新車購入時や、手洗い洗車を業者に依頼したときなどにコーティングをすすめられることがあります。コーティングは傷や汚れから車を守り美観を保つほか、洗車が楽になるなど多くのメリットがあります。しかし、業者に依頼するとそれなりの費用がかかることに加え、さまざまな種類があるのでどのように選べばいいのかわからない、という意見もあります。
ここでは、車のボディコーティングの種類とそれぞれの特徴、選び方などについて詳しくご紹介します。
車のコーティングは必要?
車のボディコーティングとは、車の表面に薬剤などによる皮膜を作り、塗装を保護する処理を指します。
コーティングは車の美観を保つための処理であり、車としての性能に影響を及ぼすものではありません。コーティングをしないと車が走らなくなる、異常をきたす、という性質のものではなく、優先順位はタイヤ交換やエンジンオイル交換などの車の性能に関するものよりも低いといえます。
しかし、コーティングすると車のつやや色の鮮やかさが長持ちするほか、傷がつきにくくなる、洗車が楽になるというメリットがあります。
愛車をできるだけきれいな状態に保ちたい、新車時の色つやを長く維持したい、という方にとっては欠かせないカーケアメニューのひとつといえるでしょう。
コーティングによる6つのメリット
車のコーティングには手間と時間、そしてコストもかかりますが、多くのメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのかを把握することで、コーティングが自分の愛車に必要かどうかの判断もつきやすくなるのではないでしょうか。
車のボディコーティングによって得られるメリットとしては、以下の点が挙げられます。
1.車のつやと輝きを長期間維持できる
車の塗装は、ほこりや排気ガス、鉄紛、油脂や化学物質、泥や砂、紫外線などのさまざまな外的要因によって劣化していきます。
コーティングは硬い被膜でこうした要因から車を守ってくれるため、つやや輝きを長期間キープできるようになります。
2.洗車が楽になる
コーティングを施した車は、コーティングの被膜でボディが滑らかになり、付着したほこりや汚れが除去しやすくなるため、軽い洗車でも汚れが落ちやすくなります。しつこい汚れを何度もこすって落とす必要もなくなるので、日々の洗車がぐっとラクになります。
3.小傷を防ぐ
コーティングの被膜は、飛び石や砂、鉄紛などによる小さな傷からもボディを守ってくれます。
車に乗り続けていると、知らないうちにドアやタイヤの周りに小さな傷がついてしまいやすいですが、コーティングはこうしたダメージからも愛車を守ってくれます。
4.雨シミを防ぐ
車には、雨によって白いウロコ状のシミがつくことがあります。これは、雨水に含まれるミネラルや小さなほこりが原因で、放置すると洗車してもなかなか落ちない汚れになってしまいます。コーティングの被膜は、こうした雨シミからも車を守ってくれます。
5.色あせを防ぐ
車の塗装は、紫外線ダメージによって徐々に色あせてしまいます。特に、赤や青、黒などの濃い色の車ほど、紫外線ダメージを受け続けるとつやが失われ、色もあせてしまいやすいです。
車を元のきれいな色のまま乗り続けたいという方にも、紫外線から塗装を守ってくれるカーコーティングは必須といえるでしょう。
6.車を売るとき査定額が上がる
コーティングによって傷や色あせを防いできた車は、売却時に査定額が上がります。コーティングを施した車は、市場に出す前の研磨作業や細かい清掃作業なども省略できるため、高く買い取ってもらいやすいのです。
コーティングに10~15万円の費用がかかったものの、査定額が通常よりも15~20万円高くなったことで、かえって得をしたというケースもあります。
車のボディコーティングの種類
車のコーティングにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは、一般的な車のコーティングの種類について見ていきましょう。
油脂系コーティング(ワックス)
油脂系コーティングとは、いわゆるワックスのことを指します。車用ワックスの多くはヤシからとれる天然の蝋であるカルナバ蝋を主成分とし、塗装面に油膜を広げてボディのつやを出し、表面を保護する、といった効果が期待できます。持続期間は車の保管環境にもよりますが1~2週間程度で、こまめな手入れが必要です。
