車のエアコンをつけると、臭い空気が車内に充満してしまうことがあります。消臭剤や芳香剤を置いてみたものの解消できず、困っている方もいるのではないでしょうか。
車のエアコンの嫌なにおいの原因は、エアコン内に発生したカビであり、表面的な対策では解決が難しいです。そこで、すでに気になっているにおいへの対処法に加え、カビを発生させない方法などについても解説します。
この記事の執筆者
若林由晃(わかばやしよしてる)
マイカーコンシェルジュ(クルマ専門家)・自動車整備士・危険物取扱者・自動車販売店運営
代々継がれる創業70年の車販・整備工場を営む家に生まれ、エンジンオイルとガソリンの香りにまみれながら育つ。小学校から車販の接客、中学校には整備の手伝いを行う根っからのカーガイ。自動車整備専門学校では上位の成績で卒業。整備士国家資格は満点合格(専門学校の先生が採点)。 その後、大手自動車メーカー系列のディーラーで整備と中古車販売を経験。IT×車という販売方法に興味を持ち、個人向けカーリースのセールスに転身。中古カーリース事業、全国の加盟店販売事業の立ち上げを行う。2022年より自動車販売店運営
車のエアコンが臭い!においを除去するためにすぐできること
車のエアコンから嫌なにおいがするときは以下の5つを行うのが効果的です。
〈車のエアコンが臭いときに効果的な方法〉
自分でできる方法 | 外気の導入口付近を清掃する | ― |
車のエアコン用の消臭スプレーを活用する | ~2,000円 | |
業者に依頼する方法 | エアコンフィルターを交換する | 3,000~5,000円 |
エアコンのエバポレーターを洗浄する | 6,000円~30,000円 | |
ラジエーターやウォーターポンプの交換を行う | 20,000~80,000円 |
まずは自分でできる方法から試してみるといいですが、業者に依頼できるものの中でもエアコンフィルターの交換やエバポレーターの洗浄は自分でも行えます。ただし、車のパーツを取り外さなければならないケースもあることから、業者に頼んだほうが安心でしょう。
これらの5つの方法について、以下で詳しく解説します。
1. 外気の導入口付近を清掃する
まず、どのタイミングでにおいが気になるのか確認してみましょう。外気を取り入れる送風モード時ににおいがする場合、外気導入口の汚れが原因かもしれません。
導入口付近を見て、鳥の糞や落ち葉による汚れがないか確認し、汚れている場合には洗い流しましょう。プラスチック製のカバーを外して内部を洗浄するのがおすすめです。
なお、一般的な外気導入口は、フロントガラスのワイパーが取りつけられている部分にあります。洗車の際にここを意識的に洗うように心掛ければ、においの除去につながります。
2. 車のエアコン用の消臭スプレーを活用する
市販の車のエアコン用消臭スプレーは、一時的なにおい対策として有効です。使い方は、エアコンの吹き出し口にスプレーノズルを差し込み、薬剤を数秒スプレーするだけです。その後、エアコンをつけて10分程度換気します。
カビ防止剤が含まれているものなど、消臭スプレーには種類があります。価格は1,000~2,000円程度で、自分で手軽に対策ができます。ただし、すでに増殖してしまったカビを除去することはできません。あくまで一時的な対策と考えておきましょう。
3. エアコンフィルターを交換する
最も有効なにおい対策は、エアコンフィルターの交換です。家庭用室内エアコンと同様、カーエアコンにもフィルターがついていて、カビの胞子やほこり、ゴミを除去する役目を担っています。
エアコンフィルターがほこりなどで詰まると悪臭が発生しやすくなります。定期的にほこりを吸い取ったり、1~2年ごとにフィルター交換をしたりするようにしましょう。なお、エアコンのフィルターが詰まると送風量が低下します。フィルターの清掃や交換をすることで、送風量も改善されるでしょう。
エアコンフィルターの交換自体は説明書に記載された品番のエアコンフィルターを購入すれば、自分で行うことができ、価格も純正品で2,000~3,000円程度です。ただし、セルフ交換は自動車メーカーが推奨していないことから、整備工場やディーラーに依頼したほうが安心です。
4. エアコンのエバポレーターを洗浄する
エバポレーターは、においの原因やカビの温床となりやすいです。自分で取り外して洗浄することができ、専用のクリーナーも販売されていますが、ダッシュボードを外したり、車の内部に触れたりする必要があることから、プロに依頼するほうが無難でしょう。
業者に依頼した場合の料金は、簡易洗浄が6,000円程度、取り外して洗浄や高圧洗浄すると20,000~30,000円程度かかります。業者によっては、洗浄後に抗菌・防カビコーティングを施すメニューを用意しているところもあります。
なお、エバポレーターに発生したカビがにおいの原因の場合、応急処置として、暖房をつけてエアコン内部を乾かす方法があります。車の窓を全開にして、最高温度・最大風量で10分程度暖房することで、嫌なにおいを抑えられるでしょう。
