“ガラパゴス業界”と呼ばれた手芸が、テクノロジーの力で再進化。アナログな趣味が「個性表現の文化」へと進化

コロナ禍を経て、Z世代の間で静かな「手芸」ブームが広がっています。
かつて中高年女性の趣味とされてきた編み物やレジン小物づくりが、いまや若者たちの「自己表現の手段」として注目を集めています。SNSで作品を共有したり、動画を見ながら制作したりといったデジタルネイティブならではの楽しみ方が広がる中、そのブームを支えているのがAI技術とECプラットフォーム「Temu」の存在です。

「ガラパゴスな業界」が進化した理由

ハンドメイド愛好家が集うSNSアプリ「croccha(クロッチャ)」を運営するtryangle(トライアングル)代表・藤原真吾氏は、10年前に手芸業界を調べた際の驚きを「まるでガラパゴスのようだった」と振り返ります。

同社が手がけるcrocchaは現在、口コミを中心に月間アクティブユーザー10万人を超えています。写真から作品に使われた素材をAIが分析し、購入先まで提示する独自技術を持ち、関連特許も取得しています。藤原氏は「作り方動画がすぐ見つかり、素材は写真で解析できる。テクノロジーが手芸を再発見させたのです」と語ります。

TemuがつなぐZ世代との新たな接点

同社は8月、人気ECアプリ「Temu(テム)」に出店し、レジン小物やモールドなどの販売を開始しました。販売開始からわずか1カ月で販売件数は800件を突破し、Z世代を中心にリピート購入も増加しています。藤原氏は「Temuの集客力は非常に高く、若い層へのリーチを実感しています」と話します。これまで主な購買層だった子育て世代やシニア層に加え、Z世代という新たな軸が加わりました。調査会社イプソスの調査によると、Temu利用者の約2割が20代であり、他のプラットフォームと比べて若年層の利用率が高いことがわかっています。

tryangle(トライアングル)代表の藤原真吾氏

Temuで試す「日本製」の競争力

tryangleはTemuを通じて、「日本製」の魅力を世界に発信することにも挑戦しています。藤原氏は「Temuは海外展開の大きな可能性を持つプラットフォームです。日本語でのサポートも手厚く、出店後はブランド認知が大きく高まりました」と語ります。

Temuでは正規ブランドを保護するための公式認証マークが設けられており、消費者が転売業者と区別できる仕組みも整っています。出店後には「若年層へのリーチが拡大し、ブランドの信頼性も向上した」と藤原氏は強調します。

tryangleが展開するレジン製品を使った作品

起業の原点は“母への恩返し”

藤原氏が手芸に関心を持ったきっかけは、幼少期に母が楽しんでいた手芸でした。「母が材料を探して何軒も回る姿を見て、もっと簡単に買えるようにしたいと思った」と語ります。外資系製薬会社で支店長を務めた後、2018年にMBA同期とともに起業。AIによる素材解析技術で特許を取得し、アナログな業界にデジタルの風を吹き込みました。現在、テクノロジーの進化も追い風となり、国内のクリエイターエコノミー市場は2024年時点で約1兆8700億円規模に達しています(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。藤原氏は「生成AIが注目されるよりずっと前から、AIと手芸を組み合わせてきた」と笑います。彼にとって手芸市場への挑戦は、単なるビジネスではなく「母への恩返し」でもあるのです。

日本から世界へ、手芸の新たなステージへ

現在、Temuは世界90以上の市場で展開されています。藤原氏は「国が違ってもプラットフォームの構造は似ています。今のうちに使いこなせば、海外展開もスムーズに進むはずです」と話します。かつて“ガラパゴス”と呼ばれた手芸業界はいま、Z世代の感性とAI、そしてTemuのような新しいプラットフォームによって、新しい進化のステージに立っています。

▼Temu公式サイト
https://www.temu.com/
▼tryangle公式ストア(Temu内)
croccha shop