がん経験者719人を対象にした「がんとお金に関するアンケート調査2025」から、治療費以外にも多岐にわたる経済的負担の実態が浮き彫りになりました。認定NPO法人キャンサーネットジャパンの協力を得て実施された本調査は、2017年、2020年に続く3回目の調査となります。
収入減少と生活苦、半数以上が経済的打撃を受ける
調査によると、がん罹患により「自身の収入が減った」と回答した人は53%に上り、がん罹患後の年収は平均で20%減少という結果になりました。この減少幅は2017年、2020年調査と比較しても横ばい傾向が続いています。
収入が減った理由は「休職による収入減少」が最も多く、次いで「業務量をセーブすることによる収入減少」「離職による収入減少」と続きました。「満員ラッシュ時の通勤が不可のため、時短勤務になった」(60代・派遣社員)、「治療後に急な異動を命じられ年収が下がった」(40代・正社員)など、様々な形で収入に影響が出ていることが分かります。
さらに深刻なのは、収入減少や治療費の負担で「生活が苦しいと感じた」人が75%に達したことです。そのうち46%が治療開始後半年以内に生活の苦しさを実感しており、早期から経済的困窮に直面している実態が明らかになりました。
治療費だけじゃない、想定外の支出が家計を圧迫
がん診断後、74%が経済面で「困った」と回答。困った項目は「医療費」が57%と最も多かったものの、「本人や家族の生活費」27%、「税金や社会保険料などの支払い」22%と続き、治療費以外の負担も大きいことが浮き彫りになりました。
がん罹患後1年で増えた支出については、約9割が200万円未満、約6割が100万円未満と回答。治療費以外でお金がかかったものとしては、「入院時の日用雑貨」64%、「入院・通院時の交通費やタクシー代」54%、「外見ケア(アピアランスケア)」44%という結果でした。
実際の声としては、「往復1万近くかかるタクシー代が1番きつかった」(60代・正社員)、「ウィッグなどのアピアランスケア、脱毛やしびれなどのために買った副作用低減グッズも費用がかさんだ」(30代・正社員)といったコメントが寄せられています。
特に注目すべきは社会保険料の負担です。「傷病手当を受けていたので収入も少なく、その中から社会保険料などを会社に払っていたのでとてもとてもキツかった」(50代・正社員)、「社会保険料支払いが休職中の分にもかかり、想定外だった」(50代・パート・アルバイト)という声が複数上がっており、収入が減少する中での固定費の負担が深刻な問題となっています。
公的制度と民間保険の課題が浮き彫りに
全体の74%が高額療養費制度を利用していますが、「公的制度の利用だけでは治療費が足りない」と回答した人は39%に上りました。「どちらかといえば足りない」「まったく足りない」と感じている人が4割近くいる現実は、公的支援だけでは不十分であることを示しています。
一方、医療保険やがん保険など疾病に備える保険に加入していた人は85%と高い加入率を示しましたが、そのうち20%が「給付金を受け取れなかった」と回答。理由は「通院治療への保障がなかった」が最も多く、次いで「上皮内新生物の保障がなかった」となりました。
「入院なしの治療(内服)には出ない保険だった」(50代・派遣社員)、「今はほとんど通院での抗がん剤治療が主流」(50代・正社員)といった声からは、がん治療が入院から通院主体に変化してきている中で、保険の内容が実態に合っていないケースがあることが分かります。また、「がん保険、医療保険も20代で加入したもので30年も見直してなかったので、給付が少なかった」(50代・正社員)という声も見られました。
就労状況の変化、離職率は減少傾向も課題は残る
がん罹患をきっかけに離職した人は15%で、前回調査の18%から減少。65%が診断前と同じ職場に勤務しており、がんの治療をしながら働き続けるという考え方は広まってきているようです。
離職理由は「治療との両立が難しかったから」が7割を占めましたが、本人の意思とは異なり「遠回しに離職を促す話をされた」(50代・正社員)、「会社からクビと言われた」(40代・正社員)といった、退職を促されたケースも報告されています。
一方で、がん治療により連続した4日以上の休職をした人は71%に上りましたが、そのうち約半数が半年以内にフルタイム勤務に復帰しています。「テレワークとフレックス出勤を導入した」(30代・正社員)、「在宅ワークにシフトした」(40代・正社員)など、柔軟な働き方の導入が復職を支えているケースも見られました。
調査概要
調査タイトル: がんとお金に関するアンケート調査2025
調査対象: がん経験者で、診断時に勤労していた方719人(有効回答数)
治療開始後1年未満が35%、1年以上5年未満が53%、5年以上が13%
調査期間: 2025年7月24日〜8月14日
調査方法: インターネット調査
調査地域: 全国
調査協力団体: 認定NPO法人キャンサーネットジャパン
出典: 『がん経験者に聞いた「がんとお金」の調査2025』(ライフネット生命調べ)
今回の調査から、がん診断後の「お金の悩み」は治療費だけにとどまらず、通院のための交通費、副作用を抑えるための費用やアピアランスケアなど多岐にわたることが明らかになりました。時代や制度の変化にあわせて、民間保険の定期的な見直しの必要性も浮き彫りになっています。がん経験者の就労を社会全体で支援していく取り組みが、今後ますます重要になってくるでしょう。
詳細なリリース内容はこちら:
https://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/1190748_1707.html














