腸にいいとされ毎日の生活に取り入れる人も多い乳酸菌。ヨーグルトや乳酸菌飲料など食事や飲み物で摂取する人がほとんどだと思いますが、実はこの乳酸菌、腸にいいだけでなくお肌にもいいのだそう。
今回は、健康的で美しいお肌を手に入れるために、今日からはじめられる「お肌の菌トレ」を教えます!
機能性の高さからますます注目される乳酸菌市場
“腸活”や“菌活”が定番の話題となった昨今、健康志向の方々を中心に再注目されているのが
「乳酸菌」。新型コロナウイルス感染拡大がきっかけとなり、停滞期にあったヨーグルト・乳酸飲料のニーズが拡大し、さらには免疫調節や内臓脂肪低減など、新たな機能の登場で新規ユーザーを獲得しています。
特に一時は「どこに行っても手に入らない」といわれていたほどの「Yakult1000/Y1000」が雑誌「日経トレンディ」の「2022ヒット商品ベスト30」の1位にも選ばれ、腸活に人気の乳酸菌飲料に。“ストレスの緩和”や“睡眠の質向上”という新たな価値も加えて大ヒットとなりました。
そんな乳酸菌を活用した食品は、積極的な研究・開発によって表示可能な訴求領域が広がり、“機能性表示食品”としての採用が進んだことで、2022年の市場規模が48億円(前年比9.1%)と増加。今後も健康イメージの訴求力の強さから、堅調に伸びると見られています。
乳酸菌が健康に良いことは広く知られていますが、研究によりさまざまな機能があることが分かっています。
最もよく知られているのは、乳酸菌がおなかまで生きてとどくことで発揮される効果です。
ほかに、乳酸菌の菌体成分や乳酸菌が発酵などで生成する成分により期待できる効果などもあります。
最近の研究では、「皮膚年齢の改善」、「脳機能の改善」など、ユニークな研究結果も報告されています。
『美肌菌』を増やして内側からも外側からも健康的に美しく
肌を内側から美しくする腸の『美肌菌』と腸内フローラ”の関係
人間の腸には“腸内フローラ”と呼ばれるおよそ1,000種類、約100兆個もの、多種多様な細菌が棲んでいるといわれています。
腸内には、善玉菌(有用菌)、悪玉菌(有害菌)、中間的な菌が棲んでいます。この腸内に棲む菌がバランス良く保たれていることが、肌を健康的に美しく保つためには重要と考えられています。
小林暁子氏著の「医者が教える最高の美肌術」では次のように記されています。
善玉菌は、健康的で美しい肌に欠かせない腸の『美肌菌』とも呼ばれ、「乳酸菌」は善玉菌(
有用菌)の一つです。
ほかにも「酪酸菌」、「ビフィズス菌」、「糖化菌」などがあり、これらの善玉菌が助け合って、腸内フローラのバランスを整えています。
腸内フローラが整う(善玉菌(有用菌)が優勢になる)と、血流が改善し、自律神経のバランスが整い、免疫機能が整うことが分かっています。
つまり、血流が改善して肌の隅々まで栄養が行き渡るようになり、
自律神経のバランスが整うことでメンタルが安定して肌の状態も安定します。
さらに免疫機能を調整することで肌細胞のバリア機能が強化されて肌トラブルの解消へと導きます。
肌を外側から美しくする肌表面の『美肌菌』と“肌フローラの関係
近年、腸内フローラと同じように、肌にも“肌フローラ”と呼ばれる肌の健康を左右する細菌があるという研究結果が報告されるようになりました。肌の常在菌の数は250種類以上と腸内細菌よりは少ないですが、肌フローラも腸内フローラと同じように、菌のバランスが整っていることが大切です。主要な皮膚細菌は「表皮ブドウ球菌」、「アクネ桿菌」、「黄色ブドウ球」があります。
その他にもヨーグルトなどに含まれる乳酸菌の「サーモフィルス菌」や酵母の一種である「マラセチア菌」などがバランスをとりながら存在しています。なかでも「表皮ブドウ球菌」、「アクネ桿菌」は共生しながらの持つ酵素により分して、皮膚を保護する物質を作り出し、肌の恒常性に寄与しています。
乳酸菌をとり入れることで保湿の効果が期待できる!?