施工に特別な機器や知識が必要なく、ワックスそのものも手頃な値段のものが多くあるため、洗車のついでにワックスを塗布する、という使い方が一般的といえるでしょう。施工性に優れコストが抑えられるのがメリットといえますが、熱や水に弱く、耐久性や持続性はほかのコーティング剤に劣ります。
ポリマー系コーティング
ポリマー系コーティングは、フッ素やシリコン、テフロンといったポリマーを原料とするコーティングで、樹脂系コーティングとも呼ばれます。
ワックスの次にリーズナブルで、薬剤によってはDIYも可能。ただしポリマー系コーティングは化学反応によってボディ表面に皮膜を形成するので、ワックスよりも耐久性があり2、3ヵ月~長ければ半年程度持つものもあります。
ワックスよりは強いとはいえ、後述するガラスコーティングやセラミックコーティングと比較すると熱や紫外線で劣化しやすい傾向があり、耐久性では劣ります。
ガラス系コーティング
ポリマー系コーティングの薬剤の中に、ガラス成分が含まれているものをガラス系コーティングといいます。ガラス成分によってポリマー系コーティングよりも持ちがよくなり、半年程度は効果が持続しますが、ポリマーの弱点である熱や紫外線に弱い部分を完全にカバーしているわけではなく性能はガラスコーティングに劣ります。
現状では「ガラス系コーティング」と名乗るのにガラス成分が何%以上含まれていなければならない、といった明確な規定はありません。そのため、ごくわずかでもガラス成分が含まれているだけでも「ガラス系」という名称が使用されていることがあり、商品によって品質は大きく異なります。
ガラスコーティング
現在の主流となるのがガラスコーティングです。ガラスコーティングは塗装面に硬化ガラスによる強固な皮膜を作るもので、耐久性が高く、数年間は効果が持続します。
また、独特のガラス光沢があり、仕上がり美しいのも特徴。ここまで紹介したコーティングの中では最も高額にはなりますが、持続性や仕上がりを考えるとコストパフォーマンスに優れているといえるでしょう。施工には時間がかかり、業者に依頼する場合は数日間預けるのが一般的です。
セラミックコーティング
現時点で最もハイスペックなコーティングがセラミックコーティングで、コーティング専門業者の中でも施工できる店舗は限られ、ハイエンドメニューとして扱われます。
主成分はシリカでガラスコーティングと同じではあるものの、より性能が高く、ガラスコーティングは単層でしかコーティング皮膜を形成できないのに対し、セラミックコーティングは何層にも重ね塗りが可能です。
多層化することによって皮膜の硬度が上がり、より強固になるのでガラスコーティングよりもさらに長い耐久性を誇ります。また、アルカリや酸にも強く、耐薬品性に優れているので融雪剤や酸性雨の影響を受けにくいという、ほかのコーティングにはないメリットがあるのです。中には自己修復機能を持つ商品も存在します。
ただし、費用相場はガラスコーティングよりもさらに高くなり、入念な下地処理が必要になるため施工には1週間程度かかることもあります。
一般的な車のコーティングの流れと手順
続いて、コーティングの施工手順を見ていきましょう。
コーティングの種類によって多少手順は異なりますが、ここではポリマー系で塗布するタイプのコーティング剤の施工の流れについてご紹介します。
1. 洗車
まずは手洗いで洗車し、ボディの表面のほこりや汚れを落とします。車を水でよく濡らし、カーシャンプーを洗車用のスポンジでしっかりと泡立てて優しくボディ表面をなでるように洗います。
なお、業者に依頼すれば、ムラなく仕上げるためにナンバープレートやワイパーブレードなどを取り外して洗車してもらうこともできるでしょう。
2. 鉄粉除去
コーティング前には、粘土や鉄粉除去スプレーを使って鉄紛除去を行います。
車のボディには、道路の鋼材や鉄道レール、ブレーキダストなどのさまざまな要因によって鉄紛が付着します。
塗装面に付着した鉄紛は、日光や雨などでこびりついてしまいます。放置すると錆が発生してしまうこともあるため、この段階できちんと除去しておくことが大切です。
3. 下地処理
ポリッシングマシンで小さな傷やシミなどを除去し、ボディの表面を滑らかに仕上げます。下地処理をしすぎると塗装面まで削れてしまうため、プロの腕の見せ所です。この下地処理の出来が、コーティングの仕上がりにも大きな影響を与えます。
コーティングの専門業者では、下地処理の後に微小なコンパウンドを使ってボディを研磨し、細かい傷を除去する作業も行います。
4. 脱脂処理
油膜がついた状態でコーティングを行うと、塗装面とコート剤のあいだに残った油膜がコーティング剤の定着を邪魔し仕上がりが損なわれるため、脱脂処理を行います。
