公益財団法人東京都歴史文化財団が運営する江戸東京たてもの園が3月27日、トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』を開催。

昨年度に制作した復元建造物・子宝湯の3Dモデルや、4月25日に公開予定であるWebアプリケーション「江戸東京たてもの園 鑑賞ナビ(通称:たてもの園ナビ)」について紹介しました。

「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」

画像: 「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」

東京都が1993年に東京都江戸東京博物館(東京都墨田区)の分館として開設した江戸東京たてもの園。現地保存が不可能な文化的に価値の高い歴史的建造物を移築し、復元・保存・展示を通じて、貴重な文化遺産として次代に継承することを目指しています。

その江戸東京たてもの園は今、東京都が推進する「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」の一環として、復元建造物の3Dデータ化や、都立の文化施設として初導入となる屋外鑑賞支援Webアプリケーションの開発を進めています。

「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」は、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都の文化施設が有する収蔵品や、各館の展覧会・公演等の活動等の文化資源をデジタル化して記録・保存する とともに、多様な形態での鑑賞体験を提供するプロジェクト。東京文化戦略2030の戦略2の推進プロジェクトでもあるこのプロジェクトは、東京都の基本政策「未来の東京」戦略「戦略15文化・エンターテインメント都市戦略」および「スマート東京実施戦略」の「取組方針の柱2公共施設や都民サービスのデジタルシフト」にも対応しています。

プロジェクトでは、文化資源のオンライン公開、最先端技術による新しい鑑賞体験の創出と、各館の情報環境整備を一体的に推進し「誰もが、いつでも、どこでも芸術文化を楽しめる環境」を実現していきます。

トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』

今回トークイベントが行われたのは、江戸東京たてもの園内”子宝湯”。メディア関係者だけでなく一般参加者にも公開され、ゲストはたてものの魅力を感じながら参加することができました。

画像1: トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』

まず最初のセッションでは、株式会社gluonの瀬賀未久氏が登壇。復元建造物「子宝湯」3Dデータの活用について紹介し、次元の拡張、情報や物語の拡張、視点の拡張、ユーザーの拡張、この4つの"拡張"ができることが大きなメリットだと語りました。

今後はこうした技術を利用しながら、VRツアーなども予定しているそうです。

画像2: トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』

続いて江戸東京たてもの園 学芸員の生田真菜氏、株式会社DNPコミュニケーションデザイン兼大日本印刷株式会社ABセンターの佐藤凌也氏が登壇。Webアプリケーション「江戸東京たてもの園鑑賞ナビ」の開発について語りました。

画像3: トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』

佐藤さんによると、「江戸東京たてもの園鑑賞ナビ」の魅力は、webアプリケーションなのでアプリのダウンロードが不要な点や、普段気付きにくいポイントたてもの園のみどころがわかるようになっている点だとのこと。また、カフェなどのメニューやトイレ、階段の位置などバリアフリーの情報もアプリ内で確認できるようになっており、さらに画面上に自分のいる場所が表示されるので見たい建物への移動がしやすいなど「アプリを利用することで園内の散策がこれまでより便利になる」とアピールしました。

また生田さんは学芸員として、アプリに掲載する情報について「長すぎても見るのが大変、短くても物足りないというところでボリュームにもこだわった」そう。厳選された内容にも注目です。

そのほか「江戸東京たてもの園鑑賞ナビ」ではAR機能で実際には展示できない建物内部での生活の様子など見ることもできるようになっており、園内の散策がより楽しくなる工夫がたくさん盛り込まれています。

画像4: トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』

イベントの最後は、「復元建造物を観察する—建築×テクノロジー」をテーマに東京都江戸東京博物館 館長の藤森照信氏、江戸東京たてもの園 園長 市川寛明氏、そしてアーツカウンシル東京の小林愛恵氏によるスペシャルトークセッションが行われました。

このイベントが行われた、復元建造物である子宝湯はもともと、足立区千住元町にあった東京型銭湯。東京型銭湯は、1923年の関東大震災以降に神社仏閣の工法で建てられた豪華な外観の銭湯で、これを後世にも残すため、江戸東京たてもの園に移築されました。

画像5: トークイベント 『復元建造物を観察する—建築×テクノロジー』

日本で大きく栄えた銭湯の文化ですが、いま東京からは毎月1件ずつ銭湯が減っている状況だそうです。

今回進められるたてものや文化のデジタル化について市川園長は、「これからの建物の在り方についても考える機会になった」と今後への大きな可能性を感じた様子。

藤森館長は、情報量はやはり実物には敵わないとし、実際に見にきてもらいたいという思いを見せつつも、「デジタル化によって(この場に来ることのできない人など)多くの人に知ってもらえたりするのはいいこと」だと話していました。

また小林さんは、館長と打ち合わせをしたときの「建物は入れ物だから」という言葉が印象的だったといい、それにまつわる道具など全てが"文化"なのだというお話をシェアしてくれました。

市川園長は最後に、「デジタルと現実をどう融合させていくかに今後の可能性がある」とコメントし、トークを締めくくりました。

江戸東京たてもの園 復元建造物”3D Digital Archive Project”

東京都歴史文化財団は、東京都が有する文化財を後世に継承することを目的に、江戸東京たてもの園で収蔵してい る復元建造物「子宝湯」の3Dデータ化に取り組んでいます。

子宝湯は、延べ面積283.85m²、高さ9.75mの巨大な建造物です。土木や測量分野で活用されるレーザースキャンや、写真の質感まで再現できるフォトグラメトリ技術、広域や上空から撮影を行うドローンによる測量という、複数のスキャン技術とデータを組み合わせて再現されました。 今回制作された3Dデータは、イベント時などに配布するカードで子宝湯が出現するARコンテンツを通して視聴でき、普段見ることのできない場所やアングルを楽しむことができます。

今後は、新たな鑑賞体験を提供するオンライン展覧会も予定とのことなので、ぜひご期待ください。

4月25日(木)公開予定!「江戸東京たてもの園鑑賞ナビ(通称:たてもの園ナビ)」

江戸東京たてもの園は敷地面積約7haを有し、東西の長さは500m以上に及びます。 園内には30棟の歴史的建造物が移築・復元されていますが、広大さゆえ、来園者の方々からは、「どのような順番で回ったらいいのか」「時間がないので見どころだけ知りたい」といった意見・要望がありました。

そこで、これらに応えるべく開発を進められたのが、鑑賞支援Webアプリケーション「江戸東京たてもの園鑑賞ナビ」。都立の文化施設として、屋外での鑑賞支援Webアプリの導入は初。近年、導入が進められているデジタル技術を駆使して、園内の復元建造物をわかりやすく案内します。

4月25日の公開をお楽しみに。

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