5. ラジエーターやウォーターポンプの交換を行う
ラジエーターやウォーターポンプが破損していると冷却水が漏れ、特有の甘いにおいがします。冷却水はエンジンを冷やすためのもので、ウォーターポンプの力でエンジン内部を循環しています。エンジンの熱によって温められた冷却水は、ラジエーターで冷却されます。
冷却水の量が急に減った場合にはこれらのパーツが破損している可能性があり、ディーラーや整備工場などでの交換が必要です。いずれも20,000~80,000円程度かかります。ただし、ウォーターポンプはあまり破損しないことから在庫がないケースが多く、車を預けて代車を使用する必要があるでしょう。
車のエアコンからにおいがするときにおすすめの消臭スプレーランキング
車のエアコンから悪臭がする場合、とりあえずの対処をしたいところです。おすすめの消臭スプレーをご紹介しますので、自分に合った商品を選ぶ際の参考にしましょう。
おすすめの消臭スプレー第3位 AR-K エアーキャタライザーキット
和光ケミカルが販売するAR-K エアーキャタライザーキットは、自分で本格的な清掃ができる方、もしくは業者に持ち込んで清掃してもらえる場合におすすめです。
エアコンフィルターと車室内の両方にスプレーすることで、消臭・抗菌・防カビ・防汚の効果を1年間発揮してくれますが、車室内にスプレーが充満するのに1時間程度待つ必要があります。なお、価格は10,000円近くかかります。
おすすめの消臭スプレー第2位 スーパージェットマックス
ザックジャパンカンパニーが販売している製品で、洗浄・抗菌・消臭効果が6ヵ月間続きます。ムースタイプとミストタイプがあり、たばこのヤニや花粉などの洗浄も可能です。価格は数千円程度です。
エアコンフィルターを取り外したうえで液剤を注入し、約15分間風量を最大にしてアイドリング・乾燥を行う必要があることから、時間と手間がかかります。使用できない車種があったり、エアコンフィルターを取り外したりする必要もあり、やや知識のある方向けの商品といえるでしょう。
おすすめの消臭スプレー第1位 D221 ドクターデオプレミアム エアコンスプレータイプ 無香
カーメイトが販売している車用のエアコンクリーナーです。従来品比200%の消臭性能を持ち、除菌もしてくれます。ロングノズルなのでエアコン内部が狙いやすく、1秒スプレーするだけで手軽に除菌・消臭が行えます。 価格も1,188円とリーズナブルです。
車のエアコンが臭い原因
エアコンの内部には、冷媒であるエアコンガスが循環しています。このエアコンガスを霧状にして吹き出す際に気化熱が奪われ、エバポレーターが冷やされます。そして、エバポレーターの中を通過した空気が冷却されて、冷風として車内に出てきます。
車のエアコンのにおいは、エアコンそのものが原因である場合と、エアコン以外が原因の場合があります。
エアコン内部にカビが発生している
クーラーを使うと、エバポレーターは外気よりも冷たくなります。外気と車内との温度差によってエアコン内には水滴が発生します。氷入りの飲み物が注がれたグラスのように、結露するということです。
結露でできた水滴は車の底から排出されますが、エバポレーター内部は常に湿気を帯びた状態です。この水滴はエアコンを使用しない限りは滞留し続けるため、特にクーラーの使用を終えた秋から翌シーズンの梅雨までのあいだにカビがエバポレーター内部で繁殖します。
また、カビが生えるのはエバポレーターだけではありません。ほこりが溜まるエアコンフィルターにもカビは生えやすく、においを助長する原因となります。
鼻にツンとくるような酸っぱいにおいがするときは、カビや雑菌が原因であることがほとんどです。そのままエアコンを使い続けてしまうと、健康被害のリスクも高まってしまいます。早めに対策を講じましょう。
車内にゴミや食べこぼしがある
車内のゴミや食べこぼしがエアコンフィルターを通り抜けてエバポレーターまで達すると、ひどいにおいが発生しやすくなります。エバポレーター内部の湿気にこれらが付着することで、エバポレーターに汚水が溜まったような状態となってしまうのです。
冷却水が漏れている
暖房を使用した際に甘いにおいがするときは、冷却水が漏れている可能性があります。ラジエーターやウォーターポンプの破損の可能性があり、放置するとオーバーヒートしてしまうこともあります。すぐにプロに確認してもらいましょう。
エアコンのにおいを防ぐためにできること
新車に乗り換えた場合や、メンテナンスによりにおいを一掃した後は、エアコンから嫌なにおいが発生しない状態を維持したいものです。ここでは、日頃のケアでにおいを予防するテクニックをご紹介します。
エンジンオフ前に送風や暖房でエアコン内の湿気を除去する
エバポレーターにカビを発生させないためには、できるだけ水分を残さないことが大切です。
エンジンを止める前に送風モードにし、最大風量で15分ほど稼働させる、あるいは、暖房を最高温度と最大風量で10分ほどフル稼働させるのがおすすめです。目的地に着く約15分前に送風モードや暖房に切り替える習慣をつけるようにしましょう。