カー用品店などで入手できる専用の油膜除去剤をスポンジに含ませ、優しく縦横にこすって油膜汚れを丁寧に取り除きます。脱脂後はマイクロファイバークロスなどのやわらかい布で拭き上げましょう。なお、油膜除去剤がない場合は家庭用食器洗剤やアルコールでも代用できますが、場合によっては塗装の色に影響を与える可能性もあるので、目立たない部分で試してからの使用がおすすめです。
4. コーティング剤の塗布
最後に、コーティング剤を塗布していきます。専門業者などでは通常、コーティング剤の塗布は密閉した屋内で行われます。これは、ほこりや雨による水分などがコーティング面に付着するのを防ぐためです。
コーティング剤を塗布する際には、専用のスポンジに薬剤を付けて、20cm四方程度のごく狭い範囲を少しずつむらにならないように、塗り込んでいきます。一枚のパネルに塗布したら、その都度マイクロファイバークロスで拭き上げましょう。それをボディ全体が終わるまで繰り返します。
施工後は指定の時間どおりにしっかりと硬化させましょう。乾燥しているあいだに汚れや水分が付着しないよう、保管場所には注意してください。完全に硬化するまでの時間は薬剤によって異なりますが、最低でも24時間は必要です。
車のコーティングはどこに頼む?
車のコーティングは、ディーラーやガソリンスタンド、カー用品店やコーティング専門店で行うことができます。それぞれに特徴があり、業者や店舗によっては対応していないコーティングの種類もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
ディーラー
最近は、車の購入時にコーティングをセットですすめるディーラーも増えています。納車時にコーティングが施されていれば、新車のきれいな状態をより長く維持することができるでしょう。
ディーラーの場合、店舗内で施行するタイプと業者へ外注するタイプに分けられ、それぞれ費用も変わってきます。どの種類のコーティングを受けられるのか、効果はどれくらい持続するのか、メンテナンスの頻度なども確認し、価格にも納得した上で依頼することが大切です。
ガソリンスタンド
系列店のガソリンスタンドでは、タイヤ交換などと同様に、コーティングに対応しているところもあります。
ガソリンスタンドの場合、店舗によって施行するスタッフの経験やスキルにばらつきがあるため、施工事例が多くて信頼できる店舗を選んで依頼することをおすすめします。
カー用品店
全国チェーンの大手カー用品でも、コーティングサービスを展開しています。特別価格でコーティングサービスを提供している店舗も多く、アフターサービスも充実している点が魅力です。
また、大手カー用品店なら、経験・スキルともに兼ね備えたスタッフが施工を担当してくれる可能性もあります。
コーティング専門店
コーティングに特化した専門店は豊富なメニューを用意し、さまざまな種類、価格帯のコーティングを提供します。専門店だけにコーティングに関する知識や技術力も高く、安心して任せられるでしょう。
なお、ガラスコーティングやセラミックコーティングといった難易度の高いコーティングが施工できるのは専門店がほとんどです。そのためガラスコーティング、セラミックコーティングを希望するのであれば専門店に車を持ち込むのがおすすめです。
車のコーティングにかかる費用の相場
コーティングの種類や施工業者によって、費用も異なります。
〈コーティング費用の目安〉
価格 | 70,000円~30万円 | 30,000~70,000円 | 20,000円~10万円 | 30,000円~30万円 |
※2023年11月編集部調べ
ディーラーはブランドイメージの維持のため、手厚いサービスの提供を行います。そのためコーティングに限らず全般的にメンテナンス類の費用相場は高い傾向にあり、コーティングにおいても専門店と同程度の高い相場となっています。
コーティング専門店はさまざまなコーティングのメニューを取り揃えており、専門店でしかできないハイエンドメニューのセラミックコーティングなどの提供があるため、費用相場が上がります。ただし、ポリマーコーティングなどは手頃な価格で提供しています。
カー用品店やガソリンスタンドは施工できるメニューが限られており、費用相場も比較的安いといえるでしょう。
また、コーティングの費用は車の大きさや車種、新車か否かによっても異なります。いずれの業者も目安に幅があるのはそのためです。
車のコーティングはDIYできるの?
