車の人気を測るバロメーターは大きく2つあります。一つ目は新車の納期です。人気の高い車種によっては納車まで数年ということもあります。そして、もう一つが売却の際の買取りや下取り価格などでの残価率です。中古車は新車と異なり人気が価格に影響するため、新車時価格が同じでも残価率は異なります。そこで、国産、輸入車約150車種の残価率を調べて判明した、値崩れしにくい車のランキングを国産車と輸入車にわけてご紹介します。
まずこの記事では、国産車のランキングを見てみましょう。
この記事の執筆者
モータージャーナリスト 萩原文博(はぎはらふみひろ)
中古車雑誌編集部を経てフリーランスとして独立、現在はAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員として多くのメディアで執筆中。日本で最も多くの広報車両を借り出している男として業界で有名だ。もともと走り屋だけに走行性能の評価は得意。それだけでなく長年の中古車相場の研究で培った、人気車種の動向や流行りの装備の価値評価などを加味した、総合的に買いのクルマ・グレードの紹介をモットーとしている。
値崩れしにくい国産車TOP15はコレだ!
最初の車検サイクルを迎える2021年式の国産車(現行、旧型、生産終了)のうちOEM供給車を除いた約100モデルの中から残価率の高い値崩れしにくいTOP15を選んでみました。ボディタイプでは、ミニバンが4車種、スポーツカーが2車種、SUVが4車種。そして軽自動車が6車種となっています。
1 | スズキ「アルトワークス」4WD 5MT | 149.8万円 | 132万円 | 88.11% |
2 | トヨタ「ヤリスクロス」 HV Z 2WD | 234.9万円 | 205万円 | 87.27% |
3 | トヨタ「RAV4」 HV アドベンチャー4WD | 373.2万円 | 325万円 | 87.08% |
4 | トヨタ「GR86」 RZ 6MT | 304.4万円 | 264万円 | 86.72% |
5 | 日産「フェアレディZ」 バージョンST 6MT | 472.6万円 | 408万円 | 86.33% |
6 | トヨタ「アルファード」 HV Sタイプゴールド | 458.1万円 | 395万円 | 86.22% |
7 | ホンダ「フリード」HV Gホンダセンシング2WD | 198.4万円 | 171万円 | 86.18% |
8 | トヨタ「RAV4」 PHV GZ | 453.6万円 | 390万円 | 85.97% |
9 | 三菱「デリカD:5」 Gパワーパッケージ | 378万円 | 322万円 | 85.18% |
10 | トヨタ「ライズ」1.0Z 2WD | 187.2万円 | 159万円 | 84.93% |
11 | ホンダ「S660」 モデューロX 6MT | 276.6万円 | 234万円 | 84.59% |
12 | ホンダ「N-ONE」 RS 6MT | 181.8万円 | 153万円 | 84.15% |
13 | スズキ「スペーシアカスタム」XSターボ4WD | 171.2万円 | 143万円 | 83.52% |
14 | スズキ「ハスラー」Xターボ2WD | 146.6万円 | 122万円 | 83.21% |
15 | トヨタ「ノア」2.0Si W×BIII 2WD | 264.5万円 | 218万円 | 82.41% |
●圧倒的な強さを誇るトヨタ車と軽スポーツモデルが上位にランクイン
第1位となったのは、多くの人の予想に反して軽自動車の生産終了モデルであるスズキ「アルトワークス」4WDの5MT車。なんと3年落ちの残価率は約88.11%とほとんど値崩れしていません。このアルトワークス以外でも、軽自動車のMT車はホンダ「S660」、「N-ONE」もランクイン。手頃な価格で購入できる軽MT車の人気は高いことがわかります。
また、MT繋がりで言うと、トヨタ「GR86」と日産「フェアレディZ」が86%以上という高い残価率を示しています。スポーツカー人気は健在といったところでしょうか。
