1867年建立の国指定重要文化財・東本願寺 大玄関を舞台に、グラフィックデザイナー/アートディレクター矢後直規氏による初の個展『Pangraphics(パングラフィクス)』が、2026年11月1日(日)から11月8日(日)までの期間限定で開催されます。グラフィックデザイナーとして同会場に起用されるのは史上初。「不完全さの受容」をテーマに、屏風や掛け軸、着物、団扇など日本の伝統工芸と現代グラフィックデザインを融合させた作品群が展示されます。

展覧会の見どころと世界観

現代のデザインが均一化するなか、矢後氏が一貫して掲げるテーマが「Humane Error(ヒューメインエラー)」です。人間の手仕事だからこそ生まれるにじみや不完全さをあえてデザインに取り込む考え方は、ありのままを受け入れる浄土真宗の「凡夫性(煩悩を抱えたありのままの姿を受容する)」の思想とも美しく重なり合います。

紅葉を表現

最近の異常気象を表現

本展では、京表具や手描き友禅、和硝子、刀剣工芸、伝統団扇など、職人や工芸作家との濃密な対話から生まれた特別な作品群が一堂に会します。

矢後直規 プロフィール

アートディレクター/グラフィックデザイナー。1986年静岡県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。博報堂を経てSIXに所属。2025年Pangraphics設立。

東京ADC賞、JAGDA新人賞、D&AD、New York ADC、One Showなど国内外で受賞。国際デザインアワード審査員、海外展示への招聘、海外デザイン誌での特集などを通じ、国際的な評価を高めている。

ZIPAIRやスマートハウスメーカーMWのブランドデザイン、グローバルコスメブランドSENSAIのビジュアルコミュニケーション、Laforet HARAJUKUの広告、アーティストのCDジャケットなど、アートディレクションを手がけながら、アートワークを発表。2020年ラフォーレミュージアム原宿での初大規模個展「婆娑羅」、香港のPMQで行われた「Imitative Behaviour」など展覧会を開催。ドイツデザイン誌novum、中国デザイン誌 Package and Design Magazine、COMMERCIAL PHOTOで特集され、青幻舎から初作品集「婆娑羅」を出版。

2026年秋放送予定のNHK連続テレビ小説『ブラッサム』にてタイトルロゴおよびビジュアルデザインを手掛けた。

宇野千代ゆかりの“淡墨桜”を描いた大屏風を初公開

今回の展示では、図案(デザイン)と伝統工芸の「現場」との間で交わされた、妥協のない手仕事のストーリーが凝縮されています。

本展の見どころの一つが、新作『淡墨桜余花図屏風』

協力:京表具井上光雅堂
サイズ:W3,778mm H1,723mm

NHK連続テレビ小説『ブラッサム』のタイトルロゴ・ビジュアルを手掛けた矢後氏が、主人公のモデルである小説家・宇野千代ゆかりの「淡墨桜」をモチーフに描いた六曲半双の大屏風。約1500年の歴史を持つ淡墨桜を題材に、人と自然が共に生きる姿を表現。手描きの原画とデジタル技法を行き来しながら完成させた作品で、儚さと生命力が同居する世界観が広がります。

職人との協働で生まれた一点ものの訪問着にも注目

協力:銀座もとじ

会場では『淡墨桜文様訪問着』も展示されています。

この作品は、宇野千代の淡墨桜をモチーフに、老舗呉服店「銀座もとじ」とともに制作した一点ものの訪問着。京都の職人による手描き友禅で表現されており、グラフィックデザインが着物という立体的な工芸作品へと昇華されています。

制作に携わった関係者によると、通常であれば金彩加工を施す部分も、作品全体の世界観を尊重し、あえて金を使わず淡い墨色で表現。図案の細かな線や余白まで忠実に再現しながら、着物として美しく見えるよう、柄の配置や花びらの大きさを細かく調整したそうです。

着物特有の上前(一番目立つ主役の部分)や帯で隠れる位置(あえてデザインをあけない空間)のバランスを計算し、花のサイズや配置をミリ単位で調整しながら一枚の着物として美しく収めています。

また、当初はなかった刺繍も加えられ、光を受けるたび花びらが立体的に浮かび上がる仕上がりに。平面のデザインが、職人の手によって着物ならではの豊かな表情を獲得している点も見逃せません。

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京都の紅葉を描いた新作《平安紅葉図》

もう一つの注目作が『平安紅葉図』です。

千年の都・京都の紅葉をテーマに、人々によって守り継がれてきた景観を一本の紅葉として表現。琳派を思わせる金の表現や日本画の岩絵具を取り入れ、伝統絵画とグラフィックデザインの境界を越える挑戦的な作品となっています。

協力:東山堂

東山堂 祇園八坂店に展示

さらにこの作品から派生した《紅守|朴造》では、守り刀をモチーフにした立体作品。木製の刀身に紅葉の図像を描き、新たな“守り”のかたちを提示します。(東山堂 祇園八坂店にて展示)

伝統工芸・職人とのコラボレーション作品

会場には、孔雀をモチーフにした掛け軸《新鳥獣図》シリーズや、日本の花々を描いたドローイング作品も登場。

『新鳥獣図|青孔雀・白孔雀』(京表具井上光雅堂):美しく羽を広げ続ける孔雀の姿に、グラフィックデザインのあり方を重ね合わせた掛け軸作品。

『桃蕾図団扇』『蒲公英図団扇』(蜂屋うちわ職店):約400年受け継がれる技法を用いた大団扇。和紙に銀箔を押し、竹の骨組みを繊細に重ね合わせた大作です。桃の蕾や蒲公英を描いた和紙の団扇は、工芸品でありながらアート作品としての存在感を放ちます。

長襦袢『モダンボーイ(モボ|Mobo)』(銀座もとじ):1920年代に流行した「モダンガール/モダンボーイ」のアール・デコ調グラフィックをインスパイア。長襦袢の生地にあえてローマ字やグラフィックを落とし込んだモダンな和装表現。

京都・東本願寺で楽しむ注目アート展

歴史ある重要文化財の空間と、手仕事が生み出す現代アートが溶け合う特別な8日間。

矢後氏のお子様が描いた絵から生まれた作品にも注目

普段は限られたプロジェクトでしか足を踏み入れることができない東本願寺 大玄関。平面のデザインが職人の手によって着物や木彫、表具という「立体」へ命を吹き込まれていく息遣いを、ぜひ現地で間近にご体感ください。

会場では職人が一つひとつ手作業で仕立てたオリジナルうちわをはじめとする各種限定グッズも用意されています。秋の京都散策とあわせて、デザインの原点を捉え直す静かな対話の時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

矢後直規 グラフィック展『Pangraphics』

会期:2026年11月1日(日)〜11月8日(日)

会場:真宗大谷派 東本願寺 大玄関
  (京都府京都市下京区烏丸通七条上る)

開館時間:10:00〜16:00(最終入場15:30)

入場料:無料

主催:株式会社Pangraphics

協力:真宗大谷派(東本願寺)
   京表具井上光雅堂
   銀座もとじ
   東山堂
   蜂屋うちわ職店

後援:京都市
   京都市教育委員会