Z世代やα世代など、若年層に支持されている新感覚のテキスト通話アプリ「Jiffcy(ジフシー)」。従来のメッセージアプリとは異なる新しいコミュニケーションの“形”を提案するアプリとして注目されていて、世界150カ国以上で利用されています。iOS版に加えて、7月30日にはAndroid版もリリースされ、さらなるサービス成長が見込まれています。
7月28日に開催された「メディア向けラウンドテーブル」では、サービスの最新動向に加えて、「検索より相談」「声よりテキスト」といったZ世代・α世代のコミュニケーションスタイルのトレンドやリアルな実態について掘り下げる場となりました。
コロナ禍の“もどかしさ”から生まれた新たなコミュニケーション体験
冒頭では、株式会社穴熊 代表取締役CEOの西村 成城さんがJiffcyのサービス概要と開発背景について説明しました。
Jiffcyは電話のような「呼び出し機能」と、入力した文字が1文字ずつリアルタイムで相手に表示される「リアルタイムトーク機能(※特許取得済)」の2つの機能から成り立っています。これらを組み合わせることで、声を出さずに電話する「テキスト通話」という新しいコミュニケーション体験を提供しています。
特徴的なのは、リアルタイムトーク機能が単なる演出ではなく“相手の存在感”を高めるために設計されているという点です。リアルタイムで文字の入力が見えることで、途中で相槌を打つことができ、自然な対話が生まれやすいことから、Jiffcyにおける1回あたりのやりとりは平均10分以上も長く続く傾向があるそうです。
また、Jiffcyは通話と比較して応答率が高いため、LINEや通常の通話との使い分けが可能になっています。通話の場合、家族が家にいる時や電車・バスの移動中、騒がしいカフェや静かな場所など、電話をかけづらかったり出づらかったりするシーンが多いのに対して、Jiffcyは声を出さなくて済むため、実際の応答率が高くなるというメリットがあります。
さらにLINEのようなメッセージアプリでは、「いつでも返信してOK」という前提があるため、今この瞬間にリアルタイムで会話したいと思っても、即応性のあるやりとりが難しく、結局のところ音声通話しか選択肢がないという状況になります。
西村さんは「Jiffcyはまさに『すぐに話したいけど通話は難しい』『でもLINEだと遅すぎる』といった、チャットと通話の中間的なニーズに応えるコミュニケーション手段として機能している」と話しました。
利用シーンのボリュームゾーンは夜22時前後。、家族に会話を聞かれたくないタイミングでJiffcyを使う人が最も多くなっています。次いで、電車やバスなど声を出しづらい移動中や、カフェなどの公共の場で、主に朝や夕方の通勤・通学時間帯に使われる傾向があります。
そして、継続率が高いユーザーでは、「◯◯買ってきて」や「何時に帰ってくる?」といったちょっとした日常連絡のやりとりにも使われています。なるべく早く返事がほしいけど、わざわざ電話するほどでもない。そういった“微妙な距離感”のコミュニケーション時に、Jiffcyが非常にフィットしているのです。
こうしたなか、Jiffcyは社会的意義の高いプロダクトとしてニーズが顕在化しています。特に耳が聞こえない難聴者の方々にとって、これまでの音声通話では「離れていても対面に近いコミュニケーション」を体験することができませんでした。それが、Jiffcyを利用することで、初めて「電話のような感覚」での会話が可能になり、多くの反響が寄せられているそうです。
今後の活用シーンとして期待されているのが避難所での利用です。避難所ではプライバシーの確保が課題となる一方、緊急性の高いコミュニケーションが必要とされます。Jiffcyなら周囲に話し声を聞かれることなく、緊急時のやりとりができるため、西村さんは「自治体と連携しながら、災害時の避難所などでJiffcyが活用されるように取り組んでいきたい」と述べました。
西村さんは現在の会社を創業後、いくつかのWebサービスやアプリを開発してリリースしたものの、なかなか成果が出ずに精神的に落ち込んでいた時期があったそうです。ちょうどそのタイミングでコロナ禍が訪れ、親しい知人と目的のない会話がしたくても、音声通話の心理的ハードルの高さや、メッセージの返信が数時間後になることが、「今話したい」という気持ちに応えられない“もどかしさ”につながっていたといいます。