ミニバンでは、旧型のトヨタ「アルファード」、「ノア」、ホンダ「フリード」、そして現行型の三菱「デリカD:5」がランクイン。アルファード、ノアは旧型なので、現行型はさらなる高い残価率が予想できます。ミニバンには人気車の値崩れはないという法則が以前からあり、今回もやはりそれが当てはまりました。予想外に健闘しているのが、デリカD:5。ミニバン+SUV+ディーゼルエンジンという唯一無二の存在が固定ファンのハートをしっかりつかんでいるのでしょう。
安定した人気を誇るSUVではトヨタ「ライズ」、「ヤリスクロス」、「RAV4ハイブリッド」。「RAV4 PHV」と上位にランクインしているのはトヨタ車のみとなっています。RAV4と同じミドルサイズSUVにハリアーがありますが、残価率はよりアウトドアユースを重視したRAV4が上回っているのは興味深いところです。
軽自動車では、スポーツモデルを除くとスペーシア、ハスラーといったスズキ車がランクイン。スペーシアカスタムはフルモデルチェンジしたにも関わらず残価率80%超えとなっており、N-BOXをリード。最近の新車販売台数でもスペーシアがN-BOXを上回ったことがニュースになっていましたが、中古車市場での旧型スペーシアも健闘しているようです。
1位:スズキ「アルトワークス」(旧型)
旧型スズキ「アルト」に設定されたアルトワークスは2015年12月、約15年振りに復活したスポーツモデルです。
ひと足先に発売されたアルトターボRSをベースに、搭載する最高出力64psを発生する660ccの直3ターボエンジンは最大トルクをベース車の98Nmから100Nmへと高めるだけでなく、アクセルレスポンスを向上させ、ペダル操作にダイレクトに反応する加速フィーリングを実現。さらに、専用の味付けを施したショックアブソーバーを採用し、より高い操縦安定性、接地感そして応答性を両立させています。そのアルトワークス4WDの5速MT車が残価率88.11%で国産車の値崩れしにくい車の第1位となりました。
すでに生産終了となっており後継モデルも不在のままなので、今後さらなる値上がりする可能性もあります。
2位:トヨタ「ヤリスクロス」
値崩れしにくい国産車の第2位となったのは、残価率87.27%のトヨタ「ヤリスクロス」です。
ヤリスクロスは2020年から販売開始されたコンパクトSUV。名前のとおり、コンパクトカーヤリスのクロスオーバーモデルです。
1.5Lガソリン車と1.5Lエンジンのハイブリッド車を用意し、ハイブリッド車の最上級モデルZ2WDが残価率87.27%となりました。白(パール)のボディカラーや人気のオプション装備を装着すればさらに高い残価率が期待できます。
3位:トヨタ「RAV4」
2019年4月に登場した現行型トヨタ「RAV4」のハイブリッド車が残価率87.08%で値崩れしにくい国産車第3位となりました。
SUVらしい力強さと洗練さを融合したデザインを採用。搭載されているパワートレインは2L直列4気筒ガソリンエンジン。そして2.5Lガソリンエンジン+モーターのハイブリッドシステムの2種類。そして新搭載された4WDシステムにより優れた走行性能を実現しています。
最も高い残価率を記録したのが、オフロードイメージを強調したアドベンチャーのハイブリッド車でした。トヨタには同じミドルサイズSUVとして人気の高いハリアーがありますが、RAV4のほうが残価率は高くなるという予想外の結果でした。ラグジュアリーなハリアーではなくタフギア感のあるRAV4のほうが、中古車市場の主役である若者層に人気があることを反映しているのではないでしょうか。
4位:トヨタ「GR86」
2021年4月に登場した現行型GR86が値崩れしにくい国産車第4位です。
中でも最上級グレードのRZ 6速MT車が86.72%という高い残価率を記録しました。先代で採用した超低重心FRパッケージを継承しつつ、どんな速度域でも「走る楽しさ」を感じられるハンドリング性能を目指して、ねじり剛性を従来型比約50%向上させるなどボディ剛性を向上させることにより、操縦安定性を高めています。
