月間アクティブユーザー数が7億7,000万人以上を誇るオーディオストリーミングサービス「Spotify」は、音楽を通じて人々の気持ちに寄り添うオリジナルコンテンツプログラム「BLUE It’s Okay」を10月1日(木)より公開します。
一般公開に先駆け、去る9月30日(水)にはSpotify「BLUE It’s Okay」メディア向け発表会を開催。当日は、Spotifyのデータから紐解く若年層の「音楽との向き合い方」や「BLUE It’s Okay」誕生の背景、ヒューマンキュレーションとエディターの役割について紹介されました。
日常に不安を抱くZ世代が「音声コンテンツ」に求める癒やし
まず、Spotifyのデータから見えてきた日本のZ世代のインサイトについて、Spotify Japan Podcast Partner Managerの関根 麻美さんと、同Head of Editorialの佐々木 伸浩さんが説明しました。
社内データをもとにZ世代の意識調査を行ったところ、日本のZ世代の57%が日常に「生きづらさ」や不安を抱えており、45%が「人前で感情を表現するのが怖い」と感じているそうです。
その一方で、66%がポッドキャストを「心のよりどころ」として捉え、71%が「SNSデトックス」の手段としてオーディオを活用しています。これは、「画面を注視し続けるスクリーンタイムへの疲れとは対照的に、音声コンテンツが不安を和らげる“癒やし”として機能している」と関根さんは見解を示しました。
さらに、Z世代のポッドキャスト視聴はアーティストの裏話やトークといったコンテンツを好む傾向があるそうで、月1回以上ポッドキャストを聴くZ世代の68%が「ホストに強い親近感を抱いている」とのこと。この数字からも、Z世代が音声を通じて配信者へ身近な愛着を感じやすいことが見て取れます。
続いては、Spotifyのリスニングデータから見えてきたZ世代の特徴についてです。楽曲のムードや文脈(コンテクスト)を独自にタグ付け分析していくなかでわかったのは、「Z世代が最も聴いているのは、感傷的でエモーショナルな楽曲である」ということでした。また、他の年代に比べて、20時から深夜3時の夜間帯にポッドキャストを利用する割合が大きく上回っています。加えて、アコースティック系楽曲をマイライブラリーに保存する割合は全リスナー平均の約6倍に達しており、温かみのあるアコースティックなサウンドに強い価値を感じているようです。
「楽曲の探し方にも構造的な変化が起きています。かつてのように『ジャンル』で探すのではなく『眠りたい』『リラックスしたい』といったムードやコンテクストを基準に選ぶのがZ世代の主流です。
さらに、ポッドキャストと音楽を両方聴くユーザーは、音楽単体のリスナーよりも総再生時間が長くなるというデータも出ています」(佐々木さん)
ブルーな気持ちを否定せず肯定する「BLUE It’s Okay」のコンセプト

こうしたZ世代の聴取習慣やリスニングデータを踏まえて企画したのが、「BLUE It’s Okay」です。「眠れない夜、みんなのBlueと寄り添うプログラム」というキャッチコピーを掲げ、“BLUE=落ち込んだり、気持ちが晴れない状態”を無理にポジティブに変えるのではなく、音楽を通じてその気持ちに寄り添うことを目指す。
「ブルーなときも、それでいいんじゃない?」と肯定してあげる。
そういうメッセージをZ世代に届けたいという思いから立ち上げたプロジェクトになっています。
「BLUE It’s Okay」は、今年1月からコンテンツの公開をスタートしており、これまでにKroiやCody・Lee(李)、Daichi Yamamotoなど多彩なアーティストが出演しています。


そして発表会では、10月1日から公開される「BLUE It’s Okay」コンテンツが特別に先行上映されました。アーティストのanoが登場し、アコースティックセッションとトーク映像を楽しめる内容になっています。
決して、派手でインパクト重視のものではなく、短い切り抜きでバズを狙うようなテンションのトークでもない。このコンテンツが目指したのは、寂しさを感じたり、少し憂鬱な気分になったりしている若者にそっと寄り添う存在になること。まるでアーティストが自分の部屋に入り込んで歌ってくれているような世界観を表現したそうです。

