今年、連続テレビ小説「あんぱん」(NHK)の舞台として注目を浴びた高知県。やなせたかしさんゆかりの地であるほか、日本有数の漁獲量を誇り消費量日本一の鰹や、豊かな自然の中で楽しむアクティビティを目的に多くの人々が訪れています。観光の定番だけでなく、まだ知られていない西部エリアには隠れた魅力が溢れています。

雄大な自然と温泉

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東京から飛行機で約90分。高知県は四国の南部に位置し、太平洋に面した自然豊かな県です。歴史・自然・食・アクティビティが一度に楽しめる旅の宝庫。森林面積が県土の約84%を占め、日本一の“森林率を誇る県”として知られています。坂本龍馬や板垣退助など歴史的偉人を輩出し、よさこい祭りやカツオ料理など文化・食の魅力も満載です。

今回訪れたのは、四国最南端に位置する四万十・足摺エリア。雄大な太平洋や清流四万十川など豊かな自然を満喫できる自然遊びの宝庫、自然のスケールの大きさと、地元住民の大らかさに癒やされるエリアです。

300年以上受け継がれる高知の街路市文化

高知城

高知市の「土佐の街路市」は、日曜市・火曜市・木曜市・金曜市と曜日ごとに特色ある市が開かれています。いずれも300年以上の歴史を持ち、地元の暮らしと観光をつなぐ人気の青空市です。

高知城下の県庁前で毎週開催されている”木曜市”に行きました。出店数は曜市の中でも日曜市に次ぐ第2位。日曜市と同じく、高知を代表する食材が数多く並びます。

高知といえば生姜やみかん。試食もできる店舗もあります。生産者の皆様と直接お話しできるのはとても貴重な機会。

立ち寄った大崎餅店で購入した「いも餅」(300円)。ひと口食べれば、やわらかな食感と餡子のほど良い甘さが絶妙に調和し、素朴ながらも忘れられない味わいです。「この日が旅の最終日だったら、もっとたくさん買って帰りたかった」――そう思わせるほど、心に残る一品。地元ならではの温かみを感じられる味覚は、旅の思い出をさらに豊かにしてくれます。

幼稚園児が、金銭感覚を養う教育の一環でそれぞれエコバックとお財布を握りしめ、お買い物体験。「どれにしようかな」と、子どもたちは真剣な表情。ほのぼのとした光景にほっこりしました。

高知市の中心・はりまや橋では、東西線と南北線が交差し、観光地と市街地を結ぶ路面電車が日々走っています。生活の足でありながら、旅人にとってもアクセスの要となる存在です。そんな中、ラッピング車両のひとつ「アンパンマン電車」に遭遇すれば、子どもたち以上に大人の心も弾む瞬間。鮮やかなカラーリングとキャラクターたちが街を駆け抜ける姿は、まさに高知ならではの風景です。

隠れた名物!戦後の路地裏から生まれた須崎のソウルフード「鍋焼きラーメン」

高知県の中央に位置し、農業と漁業が盛んな自然豊かな「須崎市」。ニホンカワウソの生存が最後に確認された清流「新荘川」が流れていることで知られています。

須崎市で戦後間もなく誕生した「鍋焼きラーメン」。親鳥の鶏がら醤油ベースのスープに、親鳥の肉・ねぎ・生卵・ちくわ(すまき)などを具材にした素朴な一杯です。土鍋で提供されるため、ふたを開けた瞬間に立ちのぼる湯気と鶏がらスープの香りに包まれ、細麺との絶妙なバランスが“日本一熱いラーメン”と呼ばれる所以。市内には専門店をはじめ約30店舗が点在し、地元の人々に長く愛されてきました。

鍋焼きラーメン食べ方の流儀

食べ方ひとつで味わいが変わるのも、このラーメンの魅力。

  • 其の一 卵崩し派
    スタンダードな食べ方。卵をすぐに崩してスープと麺に絡める王道スタイル。全体の約7割がこの派閥。
  • 其の二 卵沈め派
    卵を鍋底に沈め、最後まで隠しておきクライマックスで楽しむスタイル。秘やかな達成感を味わえる食べ方。
  • 其の三 すき焼き風派
    鍋の蓋を器代わりに使い、生に近い卵をすくってスープとコショウを加え、麺を絡めて食べる。少数派ながら“通”に人気の食べ方。

今回立ち寄ったのは、四国最大級の道の駅「かわうその里すさき」の2階「レストランとれた亭」が提供する鍋焼きラーメン。「鍋焼きラーメン7か条」に準じて開発されたラーメンで、辛さを控えたさっぱりした薄味スープは、年配の方にも食べやすい味に。

ゆるキャラグランプリ2016で優勝したしんじょう君

後引くおいしさで箸がとまらず。味変でゆずからりんを入れたところこれがとってもおいしくて、一階のお土産物コーナーで購入したほど!

