11月17日「世界早産児デー」に合わせて、11月16日（日）に「世界早産児デー」普及啓発イベントがカメイドクロック（東京都亀戸）にて開催。ゲストとして、モデル・歯科衛生士として活躍し、2023年に第一子となる女の子を早産で出産した静まなみさんが登壇しました。
11月17日「世界早産児デー」は、2008年（平成20年）にヨーロッパのNICU家族会（EFCNI）及び提携している家族会によって制定されました。現在、100カ国以上の国々で、多くの個人や団体が様々な活動やイベントに参加し、早産児やその家族を支援するための取組を行っています。
日本では、約20人に1人のお子さんが、予定日より早く、37週未満で生まれているそうです。早産の場合、健康や将来への不安など抱える悩みが多く、お子さんと御家族に寄り添った、よりきめ細かな支援が大切と言われています。
今回開催された「世界早産児デー」普及啓発イベントでは、医療の現場と当事者双方の視点から、早産と向き合い、家族を支える社会のあり方を考えるトークセッションを実施。基調講演では、慶應義塾大学医学部小児科学教室 専任講師・日本 NICU 家族会機構 代表理事の有光威志先生が登壇し、早産や早産児を取り巻く現状、医療や支援の重要性について説明が行われました。
トークセッションでは、MCより「2023年に第一子となる女の子をご出産なさった歳、1787gという低体重での出産だったとのことです」と、静さんの早産の経験が紹介されました。そして、早産とわかったときの心境を聞かれ、静さんは「32週くらいのときに、突然破水してしまって緊急入院となりました。お腹の赤ちゃんは元気に育っているとのことでしたが、32週での出産となると体重がまだ少ないのと、赤ちゃんの肺の機能がまだ未熟なので、34週くらいまでは点滴を打ちながら様子を見ましょうとなりました」と、当時の状況を説明しました。
さらに「私は点滴の副作用が強く出てしまって、動悸と手の震えが止まらなくなり、かなり自分が想像していた以上にしんどい点滴で、つらい入院生活でした。先生からは赤ちゃんが無事と言われていたんですけど、ずっと不安な気持ちもあり、自分の体調も悪くてしんどかった」ですと、苦しさがにじむ表情で当時の心境を語りました。
出産時の状況について尋ねられた静さんは「出産自体はすごく順調に進んで、産んでから赤ちゃんが大きな声で泣いてくれたので、ホッとしました。でも、赤ちゃんの顔を見せてもらったときに、思っていた以上に小さくて顔の血色もないような真っ白な顔で、早産で産んでしまったという現実味が湧いてきました。生まれてきて嬉しい気持ちもありつつ、これから大丈夫なのかな？という不安もありました」と言い淀みつつ、当時の状況や心境を振り返っていました。
静さんの話を受けて、有光先生は「早産は特別な事情のある一部の人だけに起こるもの」という一般的な誤解に触れました。実際には、早産の約7～8割が医療的介入を伴わない“自然早産”であり、正期産前の陣痛や前期破水など、誰にでも起こり得る事象が背景にあるといいます。
多くのケースでは明確なリスク因子が見られず、原因が特定できないまま早産に至ることも少なくありません。そのため、当事者が自責の念に駆られたり、周囲から誤解を受けたりする現状も紹介されました。有光先生は「早産は特別な理由がなくても起こり得る」と理解することの重要性を強調。また、妊娠を考える人は定期的に産科を受診し、医学の進歩を活かした適切な管理を受けてほしいと呼びかけました。
現在2歳を過ぎた頃という娘さんは、元気にすくすく成長しているそうです。娘さんの成長エピソードを聞かれた静さんは「最近だとできることも増えてきて、テレビの中にいるパパを見て指を指して教えてくれたり、パパが腹筋をしているときに隣でマネしてみたり、毎日毎日できることが増えていて、本当に驚かされています」と、夫の武田真治さんと娘さんの心温まるエピソードを笑顔で語っていました。
イベント会場内では、早産や家族支援に関する理解を深める展示・体験コーナーも併設されていて、当事者の声や都の取組を紹介するパネル展示のほか、NICU（新生児集中治療室）を再現したコーナーや、赤ちゃん人形を抱っこできる体験コーナーなどが設置されていました。
展示と講演のどちらにもお子さん連れの方々が数多く訪れ、早産について理解を深めるいい機会となっていました。
