生活習慣病予防のプロが、今注目のMCT・アマニ油・えごま油の 健康効果を詳しく解説

「今年の冬こそ知りたい!ヘルシーオイルの可能性」とは?

脂質(油脂)の健康価値や日常生活でのとり入れ方を発信しているヘルシーオイル・プラス・コンソーシアムでは、冬の健康課題に最適である「MCT」と「オメガ3」二つの油の魅力を紹介する勉強会が開催されました。

勉強会当日は虎ノ門中村クリニック院長中村康宏先生、工藤内科院長工藤孝文先生が、生活習慣病予防のプロとして登壇、さらにヘルシーオイルの研究も盛んに行う日清オイリオグループ株式会社 基礎研究所第1課 渡邉愼二氏もゲストとして登壇しました。中村先生は身体活動の強さを示す指標「METs(メッツ)」を用いて、外で運動がしづらい冬でも、日常生活には脂肪燃焼チャンスがたくさんあること、またMCTがこの日常生活にある脂肪燃焼チャンスの効率をあげる頼もしい相棒である理由を紹介しました。工藤先生は、冷え症や肌の乾燥から、心筋梗塞といった命に関わる健康課題にまで、なぜオメガ3が有効なのかを徹底解説しました。日清オイリオグループの渡邉愼二氏は、まだあまり知られていないMCT研究の歴史や、近年の生活者のエネルギー消費量をもとに、何故MCTに注目しているのか、その理由も紹介されました。

それでは各パートを少し詳しく見ていきましょう!

身体活動の強さを示す指標「METs(メッツ)」から見たMCTの新たな価値とは

MCTとは何か?

MCTとは中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglyceride)のことで、ココナッツなどヤシ科植物の種実、牛乳や母乳に含まれる成分です。このMCTの新しいトピックスとして、MCTを継続的にとると日常生活における脂肪の燃焼効率を高めてくれることが分かっています。

日常生活には脂肪燃焼チャンスがたくさん!

15分のランニングよりも30分の徒歩通勤の方が消費エネルギーが多いことを知っていましたか…?実は、普段の何気ない生活の中にも脂肪燃焼チャンスはあふれているそうです。日常における脂肪燃焼チャンスは「身体活動の強度を示す指標」である「METs」を用いるとより数値化されてわかりやすくなります。例えば、日常における消費エネルギーをMETs式(「METs×時間(h)×体重(kg)=消費エネルギー(kcal)」)で算出すると、40代女性のショップ店員の場合、1日の日常活動で1,835.4kcalと実にごはん茶碗約8杯分のエネルギーを使っていることがわかります。

ー 勉強会資料より

からだにあるエネルギーを生み出すための二つの燃焼回路があるのだそうです。
一つ目は糖質からエネルギーを生みだす「糖燃焼回路」。二つ目は脂質(脂肪)からエネルギーを生み出す「脂肪燃焼回路」です。糖燃焼回路の方が素早くエネルギーを生み出すことができるため、通常の活動では脂肪燃焼回路を使うことが少ないといわれています。ここで重宝するのが「MCT」というわけです。

MCTは日常生活における脂肪燃焼効果を高めてくれる優れもの!

MCTを摂ると「ケトン体」が多く産生され、普段は使うことが少ない脂肪燃焼回路を動かすことができるようになります。日常生活での脂肪燃焼チャンスをさらに効率化させることができるのです。健常な人を対象にした検証によるとMCTの継続摂取により、12週間でLCTでは3.3kgに対して、4.4kgもの体脂肪が減少したという報告(※2)もあるそうで、BMI高めの健常な人を対象とした2週間の継続摂取で、日常活動レベルの運動強度(約2.2METs)でも脂肪燃焼効果が高まったという最新研究(※3)も紹介されました。

ー 勉強会資料より

今年の冬は昨年よりも寒いと予想されているそうです。実は、気温が低いほど体温維持のために基礎代謝が上がりやすいため、寒い冬は脂肪燃焼ボーナスタイムなのだそう。年末年始の暴飲暴食や正月太りを感じることが多いこれからの季節、その対策としてMCTを摂る生活を心がけてみるとよいのかもしれませんね。

(※2) M.Kasai,et al. Asia Pac J Clin.Nutr.12(2),151-160(2003)
(※3) Tsujino S, et al., Nutrients, 2022; 14: 536.

ー 勉強会資料より

MCTのとり入れ方は?

