文部科学省によると、2022年度の大学進学率は前年度から1.7%増の56.6%で過去最多を記録したそうです。一方で、親世代の1991年は18.5%(文部統計要覧1992年版を基に算出)で、現代は、高等学校卒業者の半数以上が大学進学をし、親世代と比較すると約2倍と大学進学が当たり前になりつつあります。そのなかで、子どもを大学に通わせるにあたって、お金の問題は無視できません…。大学関係にかかるお金はいったいどのような内訳になっているのでしょうか?
今回はアクシブアカデミー代表の鈴木氏に大学に掛かるお金について寄稿いただきました。
大学に必要な費用ってどのくらい?
まず、大学には国立、公立、私立とあり、その中でも文系、理系とわかれていますが、どの大学も授業料、入学金、施設設備費が必要になります。
大学への平均納付額
種類 | 平均納付額 |
---|---|
国立大学 | 約240万円~260万円 |
私立大学(文系) | 約390万円 |
私立大学(理系) | 約540万円 |
私立大学(その他) ※その他は(家政、保健、体育、芸術系)の総合 | 約500万円 |
医歯系(6年間) | 約2,300万円 |
令和3年度の文部科学省の調べによると、4年間でかかる平均的な大学への納付額は、国公立大学が約240万円~260万円、私立大学の文系が約390万円、私立大学の理系が約540万円、私立大学その他(家政、保健、体育、芸術系)が約500万円となっています。また、医歯系は更に高く、私立大学(6年間)で約2,300万円程かかり、次いでその他(家政、保健、体育、芸術系)も納付額が高くなっている傾向があります。これに合わせ、大学に入学するにあたって受験料が必要になります。
大学の受験料と受験方式
令和3年度の日本政策金融公庫の調査によると、併願校も含めた大学受験費用は約28万円〜32万円です。一概に受験料といっても大学受験には方式が複数あり、それにより金額は変わってきます。受験方式は、大学入学共通テスト、一般選抜(二次試験)、総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜と、これらの中から選択することになります。
大学受験方式ごとの受験料
種類 | 金額 |
---|---|
大学入学共通テスト(2教科以下) | 1万2,000円 |
大学入学共通テスト(3教科以上) | 1万8,000円 |
一般選抜(国公立) | 約1万7,000円 |
一般選抜(私立) | 約3万5,000円 |
一般選抜(医学部、歯学部) | 約4万円~6万円 |
総合型選抜(国公立)学校推薦型選抜(国公立) | 約1万7,000円 |
総合型選抜(私立)学校推薦型選抜(私立) | 約3万円 |
金額の内訳を見ていくと、大学入学共通テストは受験する教科数によって金額が異なり、2教科以下は1万2,000円、3教科以上は1万8,000円となっています。次に国公立大学の一般選抜(二次試験)ですが、こちらは前期、中期(公立の一部)、後期とあり、受験するたびに約17,000円の受験料が必要になります。私立大学の一般選抜の受験料は更に高く、約3万5,000円で、医学部や歯学部になると4万円〜6万円程の金額になります。
しかし、私立大学は同学内で違う学部を受験する併願を使用すると、受験料が割引される大学もあるので、大学の募集要項をしっかりと確認しておくと良いでしょう。また、共通テストを利用する大学入学共通テスト利用入試では、受験料が約1万5,000円〜2万円程になり、私立大学の一般選抜を受験するよりも金額が抑えられるため、こちらもチェックしておくと良いでしょう。
最後に、総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜です。
これらは、国立大学だと受験料が約1万7,000円、私立大学だと約3万円程になります。このように、受験方式やそれが同じでも私立と国公立で受験料が変わってくるので、こちらも計算に入れる必要が出てきます。そして、ここに受験会場までの交通費や宿泊費なども追加になります。また、これら大学への納付額や受験費用以外にも考慮しなければいけない点は大学入学後にかかる費用です。
大学生活に必要な費用は?