車のコーティングを業者に依頼するとある程度の費用がかかります。今ではインターネットでコーティングの手順を紹介している記事や動画なども多く存在し、カー用品店をはじめECサイトでも豊富なカーケア用品が手に入るので、DIYにチャレンジしたいという声もよく聞きます。
そこで、車のコーティングはDIY可能なのかどうかをタイプ別に見ていきましょう。
油脂系・ポリマー系は可能
油脂系コーティング、いわゆるワックスはDIYが基本といえるでしょう。難しい工程も特別なアイテムも必要なく、洗車の延長の感覚でワックスとクロスさえあればできます。下地処理なども必要ありません。
ポリマーコーティングは、ワックスよりも手順が大幅に増えますがDIYも可能です。ただしコーティングの手順の項目で説明したように、洗車から鉄粉除去、下地処理、脱脂など多くのプロセスを踏まなければならず、手間と時間がかかります。
また、コーティング剤のほかにも油膜除去剤や鉄粉除去剤、研磨剤などやマスキングテープなどさまざまなアイテムが必要です。本格的に施工するのであればポリッシャーも用意しなければなりません。
施工に必要なアイテムがもともとそろっており、よほど手慣れているのであれば別ですが、かかる費用と時間、そして手間を考えると業者に依頼するほうが、コストパフォーマンスが良いといえるかもしれません。
ガラスコーティングやセラミックコーティングは業者でないと難しい
ガラスコーティング、またセラミックコーティングはコーティング剤の扱いが非常に難しく、DIYでは難易度が高いコーティングといえます。ムラになりやすいため均一に塗布しにくく、硬化までの時間も長いので保管場所にも配慮が必要です。
ガラスコーティングはここ最近普及してきたことから施工できる店舗も増えてきましたが、それでもガソリンスタンドやディーラーでは対応できないケースも多く、基本的にコーティング専門店への依頼になります。セラミックコーティングはさらに専門店の中でも施工できる店舗は限られるので、DIYはできない、と考えるべきでしょう。
車に最適なコーティングの選び方
コーティングにも複数の種類があり、施行を受けられる業者もさまざまです。そこで、愛車に最も適したコーティングを選ぶために着目すべき、ポイントをご紹介します。
カーライフを踏まえて検討する
コーティングは、価格の安さや施工の手軽さだけで決めないようにしましょう。
普段の車の保管状況や走行距離、使用目的など、ご自身のカーライフを考慮した上で、どれくらいのコーティングの耐久期間が必要なのか、価格とのバランスも見つつ決めることをおすすめします。
実際の施工例も参考にする
どのコーティングを施すべきか悩んだときは、実際に施工店に行き、相談してみることをおすすめします。
施工例が多く経験豊富な業者に相談すれば、愛車に最適なコーティングメニューを提案してもらえるでしょう。
また、もし施工済みの車両が業者に置いてあれば、見せてもらえないか聞いてみましょう。実際にコーティングを施した後のイメージがしやすくなります。
あなたに向いているコーティングはどれ?