搭載するエンジンは、従来型の2L水平対向4気筒から、新型は2.4Lへと排気量をアップ。最高出力は235ps(+28ps)、最大トルク250Nm(+38Nm)とパワーも向上。組み合わされるトランスミッションは6速MTと6速ATを用意。最新モデルには、運転支援システムのアイサイトがどちらのミッションにも設定されています。
5位:日産「フェレディZ」(旧型)
値崩れしにくい国産車の第5位は、2008年12月に登場したZ34型と呼ばれる日産「フェアレディZ」です。
先代モデルより100mmホイールベースを短くし、ねじり剛性をはじめとしたボディ剛性を向上させ、走行性能や旋回性能を向上。搭載するエンジンは3.7L V型6気筒自然吸気で、7速ATを中心にグレードによって6速MTも組み合わされている2シータースポーツカーです。
残価率86.33%を記録したのは、バージョンSTの6速MT車ですが、カスタマイズモデルのNISMOならば、さらに高い残価率が期待できます。そしてビッグマイナーチェンジモデルのRZ34と呼ばれる現行型ならば、残価率100%超えは確実です。
6位:トヨタアルファード(旧型)
2015年1月に登場した3代目となる旧型アルファードのハイブリッドSタイプゴールドが残価率86.22%で値崩れしにくい国産車の第6位となりました。
旧型アルファードは、2.5Lエンジンのハイブリッドのほか2.5L直4、3L V6というパワートレインを用意。中でも2.5 Lエンジンがダントツの人気で最も人気の高い2.5S Cパッケージは、海外からの引き合いの多さもあって残価率90%を超える人気を誇ります。
2023年6月にアルファード/ヴェルファイアはフルモデルチェンジを行っていますが、2021年式がこれだけ高い残価率を示しているのは、旧型となっても人気は健在ということです。
7位:ホンダ「フリード」(旧型)
2016年9月に登場した旧型のホンダフリードが残価率86.18%で値崩れしにくい国産車の第7位となりました。
日本の道路事情にマッチした5ナンバーサイズボディに、3列シートをレイアウトしたコンパクトミニバンのフリード。搭載するパワートレインは1.5L直4ガソリンエンジン+CVTと1.5Lエンジン・1モーター+7速DCTというハイブリッドシステムの2種類を用意。駆動方式はガソリン車に加えて、ハイブリッド車にも4WD車を設定していることでライバル車に差を付けています。
フリードはフルモデルチェンジ直後ですが高い残価率をキープしています。バランスの良さに加えて衝突被害軽減ブレーキシステムや高速道路での追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールなどの機能がパッケージ化したホンダの先進安全運転支援システムである「ホンダセンシング」を採用しているのも魅力です。
8位:トヨタ「RAV4 PHV」
値崩れしにくい国産車第8位となったのが、トヨタ「RAV4 PHV」です。
ハイブリッド車の第3位に次ぐランクインで、RAV4強し!と言った印象です。2020年6月に販売開始したRAV4 PHVは、2.5Lエンジンのプラグインハイブリッドシステムを搭載し、EV走行距離95kmを実現。満タンで1,000km以上走行可能なモデルです。
一般的にHVよりPHVのほうが新車時価格は高いため、残価率は下がりやすいのですが、RAV4 PHVはHVと差のない残価率85.97%となっています。
9位:三菱「デリカD:5」
2007年に登場し、2018年に大幅改良を行った個性派ミニバンの三菱「デリカD:5」が残価率85.18%で値崩れしにくい国産車第9位となりました。
デリカD:5は様々な道路状況において、乗員や荷物を目的地まで確実に運べる車という歴代デリカの商品コンセプトを継承し、低速から力強いパワーを発生するクリーンディーゼルエンジンや三菱が培ってきた4WD技術、特徴的なフォルムなどによる圧倒的な走破性能に加えて、最新の予防安全技術を採用したオールラウンドミニバンです。
国産ミニバンでは唯一、高い経済性を実現しているディーゼルターボエンジンを搭載しているのも人気の秘訣と言えるでしょう。
10位:トヨタ「ライズ」
