4月24日、東京都内にて、日本肥満学会が提唱した新たな症候群「女性の低体重・低栄養症候群」(Female Underweight / Undernutrition Syndrome、以下FUS)に関するプレスセミナーが行われました。

FUSに含まれる主な疾患には、低栄養・体組成の異常・性ホルモンの異常・骨代謝の異常のほか、循環・血液の異常、そして精神・神経・全身症状が挙げられます。セミナーでは、閉経前の成人女性における低体重や低栄養による健康課題について、問題点や対策が紹介されました。

日本は痩せた女性が多い!痩せがもたらす女性の健康リスク

画像1: 日本は痩せた女性が多い!痩せがもたらす女性の健康リスク

現在、日本の20代女性の約2割が低体重(BMI<18.5kg/m2)であり、先進国の中でも特に高い割合となっています。日本では「痩せ=美」という価値観が深く浸透していますが、実は美容大国として知られ痩せ率が高そうなイメージの韓国も、日本の半分程度の割合だそう。セミナーでは、低体重の割合は1980年代から増加し続け、1990年代以降は20代の20-25%が低体重に該当し、その原因がダイエットブームの定着であることが指摘されました。

画像2: 日本は痩せた女性が多い!痩せがもたらす女性の健康リスク

マイウェルボディ協議会・代表幹事、順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・スポートロジー/代謝内分泌内科学教授の田村好史氏は、「痩せていると糖尿病になりやすいという疫学がある。」と言い、その原因を探索する研究を6年ほど前から進めていると話しました。肥満が糖尿病のリスクを増加することは知られていますが、痩せている方も実は同じぐらい、若しくは、それよりもリスクが高いのだそう。さらに、「痩せは糖尿病に関連する血糖値だけではなく、骨の問題や月経不順、不妊の原因など様々な疾患の原因となっており、そして高齢になると寝たきりの原因にもなる。骨密度は10代でピークとなり、閉経ぐらいまで横ばいとなり、閉経後に落ちてくる、この骨密度を増やすものとしてしっかり栄養をとって体重を増やす、運動するというのが重要である。」と説明しました。

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実際に、国もこの健康課題を問題視しており、若年女性の痩せ対策、骨粗鬆症検診の受診率の向上を目指しています。これにより、女性の低体重/低栄養の疾患概念確立を目指したワーキンググループが設立され、「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」が発表・提唱されるに至りました。

「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の疾患概念の定義と目的

低体重や低栄養は、骨や月経の問題や、ビタミン不足・鉄不足での貧血・代謝異常・糖尿病になりやすくなる、などの健康リスクをもたらします。さらには倦怠感や不安・冷え性、肌質・髪質の低下などにも関連するということが分かっているそうです。

画像: 「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の疾患概念の定義と目的

田村氏は、疾患概念確立の定義を「低体重または低栄養の状態を背景として、それを原因とした疾患・症状・兆候を合併している状態」と説明し、さらに「日々感じているような体調の良し悪し、あるいは病名、こういうものは実はこの氷山の上の部分だけを見ているものであって、その容体あるいは原因は低体重や低栄養にある。」と述べました。

そして、この氷山の上部に出てきたものばかりを1つずつ対処していくのではなく、「サプリを飲むとか、肌は(ケア用品を)塗ってみるとか、薬を飲むとか、色々な対策が考えられるわけですけれども、この氷山の水面下の部分、ここに直接アプローチする。しっかり食べる・運動する、そういうことによって氷が溶けていって全体が沈んでいき、この上部の症状は同時におおむね改善するのではないか。」と解説しました。

「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の原因は?

画像1: 「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の原因は?

FUSの原因としては、以下のような要因が考えられます

●体質的痩せ
●SNS、ファッション誌などのメディアの影響●社会経済的要因・貧困などによる低栄養

中でも特に注目されているのは、メディアの影響による「痩せている方が良い」という痩身願望の高まり。東京・大阪・和歌山の小学生195名を対象としたアンケート調査では、小学校1年生の女児では約3分の1が痩せたいと思うと回答し、6年生になると約半数が痩せたいと回答したとのこと。

田村氏は女性のボディイメージと健康改善のための研究開発を進めており、「痩せ願望の形成は、周りからの体型に関する指摘による痩せに対する価値観、メディアの影響、友人の痩せ指向などがある。」と説明し、『ボディイメージ教育として、自分自身や他者の多様な美しさを尊重すること』、『社会的ムーブメントとしても、多様な美の理解と前向きな自己表現を楽しめる社会づくり』、『FUS健診率の向上』の3つの推進を提言しました。そしてFUSの現状を変えていくために、設立されたのが『マイウェルボディ協議会』と述べました。

画像2: 「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の原因は?

マイウェルボディ協議会は、身体的にも精神的にも、そして社会的にも健康であることを目指して活動しています。
知識の変化、社会概念の変化を通して、医学的に適正な体型を自分の意志で選択できる世界を作ることを目指しており、単に「痩せがダメ」ではなく周りの人や情報に流されることなく、自分の意志で自分の体型を選択できる社会を目標としています。

画像3: 「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)」の原因は?

まとめ

昨今、SNSの普及により他者と比較する機会や時間が圧倒的に増え、「痩せていること=美・良い」という価値観が根付いていることを実感する方は多いのではないでしょうか。痩せることだけを理想とせず、誰もが健康を害することなく、自分らしく満たされた状態を選択できる社会、認め合える社会になっていくといいですね。

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