最近では、乳酸菌の肌へのはたらきが注目されており、さまざまな研究がされています。
その中でも、スキンケアにおいて、乳酸菌が発酵等で産生する成分がお肌に高い効果を有するということが期待されています。
乳酸菌が発酵などで産生する保湿成分(乳酸菌発酵エキス)は、「アミノ酸」と「乳酸」を含んでおり、肌本来のうるおい成分である天然保湿因子と構成成分が似ています。
そのため、乳酸菌発酵エキスは肌なじみが非常に良く、保湿力が高いという特長があります。
さらに、乳酸の一種から、高品質なヒアルロン酸(高分子ヒアルロン酸)も作り出せることが分かりました。
生成された高分子ヒアルロン酸は分子量が大きいため、肌表面でより多くの水分を抱え込んで角層内部の水分蒸散を防ぎます。
膜のように肌を保護して保湿効果を長時間持続することで、うるおい成分をお肌に浸透させていきます。
簡単にいえば、乳酸菌をお肌にとり入れることで、さまざまな保湿の効果が期待できるということです。
皮膚科専門医に聞く!肌をキレイにする「お肌の菌トレ」HOW TO
乳酸菌が腸だけでなく、お肌にも良さそうだということがわかりました。これまで通り腸活としてもとりいれたい乳酸菌ですが、肌をキレイにすることをメインで考えたとき、どんなアプローチをするといいのでしょうか。
自分でできる「お肌の菌トレ」、皮膚科専門医の先生に具体的な方法を教えてもらいました。
お肌の”外から”菌トレ
スキンケアの基本は「洗う」「潤す」「光対策」。
肌フローラを傷めるNGケアを避ければなお良いでしょう。ポイントは以下の3つ。
1.洗顔で、皮脂をきちんと落とす
皮脂は、毛穴に詰まると無酸素状態になり、アクネ菌が増殖しすぎてしまい
ニキビの原因になります。また酸化皮脂は角層の炎症を引き起こし、
老化を進行させることも分かっています。泡立ちの良い洗顔料をきちんと泡立て、
皮膚表面で泡を滑らすように丁寧に優しく洗いましょう。
「皮脂を適度に残すために水やお湯だけで洗う」方も増えているようですが、皮膚科医としてはおすすめできません。洗い流しても元に戻りますし、肌のバリア機能を保とうとする美肌も短時間で増殖するので、皮脂は洗顔時に落とすことを心がけましょう。ただ、洗顔後に肌が突っ張るほどの洗浄力の強い製品は、細胞間脂質まで奪われてしまっている可能性があるため避けましょう。
2.たっぷりと保湿する
美肌菌の増殖には、湿った環境適度に肌が潤った状態)を作ることが重要です。洗顔後のケアは、たっぷりの保湿。それが美肌菌の育成に直結します。
各層が厚くゴワつくような状態ならば、ターンオーバーのスピードが落ちてしまっている可能性があるので、医師に相談したうえで隔週程度のペースでのケミカルピーリングを受けるのもおすすめです。
3.肌に合う日焼け止めを、天候によらず毎日塗る
太陽光(紫外線・ブルーライト・赤外線など)による皮膚ダメージを防ぐのがサンケアです。
太陽光の中でも、特にダメージの強烈な紫外線にさらされると、皮膚は乾燥し、酸化ストレスを契機に炎症が生じ、シミ・しわ・たるみなどの肌老化が急速に進行します。
肌に合う日焼け止めを、基礎化粧の一環として、外出の有無に関わらず、1年365日、日の出から日没まで、天候によらず毎日塗ることが基本です。塗り方としては、薄く二度塗りし、レジャーシーンでは2時間ごとに塗りましょう。
お肌の”内から”菌トレ
腸内フローラを整えると肌にも良い影響があることが分かっています。
「食事」「運動」「ストレスコントロール」で体の内側からお肌の健康を保ちましょう。
1.腸内フローラを整える「食生活」を意識する
米、大麦、もち麦、雑など多様な穀類を摂ることは腸内フローラの多様性を保つ効果があることが分かっています。
過剰な糖質制限ダイエットで、米を食べないと便秘になる場合がありますので注意しましょう。
キノコ類、めかぶなどの海藻類、オクラや山などのネバネバ食品も腸内環境を整えるのでおすすめです。野菜や海に含まれる食物繊維は腸内細菌のエサになり、便のかさを増すことで便通も改善します。
ヨーグルト、納豆、甘酒、ぬか漬け、キムチ、などの食品は内フローラを整える効果があります。
複数を毎日食べ続けることが大切です。もちろん、肌の再生に欠かせないタンパク質は魚、肉、大豆などの豆類すべてをバランスよく摂りましょう。
2.腸の動運動を促す「運動習慣」
ストレッチ、ヨガ、ダンス、ウォーキング、ゆるジョギングなどの穏やかな運動は腸の蠕動運動を促し、便秘を解消し、健康な腸内フローラに役立ちます。
3.瞑想とリラックス入浴で「ストレスコントロール」
交感神経優位な過緊張状態が続くと、腸内環境が悪化し、便秘がちになります。適度なストレスは福度を高めますが、過剰なストレスは酸化ストレスを介して体を蝕みます。呼吸に集中し、副交感神経優位なリラックス状態にスイッチを切り替える好みの入浴剤を楽しむ入浴時間をもうけるなど、ストレスコントロールのは現代人に欠かせません。
グッズを活用する「お肌の菌トレ」も!
最近注目を集めている乳酸菌を活用したスキンケア(乳酸菌発酵エキス)など、菌の機能を活用したグッズでお肌を整えましょう。
乳酸菌由来のコスメを使う、乳酸菌由来のボディケアアイテムを使うなども有効です。
いかがでしたか?お肌の”菌トレ”、とはいうものの、どれも難しいものはなく今からでもすぐに実践できるものばかり。効果的に乳酸菌を取り入れながら、今日から美しい腸とお肌をどちらも手に入れましょう!