2019年に登場し、2021年に一部改良を行い、「e-SMART(イースマート)ハイブリッド」を搭載したトヨタ「ライズ」が値崩れしにくい国産車の第10位です。
ライズはDNGAによるパッケージング技術を活かして、取り回しの良いコンパクトな5ナンバーサイズながら、大人5人が乗れる広い室内空間と5人乗車時369L+80Lの大容量アンダーラゲッジ(2WD車)という荷室空間を実現しています。
84.93%という高い残価率を記録したのは、2021年の一部改良で廃止された1Lターボエンジンの2WD車です。ライズは税金も安い1Lターボエンジンが人気で、現在は4WDしかえらぶことができないため、2WD車が人気となっています。
11位:ホンダ「S660」(生産終了)
2015年に登場し、2022年3月に生産終了した軽オープンカーのホンダ「S660」が値崩れしにくい国産車の第11位です。
S660は「見て楽しい、乗って楽しい、あらゆる場面で、いつでもワクワクする」そんな心が昂ぶる本格スポーツカーを追求し、「ハートビートスポーツ」をキーワードに日常を非日常に変える「走る喜び」を味わえる車を目指して開発されました。スポーツカーの醍醐味である曲がる楽しさを最大限に体感できるよう、高い旋回性能にこだわり、MR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)のレイアウトを採用。さらに低重心と理想的といわれる前後重量配分である45:55を実現しています。
残価率84.59%を記録したのは、2018年5月に追加された専用チューンが施されたS660モデューロXです。すでに生産終了となり後継も期待薄なモデルなので、今後値崩れすることはなかなかないでしょう。
12位:ホンダ「N-ONE」
値崩れしにくい国産車の第12位は2020年11月に登場したホンダ「N-ONE」です。
なかでもスポーティなRS 6MT車が残価率84.15%となっています。見た目は旧型とあまり変わりませんが、ボディの高剛性化と同時に防音材を効果的に配置し、さらにエンジンやタイヤから伝わる振動・騒音を低減するパーツを使用するなど優れた静粛性を実現しています。
スーパーハイトワゴンが主流の軽自動車の中で、走りにこだわった貴重なモデルです。
13位:スズキ「スペーシア」(旧型)
2017年12月に登場した2代目の旧型スズキ「スペーシア」が値崩れしにくい国産車の第13位です。旧型スペーシアはプラットフォームと呼ばれる車の基礎から一新。高張力鋼板といった素材の使用を拡大し、ボディ剛性の向上と軽量化を両立し、走行性能と静粛性を向上させています。
2023年にフルモデルチェンジを行っていますが、2021年式の旧型スペーシアカスタムが残価率83.52%を記録。軽自動車の主力であるスーパーハイトワゴンの中で唯一のランクインとなっています。
14位:スズキ「ハスラー」
2020年1月に登場した軽クロスオーバーモデルのスズキ「ハスラー」が値崩れしにくい国産車の第14位です。
軽量と高剛性を両立させた新世代プラットフォーム「ハーテクト」を採用。さらに「環状骨格構造」を形成することで、ボディ剛性を向上。そしてボディのスポット溶接部にスズキ車として「構造用接着剤」を初採用し、ボディ剛性の向上だけでなく、優れた操縦安定性、乗り心地を実現しています。
残価率83.21%を記録したのは、Xターボ2WDで、装備が充実したグレードほど残価率は高くなっています。
15位:トヨタ「ノア」(旧型)
値崩れしにくい国産車の第15位は2014年1月に登場したトヨタ「ノア」の旧モデル。
このミドルサイズミニバンは2022年にこのノア/ヴォクシーをはじめ、ホンダ「ステップワゴン」、日産「セレナ」と立て続けにフルモデルチェンジを行いました。それでも旧型ノアのガソリン車は82.41%という高い残価率は驚異的。
同じノアのハイブリッド車やヴォクシーを抑えて、最も高くなっているのは、お子さんにお金のかかる子育て世代に支持されている車と言うことだと言えるでしょう。
次回は「値崩れしにくい輸入車」をご紹介します。
※この記事は2024年6月時点の情報で制作しています