JASSO(日本学生支援機構)の「令和2年度学生生活調査」によると、大学生に年間かかる生活費は平均で181万円といわれています。
大学生の年間生活費
種別 | 金額 |
---|---|
国立大学 | 約143万円 |
公立大学 | 約137万円 |
私立大学 | 約192万円 |
平均 | 約181万円 |
詳細は、国立大学が約143万円、公立大学が約137万円、私立大学が最も高く192万円となっており、私立が公立よりも52万円高くなるので、4年間で計算すると200万円程の差が出てきます。
大学生の年間生活費内訳
- | 国立大学 | 公立大学 | 私立大学 |
---|---|---|---|
娯楽 | 約30万5,000円 | 約31万8,000円 | 約31万4,000円 |
食費・住居・光熱費 | 約53万4,000円 | 約44万9,000円 | 約30万3,000円 |
また、娯楽に費やすお金は国立大学が約30万5,000円、公立大学が約31万8,000円、私立大学が31万4,000円とほとんど同じになっていますが、食費・住居・光熱費は国立大学が約53万4,000円、公立大学が約44万9,000円、私立大学が役30万3,000円と大きく差があります。これは、国立大学の場合アパートから通う率が高いのに対して、公立大学、私立大学は自宅から通う率が高くなっているからです。単純な学費だけの比較では国公立大学と私立大学では大きな差が開きますが、その他、生活費等を含めるとその差は縮まります。自宅から通うのかアパートやマンションから通うのかによって、かかる費用は大きく変わってくるので、大学選びの際には総合的に考える必要が出てきそうです。
大学の費用を工面するには?
JASSO(日本学生支援機構)の「令和2年度学生生活調査」によると、大学生の年間収入は192万円といわれています。内訳を見ると、家庭からの給付が約114万4,000円、奨学金が約37万3,000円、アルバイトが約36万6,000円、その他が約4万3,000円となっており、アルバイトをしている学生は約80.7%います。
大学生の年間収入内訳
内容 | 金額 |
---|---|
家庭からの給付 | 約144万4,000円 |
奨学金 | 約37万3,000円 |
アルバイト | 約36万6,000円 |
その他 | 約4万3,000円 |
家庭からの給付は2008年頃は約144万円といわれていましたが、2020年には約114万円まで落ちています。家庭からの給付のみで就学可能な学生が約49.1%いる中、家庭からの給付のみでは就学が困難な学生は約31.5%おり、奨学金は約49.6%と約半数以上が受給しています。
支援制度や奨学金もチェック
大学では子どもが一定の学力水準を満たすと利用できる「高等教育の修学支援新制度」があります。こちらは、意欲があるにも関わらず金銭的理由で進学できない子どもたちを成績だけで判断せず支援するために、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校に適用される制度です。大学であれば、入学金や授業料の免除や減額、返還不要の奨学金を受けられたり、JASSO(日本学生支援機構)であれば、給付型の奨学金支給があります。
修学支援新制度
種類 | 内容 |
---|---|
大学 | 授業料・入学金 |
免除/減税 | JASSO/給付型奨学金支給 |
JASSO(日本学生支援機構)の奨学金は、評定平均3.5以上(所得要件あり)で無利子第一種。最大月額支給額は、国公立であれば住居が自宅の場合で4万円、自宅外の場合で5万1,000円。私立では自宅が4万5,000円、自宅外が6万4,000円となっています。評定平均が平均水準以上(所得要件あり)であれば有利子第二種。月額支給額は2万円〜12万円の奨学金給付が受けられます。また、第一種・第二種併用貸与の奨学金もあります。
JASSO(日本学生支援機構)奨学金
A1 | 最大月額支給額 | 自宅 | 自宅外 | 所得要件 | 評定平均 |
---|---|---|---|---|---|
無利子第一種 | 国公立 | 40,000円 | 51,000円 | あり | 3.5以上 |
無利子第一種 | 私立 | 45,000円 | 64,000円 | あり | 3.5以上 |
有利子第二種 | ー | 20,000〜120,000円/月 | 20,000〜120,000円/月 | あり | 平均水準以上 |
給付型奨学金の場合は、世帯収入の基準を満たしていれば、成績だけで判断せず、学ぶ意欲があれば支援を受けられます。また、給付型奨学金の対象となれば、大学の授業料・入学金も免除、または減額されます。授業料・入学金の免除・減額は大学等が、給付型奨学金の視線はJASSO(日本学生支援機構)が行います。
下記の表は返済不要の給付型奨学金の支給月額です。