車のボディコーティングは、種類によって特徴や費用相場が異なるのはこれまで見てきたとおりです。ここでは、それぞれのコーティングがどのような方に適しているのかを見ていきましょう。
油脂系コーティング(ワックス)が向いている方
油脂系コーティングであるワックスは、できるだけ手軽に、手間をかけずにコーティングしたい方に向いています。また費用相場も最も安いので、なるべくお金をかけずに愛車をきれいにしたい、という方にもいいでしょう。
なおクラシックカー(旧車)の中にはガラスやセラミックコーティングが向かない車もあります。クラシックカーは経年劣化によって塗装がダメージを受けていることが多く、コーティングするとなると下地処理の段階で塗装がはがれるなどのトラブルになる可能性があります。そのため専門店でもクラシックカーの施工は受け付けていない、というケースも見られます。
また、オリジナル塗装が残っているクラシックカーであればそのニュアンスを活かすためにコーティングは避ける、という声もあるので、クラシックカーを愛用している方にもワックスは適している
といえるでしょう。
ポリマー系コーティングが向いている方
ワックスでは物足りない、ワックスよりもう少し「コーティングをしている」という実感が欲しい、という方にはポリマーコーティングがおすすめ。ガラスコーティングよりも持ちが悪くてもいいからコストは抑えたい、という方にも適しています。
初めてコーティングしてみるからまずはチャレンジしやすい価格のものから、という場合にもいいでしょう。なお、ワックス以外でDIYコーティングをしてみたい、という方の選択肢はポリマーコーティングまたはガラス系コーティングのみです。
ガラス系コーティングが向いている方
ポリマー系コーティングよりも施工頻度を下げたい、でも費用はあまりかけたくない、という場合はガラス系コーティングがいいでしょう。
ガラス成分の含有量によってはガラス光沢を感じさせる仕上がりのものもあります。そのため、ガラスコーティングに興味があるけれども高額なので、どういった感じなのか仕上がりのニュアンスだけでも見てみたい、というニーズも満たしてくれます。
ガラスコーティングが向いている方
年単位で効果が持続する、持続性、耐久性が高いコーティングがしたい方にはガラスコーティングが向いています。ある程度の費用はかかりますが施工頻度がポリマーやガラス系コーティングより低いため、長い目で見るとガラスコーティングのほうが手間いらずコストパフォーマンスが高いことも少なくありません。
また、ガラス質の美しいつやや光沢は油脂系、ポリマー系では得られません。仕上がりにおいて満足感を得たい方にもぴったりでしょう。
セラミックコーティングが向いている方
最上級の仕上がり、そしてより高い耐久性を求めるのであればセラミックコーティングがおすすめです。現時点で最もハイスペックなコーティングであり費用相場も高いので、高級車にも適しています。
耐薬品性が高いので、融雪剤の影響を受ける地域を走る機会が多い方にとっても選択肢のひとつといえるでしょう。また、セラミックコーティングには自己修復作用を有するものもあるため、車を使用しているとどうしてもできてしまう微細な傷が気になる方にも向いています。
コーティングした車を洗車するときの注意点
コーティングした車は皮膜で塗装面が守られており、汚れが固着しにくくなっているので、日常的なお手入れは水洗い洗車で十分です。花粉や黄砂が舞う季節や、鉄粉が付着する可能性がある工業地帯などを走った場合は、軽くシャンプー洗車しておけばより安心でしょう。
ここでは、コーティングした車を洗車する際の注意点をご紹介します。正しい方法で洗車することで、よりコーティングの効果が長持ちし、車を美しい状態に保てます。
汚れの放置はNG
コーティングした車は皮膜で塗装面がカバーされているので、それほど汚れに神経質になる必要はありませんが、チリやほこりといった通常の汚れ以外に目立った汚れがついた場合、放置は厳禁です。
鳥の糞や木の実は強い酸が含まれている場合があり、付着したまま放置するとコーティングにダメージを与える可能性があります。また、大量の花粉も要注意です。花粉に含まれるペクチンは水分によって固まり、非常に落としにくくなります。
未舗装路を走った場合の泥なども放置するとコーティングに悪影響を与えることがあるので、汚れが目についたらこまめに洗い流すようにしましょう。
水滴が乾く前に拭き上げる
これはコーティングした車に限ったわけではないですが、洗車後は水滴が乾く前に素早く拭き上げることが大切です。
拭き上げる前に乾いてしまうと、水の中に含まれる不純物がボディ表面に残り、イオンデポジットと呼ばれるシミになります。このイオンデポジットを放置するとシミがだんだん浸透し、コーティング皮膜や塗装を陥没させるウォータースポットになってしまい、コーティングがはがれる原因になるのです。
洗車は水滴が乾きにくい風のない曇りの日を選び、できるだけ素早く拭き上げるように心掛けましょう。
できるだけ洗車機を使用せずに手洗いで
コーティングした車の場合、洗車機の使用はあまりおすすめできません。
洗車機のブラシはやわらかく傷つけにくい素材でできているものも多いですが、ボディに汚れや砂ぼこりがついた状態のまま洗車機に通すと、コーティングを傷つけてしまう可能性があるためです。
また、洗車機のブラシにも油系の汚れであるピッチタールが付着していた場合、さらに汚れや傷を広げてしまうリスクも考えられます。
ガラスコーティングは硬くて強い被膜ではありますが、一度傷つくと簡単には修復できません。そのため、コーティングした車は洗車機を使わず、手洗いでやさしく汚れを落とすことをおすすめします。
簡単な水洗いで汚れを除去できるよう、汚れがついたときは早めに落とすよう心がけましょう。
車のコーティングに関するよくある質問
車のコーティングについて、そもそもコーティングが必要なのかどうか、どの程度の頻度で施工するべきなのかなど、よくある質問をまとめました。
車のコーティングは必要でしょうか?