そこで、テキストベースでありながら電話のようなリアルタイム性を持ったコミュニケーションツールがあればと着想したのがJiffcyを開発した背景になっています。
Jiffcyの利用実態から見えてきた若年層のコミュニケーショントレンド
次いで、Jiffcyのユーザーの利用実態や声から見る若年層のコミュニケーションの傾向について西村さんが発表しました。
Jiffcyの利用実態として、「“具体的”な相手との日常連絡に使うことが多くなっている」とのこと。
「SNS上では繋がっていても、顔も知らないような人とはあまり使われず、家族や恋人、親しい友人など、かなり距離の近い相手に限定してJiffcyが使われる傾向があります。人間関係をピラミッドで表すとすれば、その頂点にいる数人とのやりとりに特化したアプリになっている感じです」(西村さん)
また、音声通話の代わりとして使われるケースが多く、そこから徐々にメッセージの代替手段としても使われ始めています。その背景にあるのは、メッセージアプリの「未読スルー」や「既読無視」などが原因によるストレスの深刻化です。
特にZ世代やα世代では、LINEなどのメッセージが溜まりがちで、すぐに返事をしないことで罪悪感を感じやすいことや、即レスするのが気まずいという感覚があります。そうしたなかで、「メッセージの返信における小さなストレスを解消する手段として、Jiffcyが選ばれている」と西村さんは話しました。
また、非常に興味深いのは「Jiffcyは喧嘩になりにくい」という点で、同じテキストコミュニケーションでも、Jiffcyの場合は「時間」の要素が加わることが大きいとのこと。LINEなどでは、文末の「。」やびっくりマーク、絵文字の有無といった視覚的なニュアンスで相手にどう伝わるかを気にしてやりとりすることが多い一方で、Jiffcyでは文字を打ち込むスピードや間合いそのものが感情を伝えるヒントになるのが、対面に近いコミュニケーション体験を生み出し、誤解や衝突の起きづらさにつながっているといいます。
近年では若者の“電話離れ”も叫ばれていますが、その一因として相手の時間を奪ってしまうことへの心理的負担が影響しています。リモートコミュニケーションに慣れているZ世代・α世代にとっては、「声でコミュニケーションを強いること」が気を遣う対象になっているのです。
Z世代やアルファ世代は、SNSやDMなどのテキストコミュニケーションが当たり前になっているため、言葉にされていない気持ちや微細な感情のニュアンスを読み取るスキルが自然と身についています。文章の“行間”を察することができるからこそ、テキストの裏にある意図や感情が伝わるようなコミュニケーション文化が根付いており、小さな誤解や感情の衝突を避けたいという空気感を醸成しているわけです。
そんななか、西村さんは「現代のコミュニケーションには3つの重要な潮流がある」と見立てを示しました。
①時間を尊重しつつ、リアルタイムな双方向性を求める傾向
単なる情報伝達ではなく、お互いの存在を感じられるような“ライブ感”のある対話が求められている
②通話は敬遠されても、同時性のある深い繋がりへの欲求
多くの人は通話形式そのものを嫌っているのではなく、もっと自然で負担の少ない形で"今この瞬間"を共有したいと考えている
③配慮を前提としたバランスの取れたコミュニケーションの普及
自分も無理せず、相手にも負担をかけないやり取りが重視されるようになってきている
Jiffcyはこうした仮説をもとに、「時間を大切にしながらも、自然で深いつながりを実現する」というバランスの取れた設計を心がけながら、現代のコミュニケーション課題を解決するプロダクト開発を進めているそうです。
図が示すように、Jiffcyは音声通話が必要なシーンでも、相手に配慮しながら使える絶妙なバランスのコミュニケーション手段として、今の社会や世代の価値観にマッチしていると受け止められているのではないでしょうか。
普段の連絡手段はどう使い分けている?若年層のリアルな声
