ぼくが「自立しろ」ということを学生にがみがみ言うのは、一人で暮らした方が気楽であるとか、誰にも依存しない生き方は素晴らしいとか、そんな薄っぺらなことを言いたいからではありません。そうではなくて、自立できる人間、孤独に耐えられる人間しか、温かい家庭、親しみのあふれる家庭を構築することができないと思っているからです。一人でいることのできる人間だけが、他者がかたわらにあるときの温もりに、深い感謝と敬意を抱くことができるのです。
 逆説的なことですが、「温かい家庭を構成できる人間」とは「一人でいることに耐えられる人間」のことです。「自分のために家族は何をしてくれるのか」ではなく、「家族のために自分は何をしてあげられるのか」ということを優先的に配慮するような人間のことです。

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