住民税課税世帯は第Ⅰ区分に分類され、国公立で自宅通学なら2万9,200円、自宅外通学なら6万6,700円、私立なら自宅通学で3万8,300円、自宅外通学なら7万5,800円の給付が月額で受けられます。また、生活保護世帯や児童養護施設等から通学する学生は更に給付額が上がり、家賃を支払いながら児童養護施設等から通学する学生は、自宅外通学の申請ができるようになっています。
給付型奨学金の支給月額(住民非課税世帯〈第Ⅰ区分〉の場合)
(住民非課税世帯〈第Ⅰ区分〉の場合)
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
---|---|---|
国公立(大学・短期大学・専門学校) | 29,200円(33,000円) | 66,700円 |
私立(大学・短期大学・専門学校) | 38,300円(42,500円) | 75,800円 |
給付型奨学金の対象者は、大学等へ申請することで年間で最大約70万円の授業料の免除・減額を受けることができます。
免除・減額の年額
(住民非課税世帯〈第Ⅰ区分〉の場合)
区分 | 国公立(入学金) | 国公立(授業料) | 私立(入学金) | 私立(授業料) |
---|---|---|---|---|
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
支援を受けられる額は世帯構成や収入に応じて3段階の基準で変わってきます。
下記は、4人家族〈本人(19〜22歳)・父(給与所得者)・母(無収入)・高校生〉で、 本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)です。支援の対象になるかは、 JASSO(日本学生支援機構)に進学資金シミュレーターというものがあるので活用してみましょう。
世帯収入別支援額
ー | 世帯収入 | 給付型奨学金 | 授業料免除・減額 |
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住民税非課税世帯 〈第Ⅰ区分〉 | 〜300万円 | 約91万円 (上限額) | 約70万円 (上限額) |
住民税非課税世帯 〈第Ⅱ区分〉 | 〜400万円 | 約61万円 (上限額の2/3) | 約47万円(上限額の1/3) |
住民税非課税世帯 〈第Ⅲ区分〉 | 〜460万円 | 約47万円 (上限額の2/3) | 約23万円(上限額の2/3) |
また、大学独自の奨学金もあります。
こちらは、入学時に一般選抜の上位対象人数が規定の金額の給付を受けられたり、在学時には成績上位の対象者に年間の半額の授業料が給付される等、大学によって要件や制度は異なってきます。例えば下記2大学では下記のような制度があるのをご存知でしょうか?
愛知大学スカラシップ
採用数300人・入試成績上位者対象の給付型奨学金
項目 | 内容 |
---|---|
給付・貸与 | 給付 |
金額 | 授業料および教育充実費の半額相当額 |
通知・給付時期 | 対象者へ合格発表時に通知。給付時期は各学期。 |
概要 | 前期入試、M方式入試および共通テスト利用入試(前期)5教科型の成績上位者に対して、1年次の授業料および教育充実費の半額相当額を給付する制度です。 |
目的 | 本学の建学の精神を具現すべく、我が国、地域社会の未来を担う将来を地方創生のために切望する若人(2024年3月に日本(海外の在外教育施設を含む)の高等(中等教育)学校卒業見込みの者)が広く高等教育を学ぶ機会を確保し、その才能を十分発揮されるよう修学を奨励することを目的としています。 |
対象 | 2024年3月に日本(海外の在外教育施設を含む)の高等(中等教育)学校卒業見込みの者で、前期入試、M方式入試および共通テスト利用入試(前期)5教科型の成績上位者 |
名城大学 学業優秀にかかる奨学生
種類 | 資格 | 人数 | 給付額 | 備考 |
---|---|---|---|---|
入試成績優秀奨学生 | 一般選抜(A方式)において、 各学部成績上位の合格者(対象者約400名※)の内、入学した者 ※対象者には、A方式合格通知書にてお知らせします。 | 対象者全員 | 授業料年額の1/2 | 入学年度のみ対象 |
学業優秀奨励制度 | 新3年次生で、2年次までの学業成績および人物優秀者(薬学科は新5年次生で、4年次までの学業成績および人物優秀者) 成績基準:次の(1)および(2)に該当する者 (1)2年次までに62単位以上(教職および学芸員に関する授業科目、自由科目を除く。)を、修得している者 薬学科は4年次までに150単位以上を、修得している者 (2)履修登録科目の平均点が80点以上の者 | 260人 | 3万円相当の金品 | 大学側で対象者を決定後、7月頃に申請方法を通知します。 |
学業優秀奨学生 | 新4年次生で、3年次までの学業成績および人物優秀者 成績基準:次の(1)および(2)に該当する者 (1)3年次までに93単位以上(教職および学芸員に関する授業科目、自由科目を除く。)を、修得している者で、卒業見込みの者(薬学科を除く) (2)履修登録科目の平均点が80点以上の者 | 各学科で1人(薬学科は2人) | 授業料年額の1/2 | 大学側で対象者を決定後、申請方法を通知いたします。 |
