近年、NISAやiDeCoの利用拡大により、資産形成への関心は高まっています。特にボーナス時期は、多くの人にとって「まとまった資金を投資に回す良い機会」となります。しかし、その一方で、準備や検討が不十分なまま、十分な思考を重ねずに投資判断をしてしまうケースも少なくありません。

プロパティエージェント株式会社では、投資経験者550名を対象に行った調査を実施しました。

投資を始める際の情報収集について尋ねたところ、「ほとんどせず、すぐに始めた」「少しだけ調べて始めた」と回答した方が全体の65.5%に上りました。この結果から、多くの方が十分な準備を行わないまま投資を開始している実態が明らかとなり、初期段階での知識不足がリスク要因となる可能性が示唆されています。

また、初めての投資を「とりあえず」「なんとなく」で始めた人が80.7%にものぼることが浮き彫りになりました。そのうち約6割(62.0%)が「損をした」「後悔した」と回答するなど、多くの人が明確な根拠や十分な準備に基づかずに投資を始めていることがわかります。

実際に「なんとなく」で投資を始めた人の62.0%が、その後「損をした・後悔した」と回答しています 。この結果は、初期段階での知識不足がリスクにつながる可能性を示唆しています。

いわゆる「なんとなく投資」で後悔した人々の調査では、「直近1年以内の経済イベント」を要因とした人が31.9%、「過去3年以内の市況変化」を挙げた人が43.2%にのぼり、合わせて7割以上が近年の経済イベントの影響を受けていることが調査で判明しました。

これらの結果は、「投資が予測できない経済変動に左右されやすい」という現実を示しています。単なる勢いや「なんとなく」で始めた投資は、外部要因の変化に耐えられず、失敗につながる可能性が高いと言えるでしょう。

しかし、こうした失敗経験が無駄になるわけではありません。初めての投資から得た学びとして最も多かった回答は「長期目線を持つ」(54.7%)と「情報収集の必要性」(52.7%)でした 。このことから、「なんとなく投資」で始めた人々が、失敗を経て「投資と長期的に向き合う姿勢」を培っていることがうかがえます。

「これまでにボーナスを投資に充てた経験があるか」を尋ねたところ、投資経験者の約6割(59.1%)がこれまでにボーナスを投資に活用した経験があると回答しています。

ボーナスを投資に充てる理由として最も多かったのは、「まとまった資金があると始めやすいから」で、全体の61.5%を占めました。ボーナスは臨時収入であるため、まとまった金額を一度に投資に回しやすく、心理的なハードルが下がることが背景にあると考えられます。

次回のボーナス時期において、「具体的に投資を考えている」「漠然と考えている」と回答した方は合わせて64.3%に上り、多くの方が投資に対して前向きな姿勢を持っていることがわかりました。

この結果は、「ボーナスという臨時収入が投資開始の心理的な後押しとなっている」ことを示すとともに、投資に対する人々の意識が確実に高まっていることを反映していると言えるでしょう。

今回の調査で明らかになったのは、多くの人々が投資を始める際に十分な準備をせず、曖昧な判断基準で行動しているという現状です。その結果、多くの人が後悔や損失を経験していることも見えてきました。

持続的な資産形成のためには、「正しい情報に基づく意思決定」と「長期的な視点に立った計画性」が不可欠です。「まとまった資金があるから」という理由で投資を始めるのではなく、「なぜ投資をするのか」「どのようなリスクがあるのか」といった情報収集を事前にしっかりとやっておくことが重要だと言えます。

NISAやiDeCoなどの制度が普及し、投資がより身近になった今だからこそ、「なんとなく投資」ではなく自らの意思で投資を学び、計画的に資産形成に取り組む必要があるのではないでしょうか。