10月30日、東京 日本橋で「紅茶ポリフェノールラボ発足セミナー」が行われました。
紅茶に含まれるポリフェノールには、抗酸化や抗菌、腸内環境のサポート、美容ケアなど、私たちのからだをやさしく支えてくれる多くの作用があるといわれています。最近の研究では、「腸内フローラをより働きやすい状態に整える可能性」や、「特定ウイルスに対する不活化作用」まで示唆されており、紅茶は“ほっと一息”だけではない、日々を支える心強い味方として、改めて注目が集まっています。
「紅茶ポリフェノールラボ」とは
「紅茶ポリフェノールラボ」は、一般社団法人ウェルネス総合研究所が立ち上げた研究会です。紅茶に含まれるポリフェノールの働きについて、科学的根拠に基づく情報発信と啓発活動を行うことを目的としています。
発足にあたり、農学博士で甲南女子大学 医療栄養学部 医療栄養学科 准教授の川畑 球一 先生、同じく農学博士で静岡県立大学 食品栄養科学部 客員教授の中山 勉 先生、そしてウェルネス総合研究所 執行責任者兼フェローの赤坂 幸正 氏が登壇し、紅茶ポリフェノール研究の現状と可能性について解説が行われました。
日本ではここ数年、健康志向の高まりや国産紅茶の広がり、SNSを通じた“紅茶のある暮らし”の共有などを背景に、「第3次紅茶ブーム」と言われる盛り上がりが続いています。
その一方で、緑茶やウーロン茶と比べると、「紅茶=健康に良い」という認知はまだ十分に浸透していないという課題があります。こうした状況を踏まえ、ラボは最新研究の整理と正確な情報の発信を通じて、紅茶の持つ本来の価値をより広く伝えていくことを目指しています。
腸で働くポリフェノール
セミナーでは、川畑先生が“腸で働くポリフェノール”の作用について解説を行いました。
紅茶に含まれるポリフェノールは、化合物の総称で自然界にはおよそ8,000種類あるとされています。共通する働きのひとつが抗酸化作用で、体内で過剰に生じた活性酸素によるダメージを和らげるといわれています。
ただし、ポリフェノールは小腸での吸収率が高くなく、多くは大腸へ届き、腸内細菌と関わりながら働くことが注目されています。腸内には約1000種類・100兆個もの細菌が存在し、そのバランスは食事や生活習慣によって変化します。
近年の研究では、ポリフェノールがビフィズス菌などの“腸にすむ味方”の働きを高める可能性が示されており、腸内環境を整える一助となるのではないかと期待されています。
紅茶特有のポリフェノールと抗ウイルス作用
中山先生からは、紅茶に含まれるポリフェノールの特徴について解説がありました。
緑茶にもポリフェノールは含まれますが、紅茶の場合は発酵の過程でカテキン類の一部が変化し、テアフラビン類やテアルビジン類と呼ばれる紅茶特有の成分が生成されます。これらの成分は、抗菌・抗ウイルス作用に関わることが注目されています。
中山先生は、紅茶がインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの不活化に関与する可能性を示す研究について紹介しました。
研究の中でマウスを用いた実験では、ウイルスを水で処理した場合と比べ、紅茶で処理したウイルスを感染させたマウスの生存率が高かったという結果が報告されています。
さらに、イギリスで行われた大規模調査では、1日2杯以上の紅茶を飲む人は、約10年後の死亡率が9〜13%低下していたというデータもあります。カフェイン量の有無に大きな差は見られず、紅茶ポリフェノールが関与している可能性が示唆されています。
やさしい習慣としての紅茶
研究結果から、1日2杯ほどの紅茶を習慣的に飲むことが、健康を支えるひとつの選択肢となることがわかりました。
温かい紅茶の香りは、ゆっくりと気持ちを落ち着かせてくれます。この冬は、“ひと息つく時間”として、生活の中にやさしい一杯を取り入れてみてはいかがでしょうか。