1階のお土産コーナーでは鮮魚も販売していて、名物鰹の藁焼きも実演!藁焼きで仕上げられた鰹は、外は香ばしく、中はしっとり。ひと口頬張れば、藁の香りがふわりと広がり、鮮魚ならではの旨みが舌に残ります。まさに「ここでしか味わえない逸品」。

道の駅「かわうその里すさき」の目の前には、2020年にオープンした大きいしんじょう君バルーンが目印の「ローソン須崎かわうその里店 」 随所にしんじょう君がいてとてもかわいいらしい店舗です。

太陽と海が育む――黒潮町で伝統の「天日塩づくり体験」

高知県黒潮町といえば、豊かな海の恵みとともに育まれた「塩」が名物。町の名を聞けば、潮風と太陽のきらめきを思い浮かべる人も多いでしょう。そんな黒潮町で人気なのが、ソルティーブ 灘製塩所での天日塩づくり体験です。(所要時間90分 体験料2,200円/1人)

灘製塩所では、海水を汲み上げ、太陽と風で乾かす工程を間近で体験できます。白く輝く塩の結晶を手にした瞬間、自然の力と人の知恵が融合した「食の原点」に触れる感動が広がります。

レクチャーをしてくれたのは、「土佐の塩丸」2代目塩守り・吉田拓丸氏。軽快なトークとユーモアを交えながら、塩づくりの工程をわかりやすく解説してくれるので、子どもから大人まで夢中になれるのが魅力です。

①施設内を回って海水から塩ができるまでをレクチャー(より理解を深めるために海水・鹹水かんすい・苦汁にがりの味見を体感)

海から海水を引き上げ、何度も繰り返しながら濃度を上げるという地道な作業。

②結晶ハウス内で塩の撹拌、採塩の体験

黒潮町のソルティーブ 灘製塩所での天日塩づくり体験は、まさに自然と人の力が融合するドラマ。
ハウスの中は夏場になると気温が60度にも達することもあるという過酷な環境。そこで塩を育てる作業は、まさに職人技です。結晶箱での撹拌作業は、手で海水を混ぜながら結晶を育てる大切な工程。摩擦が強く、なんと指紋がなくなるほどだとか。まさに塩守りの覚悟と情熱を感じる瞬間です。

実際に体験すると、摩擦によって手がつるつるになり、まるでエステを受けたかのような感覚に。
「塩づくりって大変そう…」と思いきや、参加者からは「美容効果まであるなんて!」と驚きの声が上がるほど。

脱水にかけ、サラサラのお塩の完成!かと思いきや、まだ大切な工程があります。

③塩の選別 選別後は各自、小瓶に塩をつめてシールを貼って完成!(マイソルトの出来上がり!)

仕上がったばかりの塩を、旬の野菜や果物にふりかけて味わう―そんな贅沢な実食タイムが待っています。季節により、きゅうりやトマト、スイカ、小夏、青切みかんなど。みかんに塩をふると、酸味がやわらぎ、甘みが際立つ不思議な味わいに。参加者からは「家でもやってみたい!」という声が続出するほどでした。

④塩の副産物である苦汁の沈殿物=浴用塩を使って簡単な塩エステ体験

にがり沈殿物である塩を使った簡単な塩エステを体験!驚くほどつるつるに!(顔パック/指はぶらしで歯みがきなどにも応用できるものとのこと)

ここでしか味わえない塩づくり体験!足を運んでみて!

ハート型の白山洞門から、絶景足湯まで―足摺岬の魅力を歩く

高知県最南端に位置する足摺岬エリアは、海と空が織りなす壮大な景観と、ここでしか出会えない体験が詰まった特別な場所です。

絶景足湯でひと休み

散策の途中で立ち寄りたいのが、岬の高台にある絶景足湯。目の前に広がる太平洋を眺めながら、温かな湯に足を浸せば、旅の疲れもすっと癒されます。潮風に吹かれながらの足湯は、まさにここでしか味わえない贅沢な時間。

