インバウンド需要の回復とともに、深刻な人手不足が続く宿泊業界。とくに日本ならではの「おもてなし」を体現する存在である仲居は、確保が年々難しくなっています。そんな課題に向き合う新たな試みとして、仲居の魅力を“仕事”ではなく“文化”として発信する採用プロジェクト「仲居募集 Looking for NAKAI」がスタートしました。本プロジェクトでは、仲居の所作や佇まいに宿る日本のホスピタリティを、ビジュアルを通して直感的に伝えることを重視。採用広告の枠を超え、日本文化そのものを表現するポスター制作が行われています。

インバウンド回復で浮き彫りになる、宿泊業界の人材不足
観光庁の調査によると、三大都市圏でも人材不足を感じていない宿泊施設はわずか10.3%、地方部では4.6%にとどまっています。なかでも仲居は、接客・食事対応・所作・言語対応など多くの役割を担う重要な存在でありながら、担い手不足が顕著な職種です。一方で、訪日外国人観光客の増加により、語学力や異文化理解を活かせる現場でもあり、国籍やバックグラウンドを問わず活躍の可能性が広がっています。今回のプロジェクトは、こうした新しい担い手に向けて「仲居」という仕事の本質的な魅力を伝えることを目的としています。
所作の美を切り取る。文化としての「仲居」を表現したポスター
制作されたポスターでは、仲居を広角レンズで捉え、姿勢や身体の動きにフォーカス。規律や品格といった“静”の美しさと、動作の連なりから生まれる“動”の要素を同時に表現しています。背景には日本の伝統色である赤を採用し、日本語タイポグラフィを造形的に配置。言語に依存せず、視覚的に日本のホスピタリティを感じられるデザインとなっています。採用情報でありながら、文化ポスターとして成立する点も印象的です。撮影は、新潟県越後湯沢にある和風旅館で実施。実際の現場を舞台にすることで、仲居という仕事のリアルな空気感も伝えています。
仲居は、スキルと経験が積み重なる仕事
仲居に対して「格式が高そう」「着物での勤務が不安」といったイメージを持つ人も少なくありません。しかし、実際に働いた人からは「短時間で着付けができるようになった」「自然と美しい所作を意識するようになった」といった前向きな声も多く寄せられています。接客スキルはもちろん、多国籍な宿泊客と接することで語学力を活かせる点も魅力のひとつ。今回のプロジェクトでは、海外人材や多言語対応が可能な人材も積極的に歓迎しています。
ポスター掲出で、より多くの人へアプローチ
「仲居募集 Looking for NAKAI」の取り組みは、今後、賛同する宿泊施設でのポスター掲出も予定されています。採用を目的としながらも、仲居という存在の多面的な魅力を知るきっかけとして、業界内外への波及が期待されます。

関連調査資料:
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001891438.pdf
仲居という選択肢を、未来へつなぐために
人手不足という課題に対し、単なる求人ではなく「文化的価値」として仕事を再定義する本プロジェクト。仲居という職業が、伝統に参加するための開かれた選択肢として、次の世代へと受け継がれていくきっかけになりそうです。日本の宿泊業界が持つ本来の魅力を、改めて見つめ直す動きとしても注目したい取り組みです。