今回のコンテンツで使用するセットデザインや、ブルーをテーマにしたロゴ制作、会場に置く家具などは、クリエイティブアソシエーションの「CEKAI(セカイ)」との協働のもと、このプロジェクトのためにSpotifyがオリジナルで特注・制作したものです。
また、「音楽×ポッドキャスト」というSpotifyだからこそ実現できるフォーマットを採用したのも、今回の企画でこだわったポイントだと関根さんは語りました。完全にこの2つを掛け合わせたIP(コンテンツ)を一から開発するのは初の試みだそうです。

「出演いただいたアーティストの皆様も、こちらからお願いしなくても『若い世代に届けたい想い』を情熱的に語ってくださっています。一日の終わりにベッドサイドで聴きながら、ゆったりと安心できる気持ちを届けられたらいいなと思っています」(関根さん)
人間のキュレーションが、ユーザーの発見を広げていく

後半ではSpotifyにおけるエディトリアルの役割について佐々木さんがプレゼンテーションを行いました。
Spotifyには世界中で100名を超えるミュージックエディターが在籍しています。音楽やカルチャーは国や地域ごとに大きく異なるため、それぞれのローカル文化に深く根ざしたスペシャリストが、各地で現地のエディターとして活動しています。
エディターの業務は多岐にわたりますが、非常に重要な基盤になっているのが「リスニング」です。これは人間にしかできない作業であり、情報をインプットし、市場のトレンドや文脈を見極める判断に必要不可欠だからです。

エディトリアルにはこのような3つの特性があります。
1つ目は、まさにワインのテイスティングのように、日々膨大な楽曲を聴き込んだ上で、その曲が持つメッセージ性や背景にある文脈、そして将来的なポテンシャルなどを見極める審美眼を指します。2つ目の「文化的専門性」は、音楽の歴史やジャンル、取り巻くコミュニティといったものに着目し、楽曲が持つ本来のニュアンスを深く理解する姿勢です。そして3つ目の「トレンド予測」は、データとして数値化される前段階で、次に起こる兆候をいち早く察知し見出していくことが、エディトリアルに求められるのです。

さらに、エディトリアルには次のような役割もあります。
まずは「キュレーション」です。Spotifyは、黎明期からユーザーが未知の音楽やカルチャーに出会うメディアとして「プレイリスト」を重要視し、そこに人的リソースを注いできました。この役割の重要性は今後も変わりませんが、「エディターの役割がキュレーションの枠を超えて新しく進化している」と佐々木さんは述べました。
それが、新たな音楽のムーブメントやトレンドを発掘し、外に向けて広く提示していく「カルチャーの発信者」としての役割です。今回の「BLUE It’s Okay」や新人アーティストのフックアップ企画などがまさにこれに当たります。さらにプレイリストを組んで終わりではなく、その背景にあるアーティストの物語や文脈を、エディター自身の声や言葉でしっかりとリスナーへ届けていく「ストーリーテリング」にも注力しています。
そのほか、人間の深い洞察や知見をSpotify独自のアルゴリズムに差し込んでいくことによって、より精度の高いアルゴリズムへと進化を遂げています。
「Spotifyでは『人間にしかできない役割』の大きさをグローバル全体で強く信じています。音楽という、数値では捉えきれないカルチャーや文脈を扱うからこそ、人間の感性が不可欠なのです。私たちエディターは、ただ日常的に音楽を聴くだけでなく、実際のライブ会場へ足を運び、時にはアーティストの皆様と対話を重ねながら、日々多様なインプットを得ています。
そうして得たリアルな体験と知見のすべてを、ユーザーの皆様のためのキュレーションへと還元しています」

AIが進化する時代だからこそ、人間の感性や審美眼が問われる。
エディターたちの愚直なリスニング体験から紡ぎ出される「ヒューマンキュレーション」は、これからもSpotifyの核であり続けるのではないでしょうか。
