沖縄観光の新たなスタイルとして注目を集める「エシカルトラベルオキナワ」。自然巡りや伝統工芸を満喫する地域と深く関わる新たな旅の魅力をご紹介します。《後編》

“地域と過ごす旅”がもたらすもの

2日目:自然と発酵文化を体験

循環型農業で育まれる、体に優しい食の恵み
EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾートの自社農場『サンシャインファーム』

今回宿泊した沖縄の自然と発酵の力を活かし、持続可能な食の未来を実践する「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」。ホテルから車で10分の豊かな自然に囲まれた場所にある自社農場「サンシャインファーム」では、ホテル内ででた食品残渣を活用した循環型農業を実践し、農薬、化学肥料、除草剤などを一切使用せず、独自の微生物技術(EM技術)を活用して野菜を栽培しています。また、養鶏場では、抗生物質や消毒を一切せず、エサは自家栽培野菜と発酵させた飼料を配合。平飼いで元気に育った鶏たちが、高品質の健康卵「まなたまご」を生んでくれます。

ホテルのレストランやカフェから出る食品残渣を発酵させ、100%肥料として活用。これにより、環境負荷を抑えながら、栄養価の高い土壌を作り出しています。そこで育った野菜や、自然な環境でのびのびと育った鶏が産む卵は、ホテル内のレストラン・カフェで提供され、訪れる人々の健康を支えています。

有機農産物生産販売

約3000坪の農地は全て有機JAS認証を取得。EMで発酵させた自社の鶏糞に加え、EM整流炭や海水で発酵させたミネラルたっぷりのEM活性液を使用し、土づくりを行っています。年間30品目程の野菜を生産し、「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」の他に近隣のスーパーなどへ出荷をしています。主に、トマト、インゲン、ズッキーニ、ゴーヤ、オクラ、ヘチマなどを栽培しています。ホテルのサラダコーナーに使用するキュウリ、ケール、リーフレタスなどは周年で栽培できる体制を整え、新鮮で健康的な野菜が食べられる、と人気です。

提供元:EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

無投薬平飼い卵「まなたまご」生産販売

鶏舎では約1300羽の鶏を平飼いで飼育しており、抗生物質や消毒薬を使用していません。ホテルから出る食品残渣を循環させるために、EMで発酵させ、飼料として与えています。発酵飼料を食べることによって鶏の腸内環境が改善し、鶏舎で伸び伸びと過ごすことで健康に育っています。生産された高品質の卵は「まなたまご」というブランドでホテルのレストラン並びに沖縄県内のスーパーやケーキ屋さんなどで使用されています。

鶏の腸内環境が整うことで鶏糞の悪臭が抑えられ、それに湧くハエなども減少、鶏舎で働く人達のストレスも減少し、いいことづくめ。

地元のおばあが作ったというバナナの皮で制作したカゴや帽子。こういった工芸品もおばあから直々に教えてもらえる教室も開いているのだそう。

毎週土曜日8:00~12:00「農場朝市」開催中!自分で収穫した野菜や今朝採れ野菜、産みたて卵が購入できます。農場見学も受付中。

⇒ 農業生産法人株式会社サンシャインファーム | EM GROUP JAPAN

100年後も沖縄の伝統工芸「やちむん」を未来へ受け継ぐ
『陶眞窯(とうしんがま)』

沖縄県読谷村にある「陶眞窯(とうしんがま)」は、創業約50年の歴史を誇るやちむん(焼き物)の工房。神奈川県出身の陶芸家・相馬正和さんが1975年に設立し、その精神は次世代へと受け継がれています。現在は二代目の相馬大作さんを中心に、やちむんの伝統を守りながらも、新しい挑戦を続けています。

二代目の相馬大作さん

近くの小学校の授業にプログラムをいれてもらって陶芸の楽しさを教えています。

陶眞窯のやちむんは、沖縄の伝統的な壺屋焼の技法を受け継ぎながら、独自のデザインとチャレンジ精神で進化を遂げています。

特徴的なデザイン
唐草、魚文、デイゴ、ブーゲンビレア、ドットなど、伸びやかな筆使いが魅力的。

土づくりからこだわる製作工程
伝統技法に加え、現代のニーズに合わせた新たな技術も積極的に取り入れています。

「使う人」を考えた器づくり
料理を美しく引き立てるデザインと実用性を兼ね備えた器は、日常の食卓にもぴったり。

持続可能なものづくりを目指して~二代目・相馬大作さんの挑戦~

父・相馬正和さんの「常に挑戦する姿勢」を受け継ぎながらも、大作さんは新たな視点で工房の未来を見据えています。その中で見えてきた課題が、「作り手の生活の質の向上」。やちむんを作る職人が安心して働き続けられる環境を整えるため、大作さんは法人化を決意し「株式会社SOMA」を設立しました。生産ラインの効率化を図り、伝統を守りながらも安定した経営を実現。家族経営の温かみを残しつつ、次世代が安心してやちむんを作り続けられる仕組みを整えたことで、陶眞窯は「100年後もものづくりができる場所」へと進化を遂げています。