では効率的にMCTを摂るにはどうしたらよいのでしょうか?
MCTオイルを摂る場合、まずは1日小さじ半分(2g)から空腹時は避けて摂るとよいそうです。MCTオイルが加熱には不向きなので、出来上がった料理にかけるのがよいとのこと。最近ではMCT配合商品が各食品メーカーから発売されているので、ぜひ自分に合ったとり入れ方を試してみたいですね。

ー 勉強会資料より

<登壇者>
虎ノ門中村クリニック院長 中村康宏先生
関西医科大学卒業。内科医・消化器内科医として勤務後、米国医師免許試験を突破し、最先端予防医学を学ぶため渡米。留学中には、パーソナルトレーナー、栄養士の資格を取得。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢医学会認定施設「虎ノ門中村クリニック」を開業、院長を務める。

MCTの歴史とその効果について

「MCT」の歴史とは?

続いて、日清オイリオグループ株式会社の渡邉愼二氏より、「MCT」の歴史について講演がありました。

MCTは実は戦後間もない1950年代から「消化吸収が早く、エネルギー基質としてすぐに利用される特性」を活かすため、主に医療用途として研究が進められてきたのだそうです。そこから1990年代中盤までは、MCTは医薬品原料として登録されていました。現在も医療用途で使用されていますが、その後、食品原料として腎臓病患者用食品、体脂肪軽減を目的とした特定保健用食品、近年では機能性表示食品として数多くの食品に利用されています。肥満予防・生活習慣病対応だけでなく、超高齢化社会に対応した高齢者向け食品への応用開発も2000年以降進んでいるのだそうです。

日本人はもっと動くべき!?

現在の日本人の平均エネルギー摂取量は1,900kcalを下回り、ピークであった1970年代から300kcal以上も減少しているのだそう。この数字を見ると自然と痩せていく…!?と思われますが、実は逆に、特に男性は各年代を問わず肥満傾向が見られ、エネルギー摂取が少ないのに肥満者が増加するというおかしな現象が起きているのだそうです。原因として、考えられているのが「身体活動の低下」です。運動不足だけでなく、座位時間の増加、移動に車を使用する、家事の省力化などにより、日常の活動エネルギー消費量が減少していることが示されています(※4)。

ー 勉強会資料より

肥満解消のカギは「NEAT」にあり!

日常生活で消費するエネルギーの内、「運動(エクササイズ)」以外のエネルギーの消費を「非運動性熱産生(NEAT)」といいます。これは海外での調査結果ですが、肥満者と標準体型の人では、このNEATの差が顕著で、1日あたり350kcalも異なることがわかっています(※5)。これは年間にして、体脂肪換算で約18kgに相当し、肥満者と標準体型の人では、座位時間が2時間違うため、このような結果が生じているのだそう。先ほどの日本人のエネルギー摂取量の減少分に相当する量です。肥満の方に「食事制限」や「運動指導」をしても、中々実践できるものではありませんが、この「NEAT」を増やして、肥満解消を図るほうが、受け入れやすく結果も出やすいと考えられているのだそうです(※6)。

ー 勉強会資料より

(※4) Sakamoto M., Int. J. Vitam. Nutr. Res. 2006: 76(4): 253-256.
(※5) Levine JA, et al. Science. 2005;307:584-586.
(※6) Chung N, et al., J Exerc Nutr Biochem, 2018; 22: 023-030.

<登壇者>
日清オイリオグループ株式会社 基礎研究所第1課 渡邉愼二氏
1989年東京理科大学大学修士号取得、2005年お茶の水女子大学博士号取得、客員研究員。1989年日清オイリオグループ株式会社入社。油糧種子のタンパク質、脂質の機能性研究、医療用食品の研究開発に従事し、現在は、MCTの様々な栄養生理機能の研究に従事。

今年の冬こそオメガ3!からだの「めぐり」を整えて冬の健康課題を解決

オメガ3はからだの「めぐり」を整える!

最後に「オメガ3」について工藤内科院長 工藤孝文先生より説明がありました。
最近よく耳にする「オメガ3」。そもそも「オメガ3」とはオメガ3系脂肪酸のことで、体内では合成されないことから「必須脂肪酸」といわれ、食品からの摂取が不可欠な栄養素なんだそうです。オメガ3には、植物由来の「α-リノレン酸」、青魚に多く含まれる「EPA」「DHA」の主に3種類があります。この「オメガ3」がからだにとって必要となる大きな理由が、からだの「めぐり」を整えてくれることです。

ー 勉強会資料より

からだの「めぐり」には、細胞を形づくる細胞膜の"柔軟性"が大きく関わるのだそう。細胞膜は脂質を材料に作られ、オメガ3を材料に作られた細胞膜には柔軟性が生まれ、その柔軟性があれば細胞内外における水分や栄養、老廃物の出し入れがスムーズにできます。血液中を流れる赤血球も細胞で作られているので、オメガ3によって赤血球にも柔軟性が生まれ、ごく細い毛細血管も形を変えて透過することができ、からだの隅々まで血液が行き渡るようになるとのこと。そう、オメガ3によって細胞膜の柔軟性ができ、からだの「めぐり」が良くなるのです。

ー 勉強会資料より

今年の冬こそ「オメガ3」の接種を!

