10月29日、筑波大学と株式会社つくばウエルネスリサーチが「子育て女性のウェルビーイング白書2026」を発表しました。全国47都道府県の未就学児を育てる男女6,334人を対象にした調査から見えてきたのは、子育てに対する意識と実態のギャップです。
「子育ては母親中心」という意識と実態のギャップ
今回の調査では、「子育ては母親中心」と考える人は35.5%にとどまる一方、実際には母親中心の子育てになっている割合は66.2%。その差は30.7ポイントにのぼりました。また、子どもの体調不良時に母親が仕事を休むことについても、意識では35.3%なのに対し、実態では63.6%と、28.3ポイントの差が見られました。
平日1日あたりの育児時間を比較すると、女性は318.2分、男性は143.2分。女性のほうが約2時間55分長い結果となっています。一方、家事の時間も女性のほうが長く、仕事の時間は男性のほうが長いという男女差が見られました。
こうした結果から浮かび上がるのは、「子育ては母親だけが担うものではない」と考える人が増えても、実際の生活では母親に負担が偏っているという現状です。
その背景のひとつにあると考えられるのが、アンコンシャスバイアス、つまり無意識の思い込みです。「子どものことは母親がよくわかっている」「子どもが体調を崩したら、母親が仕事を休むもの」。明確にそう考えていなくても、家庭や職場での慣習によって、いつの間にか母親が育児の責任を多く引き受けていることがあります。
子育て中の女性が自分の健康を守るためには、本人の努力だけでなく、家庭や職場、地域社会も含めて子育てを支える環境を整える必要があります。
パパの育児参加を進めるには、何が必要?
では、男性が子育てにもっと主体的に関わるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
記者発表会では、筑波大学大学院の久野教授から、女性の健康課題への理解を深め、職場の意識や風土を変えていくことの重要性が語られました。
女性の健康について、男性がどのように話題にすればよいかわからず、ハラスメントを懸念して発言を控えてしまうケースもあります。ハラスメント研修で「こうした発言をしてはいけない」と禁止事項を伝えるだけでは、男性が萎縮し、女性の健康について話すこと自体を避けてしまう可能性もあるといいます。
大切なのは、単に「言ってはいけないこと」を知るだけでなく、女性と男性それぞれの健康課題について理解を深め、互いにどう接すればよいのかを考えられるようにすること。そうした理解が広がることが、無意識の思い込みを減らすことにもつながります。
また、制度を整えるだけでなく、実際に制度を利用できる職場の風土も重要です。制度があっても、周囲の目が気になって利用できなければ、働く人を支える仕組みとして十分に機能しているとはいえません。
こうした考え方は、家庭での子育てにも通じます。男性の育児休業取得が進んでも、休業後に育児の責任が再び母親に偏ってしまえば、女性の負担は根本的には変わりません。子どもの予定や持ち物を把握し、家族のスケジュールを管理するといった目に見えにくい負担も含め、夫婦で役割を共有することが大切です。
ママだって、自分のことを大切にしていい
子どもや家族のために頑張ることは大切です。でも、自分の健康や気持ちを後回しにし続ける必要はありません。
忙しい毎日の中で、自分のための時間を確保するのは簡単ではありません。だからこそ、女性一人ひとりの努力だけに頼るのではなく、家庭、職場、地域社会が一緒に子育てを支えることが求められています。
今回の白書が示しているのは、子育てに対する意識が変わっても、実際の負担の偏りはまだ解消されていないという現状です。
「ママだから頑張らなきゃ」ではなく、「ママも自分を大切にしていい」。母親が自分の健康や気持ちを大切にしながら、安心して子育てができる社会にするためには、個人の意識だけでなく、家族や職場、社会全体の行動を変えていくことが必要なのではないでしょうか。