11月8日は「いい歯の日」でしたね。おいしく食事をとるためにとても大切な歯。みなさんはどんなことが気になるでしょうか。
公益社団法人日本歯科医師会が全国の15歳~79歳の男女10,000人を対象にほぼ隔年に実施しており、今回で9回目となる「歯科医療に関する一般生活者意識調査」。この調査結果によって、さまざまな老若男女の歯にまつわるさまざまな実態が浮き彫りとなりました。
歯や口の悩みの実態
歯や口の悩みについての調査では、若年層は「歯の色」「歯並び」など見た目が気になる人が多く、 40代以上になると「歯と歯の間にものが挟まる」という機能面が気になる人が最も多いという結果になりました。
若いうちはまだ歯が健康なことが多いので見た目に意識がいく人が多いですが、40代以上になると歯や歯茎など口内の機能が弱ってきて、そこに不便さを感じる人が増えていることがわかります。
全体として若年層は口腔問題への認知・意識が低い
歯や口の中に関して、機能面では不便さを感じていない10代・20代の若年層に、口腔と全身の健康意識についてさらに調査。口腔と全身の健康に関して知っているものを選ぶ質問では、「歯周病の予防には定期的な管理が必要」ということは全体では4割弱 (36.3%)が認知していますが、10代は19.5%、20代は24.0%と認知率が低くなっており、「糖尿病と歯周病の関連」に ついては、10代10.0%、20代11.7%と1割しか認知していない結果となりました。
また、これからの流行が懸念される「インフルエンザ」に関しても、口腔の清潔が感染リスクを下げることを知っていたのは、10代14.1%、20代14.7%にとどまりました。
次に自分が「歯を失う」ことをイメージできているか聞くと、 10代では61.2%、20代では56.6%が「自分に起こることをイメージしたこともない」と答えており、半数以上が自分が歯を失うとは想像すらしていません。
また、歯の定期チェックの実施についての質問では、全体では 45.3%がチェックを行っているなか、10代では35.7%、 20代では36.2%と、定期チェックの実践率は全体よりも約10ポイント近く低くなっています。
さらにこれまでに歯科治療または歯の定期チェックを受けた経験がある人に対し、かかりつけ歯科医の有無を聞くと、全体では76.2%と4人に3人はかかりつけ歯科医がいるところ、10代は66.9%、20代は66.1%にとどまり、3人に1人はかかりつけ歯科医がいないことがわかりました。
まだ不便さを感じることがでてきていないので仕方ない部分もありそうですが、全体として、若年層はそれ以外の層と比べて口腔問題への認知・意識が少々低いという結果となりました。
若年層の口腔機能が十分に発達していない?
あまり歯について深刻には意識していない若年層ですが、その反面、意外に多くの人が、「滑舌の悪さ」「食べこぼし」などの問題を何かしら経験しているというなんとも意外な結果も。
「食べる」「話す」「笑う」などは口腔機能と呼ばれ、滑舌が悪くなったり、食べこぼしをしたりすることは「口腔の機能不全」が疑われる症状です。
口腔の機能不全の疑いがある6つの症状を提示し、「経験がある」ものを答えてもらう質問。 年齢が高くなるとともに経験する人が増えていることはイメージ通りかもしれませんが、10代・20代の若年層でも症状を経験している人が一定数いるということがわかりました。
中でも「滑舌が悪くなることがある」と経験する10代は30.3%、20代は26.5%と多くなっており、これらの症状のうちどれか1つでもあてはまる人を算出すると、10代では48.3%、20代では40.6%と、若年層の半数近くが何らかの症状を経験しており、口腔機能が十分に発達していないことが心配される結果となりました。
若年層は「噛む力」にも問題あり・・10代の半数は「食事で顎が疲れる」、70代の2.7倍に上る
半数近くが口腔機能に何らかの問題を感じている若年層ですが、それだけではなく「噛む力」も未発達な傾向にあるようです。まず、全体に普段の食事について聞くと、全体の2人に1人が「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」(47.0%)、4人に1人が「子どもの頃から硬い物を食べる習慣があまりなかった」(25.1%)と回答。現代人の「硬い食べ物離れ」が広がっているようです。