定期的に車内を拭き掃除する
車のエアコンは、車内の空気を取り込みます。車内にほこりがあると空気といっしょに吸い込まれ、フィルターの汚れとなり、においが発生しやすくなってしまいます。6~9月頃のエアコン使用中だけでも定期的な拭き掃除を習慣づけていれば、ほこりが原因のにおいを防ぐことができます。
また、ペットを日常的に車に乗せている場合は、エアコンフィルターにペットの毛が蓄積しやすいです。より念入りに清掃をするようにしましょう。
車内でたばこを吸わない
たばこを車内で吸わないようにしましょう。エアコンのにおいの原因のひとつにたばこ臭があり、染みつくとなかなか取れません。車内でたばこを吸う場合は、窓を開けて車内にたばこ臭がこもらないようにします。日頃の習慣にすることで予防できるので、意識するようにしましょう。
冷房を使用する時期が過ぎたら、フィルターなどのメンテナンスを行う
冷房を使用する時期が終了する10~11月頃には、エアコンフィルターのメンテナンスを行うのがおすすめです。清掃や交換をしたうえで、フィルターへスプレーを散布するなどして、メンテナンスをすることで、エアコンにカビが発生するのを防ぎやすくなります。
エアコンを使わない時期にも定期的に試運転する
時期によって冷房を使う頻度は異なりますが、ほとんど使わない12月~5月頃にも月1回程度は試運転しましょう。定期的に冷房を稼働させることで、エアコン内部だけでなく車内の湿度を下げ、雑菌やカビの繁殖を防ぐことができます。
なお、近年はオートエアコンを搭載している車種も増えています。オートエアコンは冷風と温風を混ぜて自動で車内温度を調整してくれるもので、冬場でもエバポレーターが起動しています。これにより、エバポレーターに水が滞留しなくなるため、オートエアコンではにおいが生じにくいのですが、一般的なエアコンでも冬場に試運転することで同じ効果が得られます 。
車のエアコンを臭いままにしておくことで生じる健康面への影響
エアコンが臭いと車内で快適に過ごせないだけでなく、放置することで身体に悪影響を及ぼす可能性もあります。どのようなリスクがあるのかを知って、早めに対処しましょう。
喘息やアレルギー症状のリスクが高まる
においが発生しているエアコンを使い続けると、カビの胞子が車内に充満し、乗っている方が気管支喘息やアレルギー症状を引き起こしてしまうことがあります。健康への影響を考えてしっかり対策しましょう。
なお、エアコンの嫌なにおいがシートなどに付着した車は大がかりなクリーニングが必要になることから、売却時の査定額が低くなりやすいです。健康被害のほかにもこのような影響があるため、将来車を売って乗り換えることを考えている方も注意しておきましょう。
リスクがある方は4割超!? 車のエアコンによる健康面への影響
車のエアコンのにおい対策として、エアコンフィルターの交換は費用も手頃で比較的簡単な手段といえます。しかし、カーリースの「おトクにマイカー 定額カルモくん」の調査*によると、車のエアコンフィルターの交換をしたことがない方は4割以上という結果でした。
また、車のエアコンフィルターを交換しない理由については「検討したことがなかったから」「点検で指摘されないから」など、その必要性を感じていない方が6割以上、「めんどうだから」「お金がかかるから」と交換するのを負担に思っている方が2割以上という結果でした。
消臭グッズを活用して車のにおい対策をしている方も多くいますが、先述したように、消臭スプレーなどではにおいの根本的な原因であるカビを除去することはできません。エアコン内部のカビを放置していると上で挙げたような悪影響があるため、エアコンフィルターは定期的に交換することをおすすめします。
*定額カルモくんが2022年4月27日~5月9日に、車を1年以上保有する全国の男女1,058名を対象として行った車のエアコンフィルターに関する独自調査
日頃のお手入れと定期的なプロのチェックでエアコンのにおいは防止できる
カーエアコンのにおい防止には、こまめな車内の清掃やエアコン内部の換気など、日々の習慣が有効です。それらに加えて、定期的な清掃やエアコンフィルターの交換など、メンテナンスも行いましょう。
車のエアコンから出るにおいは我慢する、消臭剤でごまかすという考えには注意が必要です。においの原因となっているカビは、健康面にも影響を及ぼします。快適なカーライフのためにも、メンテナンスの習慣をつけることをおすすめします。
とはいえ、車のメンテナンスはいろいろ項目があるうえ、その度に費用がかかってたいへんですよね。
そのような面倒や費用の心配から解放されるマイカーの持ち方があります。それが今話題の「車のサブスク」「カーリース」です。しかも、「予算オーバー」と思っていた車に手が届く、ローンより月々の負担を抑えられる、などのメリットもあります。詳しくは下から確認してみましょう。
※この記事は2023年3月時点の情報で制作しています