教育ローン
国民政策金融公庫や銀行、信用金庫等では教育ローンを扱っています。
教育ローンの金利は一般的なカードローンよりも金利が低く設定されており、例えば日本政策金融公庫では子ども1人あたり上限350万円までの借入が可能であり、日本学生支援機構等の奨学金と併用することもできます。また、家庭の状況によっては要件を満たせば子ども1人あたり450万円までの借入も可能になっています。金利は固定で年2.25%(令和5年10月時点)となっており、返済期間は18年以内です。この様に、各家庭の金銭事情に合わせて、大学の学費や生活費の工面をしていく必要があるので、早めから大学にかかるお金を試算しておくようにしておきましょう。
受験料の削減
なるべく受験料を削減するために、受験する大学数を絞るという方法があります。単純に受験回数を減らすのではなく、中堅までの私立大学では割引をしている大学が多くあるので、そういった割引制度が利用できる大学を受験します。例えば、中京大学には3受験Packという出願方法があり、本来3回受験すると最大7万5,000円かかる検定料を、この出願方法を利用することにより3万5,000円まで割引をしてくれます。また、この出願方法を利用すれば、5,000円で1受験追加することもできます。このように、本来よりもお得に受験ができる大学をリサーチして受験する大学数を絞ることも受験料を削減して節約する方法になります。
まとめ
いかがですか?
年々大学の進学率は上がっていますが、大学には入学から卒業まで非常に多くのお金がかかります。そして、その金額は大学に関わる情報を総合的に見て見積もっていかなければなりません。また、時には奨学金を借りる必要があったり、子どもにアルバイトをしてもらう必要も出てくるでしょう。今一度、大学にかかるお金の計算をして、どのような大学を選び、受験をするのか、家庭の事情と照らし合わせながら考えていきましょう。
参照:
令和4年学校基本調査確報報道発表資料
https://www.mext.go.jp/content/20221221-mxt_chousa01-000024177_001.pdf
私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00004.htm
(資料1)令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について
https://www.mext.go.jp/content/20211224-mxt_sigakujo-000019681_1.pdf
日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf
JASSO(日本学生生活支援機構)「令和2年度学生生活調査」
https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/__icsFiles/afieldfile/2022/03/16/data20_all.pdf
JASSO(日本学生支援機構)奨学金制度の種類と概要
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/index.html
JASSO(日本学生生活支援機構)2023年度在学採用(大学等)に係るリーフレット
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/__icsFiles/afieldfile/2023/02/28/r5_zaigaku_leaflet_2.pdf
日本政策金融公庫 教育一般貸付(国の教育ローン)
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html
愛知大学 奨学金
https://www.aichi-u.ac.jp/life/information/info-scholarship
名城大学 名城大学内奨学金制度
https://www.meijo-u.ac.jp/campus/support/scholarship01/
鈴木優志(すずきゆうじ)
アクシブアカデミー 代表
アクシビジョン株式会社代表取締役。
大学3年時に「受験戦略」によって大学受験をサポートしたいという思いから地元愛知で起業。現在は東京や大阪など愛知県内外に大学受験専門予備校「AXIV ACADEMY(アクシブアカデミー)」を21校を構える。また、国公立や看護医療系学部に特化したオンライン予備校や、学校内予備校「AXIV for school」も展開する。著書に『大学受験 志望校に「合格する子」の親がやっている6つのこと』がある。
【アクシブアカデミー】https://axivacademy.com/