、ナイロンに起因する温暖化の影響を最大80%削減し、繊維1万トン製造ごとに、7万バレル(約1100万リットル)の石油を節約する成果を出しました。2020年以降、ウエアやシューズ、アクセサリーなどに「リナイロン」を広く使用し、2021年末までに、すべてのナイロン素材を「リナイロン」に切り替えることを目標に掲げています。

ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)

ルイ・ヴィトンでは、他社に先駆けて2004年に二酸化炭素排出量への取り組みを開始しました。ISO14001認証企業として、資源の保全、森林伐採の回避、動物福祉の尊重、有害化学物質の排除、大気や水質の汚染を食い止めることなどを優先課題とし、全サプライチェーンにおいて原材料や店舗建材の透明性と説明責任を果たす取り組みを進めています。ブランドの目標は、2025年までに100%責任を持った原材料の調達、2030年までに使い捨てプラスチックの使用率を0%にすることです。実際に、2020年時点で使用する原材料の70%は認証を獲得しています。

その他、実績の一例として、レザーのなめし工場78%が最高環境基準であるLWG(レザー・ワーキング・グループ)の認証を取得した他、ハードトランクに使われる木材の90%が国際基準のサステナブル方法で管理された森林のものを利用するなどしています。さらにショッピングバッグは100%リサイクル可能かつ100%FSC®(森林管理協議会)認証を取得しており、うち40%がリサイクル繊維を使用。年間約250回もの監査を実施し、動物福祉と原材料のトレーサビリティを徹底しています。

日本アパレル・ファッション産業協会のCSR委員会活動

日本のアパレル業界でもCSRへの関心が高まっています。日本のアパレル業界がどんな活動をしているのか、続きは以下のKÓMERUでチェック!