ここからは、ユーザーを交えたトークセッションが行われました。
最初のトピックは「連絡⼿段の使い分けどうしてる?」。
Jiffcyがリリースされた頃から使っている専門学校2年生の石黒さんは、「普段の連絡手段は主にLINEを使っていて、普段あまり関わりのないクラスメイトや、急ぎでちょっとした連絡を取りたい時は、InstagramのDMでやりとりすることが多い。Jiffcyは恋人との連絡だけに使っていて、主に電車やバスに乗っている時や気軽に会話したい時にJiffcyでコミュニケーションをとっている」と語りました。
大学の友達がきっかけでJiffcyを使っている大学3年生の鵜飼さんは、「私も普段はLINEを使うことが多いが、すぐ予定を決めたい時はJiffcyを使っている。InstagramのDMだとメッセージが埋もれてしまうことがあるのと、関係性がそこまで高くない友達とやりとりする際にInstagramのDMで連絡している」とのこと。
そのほかのユーザーからも、親しい知人や関係性の深い数人とのやりとりでJiffcyを使う場面が多く、「本当に仲良くて、なんでも理解してくれる人」とのコミュニケーション時にマッチしているアプリという実態が見えてきました。
2つ目のトピックは「⾃分にとって“ちょうどいい距離感”の連絡とは?」です。
高校3年生の高橋さんは「自分は返信が遅いタイプで、あまりスマホを頻繁に見ないため、相手から連絡が来たときに『返信が遅くて困らせていないか』とと心配になることがある。それがJiffcyだと不安がすぐに解消される」と述べました。
また、LINEだと「メッセージが急ぎなのかどうか」も分かりにくいですが、Jiffcyで連絡が来ると「今すぐ伝えたいことがある」と分かるので、すぐに対応できるのがメリットに感じているそうです。
中学生の頃からJiffcyを使っている高校2年生の田中さんは、「私は親密なやり取りを大事にしたいタイプで、普段からハイテンションなメッセージを送っているが、そういう自分の気持ちをそのまま相手に伝えられるところがJiffcyの便利なところ」だと語りました。
音声通話だと、自分の気持ちをうまく言葉にできないそうですが、「テキストだと変換機能でちょうどいい表現が出てくるので、自分の気持ちをちゃんと伝えるにちょうど良い」とJiffcyの使いやすい点を共有していました。
3つ目のトピックでは「Jiffcyを使っていて良かったと思う時、テキストで伝わらなかったと思う時」。
鵜飼さんはJiffcyを使っていて良かった点が2つあるとコメントしました。
「まずひとつは、リアルタイムで友達とやり取りできるので、まるで隣に一緒にいるような感覚になれるところ。もうひとつは、相手の状況を気にせずにすぐ連絡できる点です。電話だと、相手が出なかった時にちょっと気まずかったり、罪悪感を持ってしまったりするんですが、Jiffcyだとそれがなくて気軽に使えるのが便利だと感じています。
また、テキストだと相手の表情までは分かりづらく、少し伝わりにくいと感じる部分もありますが、Jiffcyはリアルタイムで文字が表示されて、まるで会話してるような感覚になれるため、ストレスになるほどではないですね」(鵜飼さん)
大学生の髙橋さんも次のように意見を発表しました。
「良いと感じた点は、個人的にLINEを使っていると『送信取り消し』がよくあって、それを見ると『何を送って消したの?』という気持ちになってイライラしてしまうことがあるんです。でもJiffcyにはそういう機能がなくて、そういうストレスを抱えなくていいのがすごく良いと感じました。
その一方で、伝わりづらいと思うこともあって、それは音声通話と比べた時に感じます。声じゃないと伝えきれない感情はどうしてもあると思っていて、そういう細かな気持ちがテキストだけではうまく伝わらないこともあると感じています」(髙橋さん)
最後は「Jiffcyで告⽩。あり?なし?」というトピックで、最近リリースされたグループ機能を使ってやりとりが進められました。
SNSが当たり前になり、価値観の多様化や情報の複雑化が進む時代のなか、若年層が使うJiffcyの利用実態から見えてくる「次世代のコミュニケーションのあり方」を考える良い機会となりました。