現在、陶眞窯の運営は長男の大作さんが担当し、絵付けは長女の千恵子さん、カフェスペースは次男の正尚さんがそれぞれの役割を担っています。先代の精神を受け継ぎながら、新たな風を吹き込む次世代の挑戦によって、陶眞窯はこれからも進化を続けます。

やちむんの絵付けを体験

沖縄の伝統を守りながらも、時代の変化に柔軟に対応する陶眞窯のものづくり。その魅力を、体感できるプログラムがいくつかあります。うつわ作り、シーサーづくりや電動ろくろ、今回は、絵付け陶芸体験に挑戦してみました。

所要時間 約10~15分
料金 2名様以上の場合:お一人様 3,500円 1名様の場合:5,500

見本と同じような並びでぽんぽんと絵付けしていきます。

渋い青(青呉須)、鮮やかな青(コバルト青)、茶(飴)、深い緑(織部)

壷屋焼の伝統釉薬で、自分だけのデザインで絵付け体験ができます。素焼きの皿にポンポンと点を打ってデザインしていくので、とっても簡単。小さなお子様にもおすすめの体験です。渋い青(青呉須)、鮮やかな青(コバルト青)、茶(飴)、深い緑(織部)の4色から選んで、点打ち用の道具を使い、オリジナルの模様をお皿に描き出します。まずは、練習用のお皿で釉薬の濃さや道具の使い方を試してから本番。5寸皿(約15cm)と3寸皿(約9cm)の2枚のお皿に、絵付けできます。絵付けが初めての方でも安心して楽しめるよう最初に釉薬の使い方の説明があり、20分ほどで体験を終えることができます。

約2ヶ月ほどで完成。出来上がりが楽しみ。

イタリア仕込みの窯焼きピザを、やちむんの器で楽しむ
陶眞窯の魅力が詰まった『ギャラリーカフェ群青』

陶眞窯に併設されている「ギャラリーカフェ群青(ぐんじょう)」は、相馬正和さんの次男・正尚さんが手がけるカフェ。2016年のオープン以来、本格的な窯焼きピザが楽しめるスポットとして、多くの人々を魅了しています。

正尚さんはイタリアへ渡り、各地でピザを食べ歩きながら、本場の技術を学びました。そこで得た経験を活かし、沖縄の素材と融合させた「ここでしか味わえないピザ」を完成させたのです。

こだわりのピザ生地は、厳選した小麦を使用し、時間をかけてじっくり発酵。独特のモチモチとした食感が生まれます。

「シーサー窯」で焼き上げる特別な一枚

ギャラリーカフェ群青のシンボルともいえるのが、正和さんと正尚さんが共同で作り上げた「シーサーの顔をしたピザ窯」。実はこの窯、陶眞窯で破損した陶器のかけらを再利用して作られたもの。サステナブルな精神を大切にしながら、伝統と遊び心を取り入れた、まさに唯一無二のピザ窯です。

人気の島野菜(その日の県産野菜、モッツアレラ、パルメザン)1760円
洋梨黒糖(洋梨、マスカルポーネ、沖縄純黒糖)1660円

この特製窯で高温で一気に焼き上げることで、外はカリカリ、中はモチモチの絶妙なピザが誕生します。

旅の思い出に、やちむん×ピザの贅沢体験を

ギャラリーカフェ群青では、陶眞窯の器とともに食事を楽しむことで、やちむんの魅力をより深く感じることができます。職人の手仕事が生み出した器に盛りつけられた料理を味わいながら、沖縄の風土と文化に触れてみてはいかがでしょうか?

陶眞窯ならではの“特別な食体験”、ぜひ一度味わってみてください!

沖縄のエシカルな魅力を体感しよう

沖縄の豊かな自然、伝統文化、そして地域と共に過ごすエシカルな旅は、単なる観光ではなく「共感し、繋がる」体験そのもの。やんばるの森で息づく多様な生態系に触れ、サステナブルな宿泊施設で“発酵”をテーマにした新しいライフスタイルを体験する。そして、地元の素材を活かした食事を楽しみながら、未来へと受け継がれる伝統工芸「やちむん」の魅力に触れる。この旅を通じて感じたのは、沖縄が大切にしてきた「自然と共存する暮らし」の素晴らしさ。観光客として訪れるのではなく、地域の一員としてその文化に溶け込み、持続可能な未来に貢献する意識を持つことが、これからの旅のカタチなのかもしれません。

沖縄で出会った自然、食、文化、そして人々との繋がりが、旅の記憶として深く刻まれます。次の沖縄旅行は、ぜひ「エシカルな視点」を取り入れてみてはいかがでしょうか?