毎年世界経済フォーラムから発表される男女平等の実現度合いを数値にした「ジェンダーギャップ指数」。日本は2023年に世界146カ国中125位で過去最低を記録し、2024年は118位と若干順位を上げたもののG7では最下位のまま、今年6月に発表された最新のランキングでも、昨年と変わらず118位と、依然としてG7最下位に位置しています。
その実態は、女性の労働力参加率が54.8%から55.6%に増加したこと、上級職、管理職、立法者のカテゴリーにおける女性の比率が14.6%から16.1%に高まったこと、推定所得における平等度の向上と、経済参加と機会の分野では若干改善はされているものの、引き続き企業内での女性の評価・昇進機会が限られたままとなっています。
日本の女性が活躍しづらいのはなぜ?
令和の日本で、なかなかジェンダーギャップがうまらないのはなぜなのでしょうか。
近年日本では、育児・介護休業法や女性活躍推進法の改正をはじめ、男性の育休取得を推進する企業の増加、育児休業等給付、育児介護休業法改正など、子育て支援や女性活躍推進、男女格差の是正に向けた施策が進んでいます。
しかし依然として「子育ては女性の仕事」という固定観念が根強く残り、出産や育児に伴う負担が女性に偏りがちであること、結婚・妊娠・出産・育児などライフイベントがキャリア継続に大きな影響を与えています。
女性が活躍できる企業づくりをするためには、柔軟な働き方とライフステージに配慮した人事制度の整備が必要です。特に、出産や育児に伴うキャリアの中断を最小限に抑えるためには、企業文化として男女問わず全ての社員がライフステージに配慮され、成長できる環境を作ることが重要です。
キャリア継続を阻む「ライフイベントの壁」
※折れ線グラフが離職者総数、棒グラフが離職者内訳を表している【出典】 男女共同参画白書 令和6年版
出産・育児・介護といったライフイベントを理由に、女性が第一線から離れるケースは少なくありません。
男女共同参画白書の育児よる離職者を見ると、「出産・育児のため」に離職した人は、女性14.1万人、男性0.7万人となっており、過去10年と比較すると減少傾向にはあるものの、依然として女性を中心に離職の原因となっていることがわかります。
同じく、「介護・看護のため」とする離職者は、女性で8万人(女性離職者のうち2.6%)、男性で2.6万人(男性離職者のうち1.1%)です。
また、離職理由別の過去1年間の離職者の推移を見てみると、「介護・看護のため」による離職者は横ばいから増加傾向にあります。
【出典】株式会社 日本能率協会総合研究所 厚生労働省委託事業
さらに、厚生労働省の「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によると、正社員だった女性のうち、妊娠判明時に仕事を辞めた理由のトップは「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立が難しかったため」で、38.1%を占めています。
離職の具体的な理由として、正社員の場合は「勤務先に短時間勤務制度や残業免除制度など、両立できる働き方の制度が整備されていなかった」(30.6%)が最も多く、非正規社員の場合は「勤務先に産前・産後休暇や育児休業の制度が整備されていなかった」(41.3%)が主要な理由となっており、出産育児が職場を離れる原因となっていることが分かります。
この現状を踏まえ、女性がライフイベントに直面しても働き続けられる環境を作るためには、企業が積極的に働き方の柔軟性を提供し、育児支援制度や両立支援の強化が必要なことがわかります。
評価・昇進の透明性の欠如も
【出典】厚生労働省「賃⾦構造基本統計調査」女性の管理職の年度別割合を表すグラフ
100人以上を雇用する企業の労働者のうち役職者に占める女性の割合を役職別に見ると、上位の役職ほど女性の割合が低い状況となっており、男性優位の構造となっています。性別によって裁量やリーダーシップ機会に偏りが生じれば、能力のある女性ほど離職やキャリアの停滞に直面することになります。
【出典】厚生労働省「令和4年賃⾦構造基本統計調査」
さらに、男女間の賃金格差は同じ正社員でも顕著となっており、形式上は制度が整っていても、実態として女性が担っている業務が評価されにくい、あるいは昇進につながりにくい制度を採用している企業も存在します。特に非正規雇用や時短勤務者が多い職場では、職務評価の形骸化が課題となっています。
女性が活躍できる組織のするための3つのポイント
女性が安心して仕事に取り組める環境のためには、正しい「人事評価制度」が必要です。
日本人事経営研究室株式会社代表取締役であり、組織成長・進化の“仕組み”づくりコンサルタントである山元氏は、そのために以下の3つのポイントが重要だといいます。
<解説>山元 浩二氏
日本人事経営研究室株式会社代表取締役
組織成長・進化の“仕組み”づくりコンサルタント。成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度®」を日本で初めて開発、独自の経営理論を確立した。導入先では評価結果への社員納得度が94.6%という、経営者と社員双方の満足度が極めて高いコンサルティングを実現。
1.会社の将来の成長と連動した自身のキャリアパスを設計できる仕組み
まず大切なのは、人事評価制度が会社の「経営計画」と連動していることです。10年後までの会社の成長計画と組織の人員構成、社員がどんな人材に成長してほしいか、そして、具体的な社員の役割まで「評価基準」として示し、これに連動した「賃金制度」を設計します。
こうした「人事評価制度」があれば、社員自身が将来のキャリアパスを設計したり、それに応じた年収がシミュレーションできます。もちろん女性社員も自身の人生イベントに応じたプランを立てることができ、長期的に働けるという安心感をもって仕事に臨むことができます。
2.賃金を決めるためではなく成長を支援する「評価制度」
評価の目的を、社員の成長支援とすることが重要です。実力差を測ったり、賃金を決めることを目的とした従来の評価制度では、すべての社員に対する成長支援が不足してしまいます。多くの社員は、機会があれば上のステージの仕事にチャレンジしたいという成長意欲を持っています。こうした人材に活躍の場を提供するのが、人事評価制度の役割です。
3.コミュニケーションの充実
社員との定期的なコミュニケーションの場を設ける仕組みを導入することが重要です。例えば、成長支援の仕組みの一つとして、チャレンジ制度を設けます。チャレンジ制度では、評価結果を基に次の成長へのチャレンジ目標を設定し、その進捗を毎月上司と共有し、面談を通じてアドバイスを受けます。こうしたコミュニケーションを行うことで、会社は社員の現状を把握でき、社員は安心して相談できる場を得ることができます。その結果、社員全体の働きがいや定着率が向上し、組織の成長に貢献します。
このように「人事評価制度」を整備し、あるべき姿で運用することが、女性社員の活躍の場を確実に広げるとともに、埋もれていた能力を引き出し、結果として組織全体の生産性まで向上させることに繋がります。
中小企業は人に頼った経営になりがちで、ほとんどの仕事が仕組み化されておらず、属人化が進み、業務の標準化や効率化が困難となる課題があります。
山元氏が代表取締役を務める日本人事経営研究室では、「ビジョン実現型人事評価制度®」を開発し、「経営計画」にもとづいて組織の成長と社員の成長を同時に実現するための人事評価制度を構築しています。世界に遅れをとっている日本のジェンダーギャップを埋めるために、「人事評価制度」の整備は不可欠ですが、これを一から構築していくのは難しい、という企業は、こうしたサービスを活用していくのもひとつの手かもしれません。