さらに年代別に見ると、「硬い食べ物より柔らかい食べ物が好き」と答えたのは10代が53.6%と最も多く、「硬い物を食べ るときに噛み切れないことがある」のも10代が40.3%と最多です。柔らかい食事を好む10代ですが、半数が「食事で噛んでいると、顎が疲れることがある」(48.3%)と答えており、その割合は70代(18.0%)の2.7倍にも上ります。時代の変化もあるのでしょうか、10代のそしゃく力には課題が大きいようです。
歯を失うと、食べること以外にも影響が!若年層ほど、歯と「笑顔」「QOL」の関連性を重視している
最後に、歯が抜ける・なくなるなど「歯を失う」ことによって、歯以外に失うものがあると思うか聞いてみました。すると、「食事の楽しみ・おいしい物を食べる機会」(57.4%)、「食べることに対する意欲」(51.2%)はもちろん、「見た目の若さ」(43.8%)、「全身の健康」(36.7%)、「笑顔」(27.4%)などが直接的に歯とつながること以外も多く選ばれる結果となりました。
年代別に見ると、「全身の健康」や「寿命」は年代が上がるほどスコアが高くなり、「笑顔」「メンタルヘルス」「QOL(生活の質)」は若い世代の方がスコアが高くなっていることも特徴にあげられます。
日本歯科医師会が解説 「口腔機能の発達不全」とは
日本歯科医師会では、近年次々と明らかになっている「口腔(こうくう)の健康が全身の健康と密接に関わり、口腔健康管理の充実が健康寿命の延伸につながる」というデータを発信するとともに、歯や口腔の健康 への国民の関心や理解度を把握するために、10年以上にわたりこの意識調査を実施しています。
今回は、経年で聴取している歯科医療に関する基礎的な項目のほか、各世代の口腔健康への意識について調査し、中でも「若年層」における口腔健康意識や歯科医療の実態に着目。
日本人全体として、そして特に若年層のそしゃく力に関しては近年ますます問題視されてきており、食生活の軟食化をはじめとし、さまざまな要因から「噛む力」が弱まっている傾向が推察されます。公益社団法人 日本歯科医師会 常務理事 小山茂幸氏は、「噛む力」の低下は、噛む筋肉や顎の骨が十分発達せず歯並びの乱れや顎関節症を起こすだけでなく、食物繊維の多く含まれる歯応えのある食品や、噛み応えのある肉などタンパク質の摂取量の低下につながり、その結果、栄養不足や運動機能の低下にもつながっていくと言います。
一見なんでもないように感じられますが、「食べる」「話す」「呼吸する」など、口周りに関する基本的な機能が十分に発達していないか、正常に獲得できていない状態のまま年を重ねると、口腔の衰えを飛び越えて機能不全の時期が早まるだけでなく、全身の衰えを加速させる要因の一つとなります。生活の質を高め、そして健康寿命を延伸するためにも、早い段階からの口腔機能を健全な状態に保ち、それを継続することが大切です。
日本歯科医師会からのアドバイス。健全な口腔機能を守るためのトレーニング 「30回そしゃく」「口腔体操」「うがい」を習慣化しよう
口腔機能の低下を防ぐ対策方法として重要なのは、舌を含めた口周りの筋トレに取り組むことです。難しいことはなく、ものを食べるときには「よく噛むこと」を意識し、30回はそしゃくすることを心がけましょう。唾液で口内を常に潤わせることも大切なので、唾液の分泌を促すマッサージも良いそうです。舌の動きをスムーズにして飲み込むパワーを強くすることも必要なため、「あいうべ体操」や「パタカラ体操」などの口腔体操を行いましょう。舌や舌の奥、ほおの筋力を高めるには、水を口に含み、ほお全体を思い切り膨らませたりすぼませたりするブクブクうがいや、口に水を含んだ状態で上を向き、喉の奥でガラガラするうがいもおすすめ。早口言葉や砂糖不使用のガムを噛むのも有効です。 口周りのトレーニングをする際のポイントは、できれば鏡を見ながら、どこを動かしているか意識しながら取り組むことです。他にも
さまざまな方法で対策ができますので、かかりつけの歯科医に相談してみるのもよいでしょう。
今からできることは色々あります。簡単なものから少しずつ取り組むだけでも歯の未来は変えられるはず。今日から何かひとつでもぜひ毎日の習慣に取り入れてみてください。