今年の夏は暑かったですよね…。平均気温が過去最高となり、猛暑による脱水や屋内外の気温差の影響を受け、さらにこの秋も暑い日が続いたことで、今年は長期間、血流が悪い状態が続いていることが考えられます。その血流が悪いと、冷え性やむくみ、肌荒れなど、様々な不調がからだに起こります。中でも普段からお肉や炭水化物中心の食事で、血管が詰まり血流がもともと悪いノロノロ血流の人は要注意だそう…。冬は寒さで血管が収縮しやすいので、心筋梗塞など命に関わる病気の発症リスクが高いのは周知のとおりですが、今年は特に長期間血流が悪かったせいでダメージが蓄積していると考えられます。オメガ3は血管の炎症を抑え、ノロノロ血流の原因になる悪玉コレステロールを減少させる働きもあるので、今年の冬こそは「オメガ3」を摂って、からだの「めぐり」を整えることが重要なんだそうです。

冬の健康課題にもやっぱり「オメガ3」

そして冷え性の主な原因となるのは「血流不全」です。オメガ3によって体の隅々まで血液が行き渡るようになれば、冷え性の改善も期待できますね。オメガ3の継続摂取により肌の状態が改善したという報告(※7)もあり、乾燥の気になる冬に、特に女性にとっては嬉しい効果も。他にも、花粉症に関して、オメガ3によって花粉症の症状が緩和される可能性があることも示唆(※8)されており、この冬から来年の花粉症に備える…というのもぜひおすすめしたい、と講演されていました。

ー 勉強会資料より

ー 勉強会資料より

(※7) K. Neukam, et al., Skin Pharmacol Physiol (2011) 24 (2): 67-74. https://doi.org/10.1159/000321442
(※8) Hirakata T, et al., FASEB journal: Off Publ Fed Am Societies Exp Biol (2019) 33(3):3392-403. https://doi.org/10.1096/fj.201801805R

「オメガ3」の摂り入れ方

では「オメガ3」を実際どのようにして摂り入れればよいのでしょうか?
EPAやDHAのサプリメントから摂ることでも問題ありませんが、これらはすぐに分解され、排出されてしまうのだそう。一方、「アマニ油」や「えごま油」に含まれるα-リノレン酸であれば肝臓に貯蔵することができ、必要に応じてEPA・DHAに分解することができます。また、厚労省が摂取目標とする1日2g(※9)のオメガ3をとるには1日にアジを3匹食べる必要がありますが、この油からであれば1日小さじ1杯を、好きな料理にかけるだけで良いのだそう。これであれば無理なく摂取できますね。熱に弱く酸化しやすいため、炒め物等には使わず、完成した料理に掛けるのがポイントなんだそう。たんぱく質と一緒にとると、胆汁が分泌されて効率よくオメガ3を吸収することができるので、こちらも意識したいですね。

ー 勉強会資料より

(※9) 厚労省 日本人の食事摂取基準2020年版

<登壇者>
工藤内科院長 工藤孝文先生
福岡大学医学部卒業後アイルランド、オーストラリアへ留学、2025年4月から、東京にて、工藤孝文糖尿病クリニックを開院。NHK「チコちゃんに叱られる!」日本テレビ「世界一受けたい授業」など、テレビ出演多数。著書・監修書は100冊以上におよび、朝日新聞出版社「人体の超基本」はシリーズ累計100万部突破のベストセラーとなっている。

まとめ

いかがですか?
今回の講演を通じて「MCT」や「オメガ3」について深く知ることができました。いずれも最近注目されており、しかも無理なく摂り入れることができる優れモノ。スーパーやコンビニなどでもこれらが入った食品なども販売されていますので、ぜひ皆さんも「MCT」や「オメガ3」に注目して、摂り入れるようにしてみてはいかがでしょうか?

「ヘルシーオイル・プラス・コンソーシアム」
脂質は体内でさまざまな働きを担う必須の栄養素です。からだを動かす効率的なエネルギー源であるだけでなく、健康でいるために、多彩な役割を果たしています。近年特に注目されているのが、脂肪の燃焼を高める「MCT」と、からだ本来の機能を整える「オメガ3(アマニ油・えごま油)」です。「ヘルシーオイル・プラス・コンソーシアム」は、「MCT分科会」と「オメガ3分科会」を持つ機関として、専門家の知見や最新研究などを交えながら、脂質栄養全般、MCT、オメガ3の健康価値を広く発信していきます。