コーティングは車の美観を長く保ち、メンテンナンス性を上げるためのカーケアです。走りなど車の性能や安全に関わるわけではないため、「絶対にしなければならない」というものではありません。
ただし、コーティングすることによって車の塗装を紫外線や酸性雨などから守り、長く美しい状態を保ってくれるほか洗車が楽になるなどの多数のメリットがあるため、積極的に取り入れたいケアのひとつといえるでしょう。
新車を買ったらいつコーティングすればいい?
納車されたらできるだけ早くコーティングしましょう。早ければ早いほど微細な傷などが少ない状態で施工できるので、新車時の美しい色やつやを長く保てます。可能であれば、ディーラーで納車前に施工してもらい、コーティングした状態で納車してもらうのもおすすめです。
コーティングしたら洗車しなくていいの?
コーティングした車は汚れが固着しにくくなってはいますが、まったく洗車しなくて良いわけではありません。2~3週間に1回程度は洗車が必要です。基本的には水洗い洗車で大丈夫ですが、汚れがひどい場合はカーシャンプーを使っての手洗い洗車がおすすめです。
ただし、鳥の糞や木の実、落ち葉、虫の死骸などが付着している場合はコーティングを劣化させる可能性あるので、放置せずにその都度洗車するようにしましょう。
コーティング後、何日経ったら洗車できる?
コーティングは、完全に硬化するまで時間がかかります。硬化しきる前に洗車するとコーティングを傷つけたり、はがしてしまったりする危険があるので、1ヵ月程度は洗車を避けましょう。万が一汚れが付着した場合は、その部分だけをできるだけこすらずに、優しく水洗いしてください。
車のコーティングはどれくらい持つの?
車のコーティングの持続性は、種類によって異なります。油脂系(ワックス)は2週間程度ですが、ポリマー系になると数ヵ月から半年間は効果が持続します。専門店で施工するガラスコーティングやセラミックコーティングになると、持続性はぐんと高まり、ガラスコーティングで3~5年程度、セラミックコーティングの場合は5年以上の持続性が期待できるでしょう。
コーティングは何年おきに実施するべき?
コーティング剤の性能や車の保管環境によっても変わりますが、ガラスコーティングの場合は3年を経過したらコーティングの様子をチェックし、劣化しているようであれば再施工を検討しましょう。セラミックコーティングなら5年程度が目安になります。
ポリマー系コーティングや油脂系コーティング(ワックス)は持続性がそれほどないので、もっと頻繁な施工が必要です。ポリマー系なら半年程度、油脂系なら数週間おきが目安です。
※この記事は2023年11月時点の情報で制作しています
この記事の監修者
クルマ専門家・自動車整備士・危険物取扱者 若林由晃(わかばやしよしてる)
代々継がれる創業70年の車販・整備工場を営む家に生まれ、エンジンオイルとガソリンの香りにまみれながら育つ。小学校から車販の接客、中学校には整備の手伝いを行う根っからのカーガイ。自動車整備専門学校では上位の成績で卒業。整備士国家資格は満点合格(専門学校の先生が採点)。 その後、大手自動車メーカー系列のディーラーで整備と中古車販売を経験。IT×車という販売方法に興味を持ち、個人向けカーリースのセールスに転身。中古カーリース事業、全国の加盟店販売事業、自動車販売事業に参画している。
メディア出演・寄稿歴:テレビ東京「ワールド・ビジネス サテライト」、日本テレビ「news every」「DayDay.」、ラジオ関西「Clip」、徳間書店「GoodsPress(グッズプレス)」、朝日デジタルラボ「Moovoo」ほか