話題の「白山洞門」

波の浸食によって生まれた自然の造形美――その形がまるでハート型に見えることから、近年「恋愛のパワースポット」としても注目を集めています。青い海を背景にしたハートの洞門は、写真映えも抜群。訪れる人々の心を温かくしてくれるスポットです。

急な階段を昇降するので歩きやすい靴がおすすめです。(5分~10分弱)

足摺岬エリアの散策を締めくくるのにふさわしいのが、冬から春にかけて見られるだるま夕日。水平線に沈む夕日が海面に映り込み、まるで「だるま」のような丸い姿を見せてくれる幻想的な光景です。

この日は雲が多く、残念ながらだるま夕日にはならなかったものの空一面が茜色に染まり、海と空が溶け合うような美しい夕焼けを拝むことができました。自然が織りなす一期一会の景色に感動しました。

冬の味覚「土佐の清水さば」を満喫

高知県土佐清水で水揚げされる清水さばは、冬の旅に欠かせないご馳走。一般的にサバは刺身には不向きとされますが、清水さばは特別です。その秘密は、立縄漁という独自の漁法。一本ずつ丁寧に釣り上げ、船の生け簀に入れて、漁港の水槽まで生きたまま運ぶことで、鮮度を極限まで保ちます。だからこそ、土佐清水では刺身で食べるのが一般的。

高知県土佐清水市にある「御食事処 あしずり」は、海沿いならではの新鮮な魚料理が楽しめる食事処。なかでも名物は、鮮度が命の清水サバの刺身です。ただし、このサバは水揚げがなければ提供できないため、出会えるかどうかはまさに運次第。そんな希少な一皿を、この日はラッキーにも味わうことができました。

・さばさしみ定食 1400円(税込) 
・大根と宗田節のサラダ 400円(税込) 
・鰹塩タタキ 700円(税込) 
・サバラボネ 250円(税込) 

しっかりとした歯ごたえと旨みが口いっぱいに広がり、冬の味覚としても格別です。宗田節をまぶした大根サラダは、シンプルながらも土地の味覚を感じられる一皿。シャキシャキとした大根の食感に、宗田節の深い旨みと香りが重なり、さっぱりとしながらも満足感のある味わいでした。

高知の酒文化には、ユニークで温かみのあるマナーが息づいています。そのひとつが、徳利の注ぎ口からお酒を注がないという習慣。一般的には注ぎ口から注ぐのが自然に思えますが、高知では「縁が切れる(=円が切れる)」といって、相手を思いやる気持ちを大切にしたい作法として言い伝えられてきました。そこで、あえて注ぎ口ではない部分から注ぐのがマナーなのです。

土佐清水を訪れたなら、清水サバと並んでぜひ味わいたい名物料理「長太郎貝黄金焼き」。大ぶりで旨みたっぷりの長太郎貝を香ばしく焼き上げ、そこに自家製味噌ダレを合わせた贅沢な一皿です。
ご飯もお酒もつい進んでしまうおいしさでした。

地酒”土佐鶴”との相性ばっちりな鰹のたたき(700円)。鰹のたたきに薬味をたっぷりのせ、土佐鶴を一口。口の中で広がる旨みと香りは互いを高め合い、まさに「高知の味覚の黄金コンビ」。

地元の方も通うお店だからこそ、味わえるのは、観光向けに飾らない本物の土佐清水の味。旅の途中で立ち寄れば、土地の暮らしに溶け込むような体験ができます。

海・星・サウナ。すべてが満ちる、太平洋を望む極上の宿

部屋のベランダテラス

高知県・足摺岬に佇む「アシズリテルメ」は、海と空、星と静寂、そして身体をととのえるサウナが調和した、大人の隠れ宿。太平洋を一望する絶景のロケーションで、日常を忘れる贅沢な時間が流れています。

天然のラドン温泉

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サウナ

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露天風呂

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館内には、身体を芯から温める天然ラドン温泉。静けさに包まれながら湯に身を委ねれば、心も体もすっと解きほぐされていきます。日帰り温泉として利用可能。

高知県・足摺岬の夜空は、まさに日本トップクラスの星空指数を誇る絶景スポット。街の灯りが少ないため、澄んだ空に星々が無数に降り注ぐ様子は圧巻です。視界いっぱいに広がる星の海は、都会では決して見られない光景。流れ星もいくつも遭遇して、就寝するのが惜しくなる夜でした。

海・星・サウナ、すべてが満ちる足摺岬。ここでしか味わえない“極上の休日”が待っています。

魅力あふれる土佐ツアー―まだまだ見どころは尽きません。続きは後編でご紹介します。