
ポータブル電源・ソーラーパネルの世界的リーディングカンパニーJackery(ジャクリ)の日本法人である株式会社Jackery Japanは、「"たのしい"で、そなえる。」をコンセプトにはじめた防災プロジェクト「Jackery PLAY PARK」を展開しています。本イベントではプロジェクトの説明と、能登における被災地支援活動の取り組みである“美味しい非常食”「KNOTOメシ」の試食会が行われました。

「Jackery PLAY PARK」は2024年に発生した能登半島地震以降、Jackeryがインフラ不足の施設や避難所、住居へのポータブル電源やソーラーパネルの無償提供などの被災地支援を行う中で様々な課題に出会い、防災の形をアップデートする必要を感じたことで発足しました。モノ支援の先にあるコト支援を展開する予定で、「防災=いざという時の備え」ではなく、普段の生活が楽しく豊かになること、人々の交流の場所があることが防災につながるという考えをベースに、「“たのしい“で、そなえる。」を実践できるアイディアを発信しています。


株式会社Jackery Japan マーケティング本部 マーケティング第一部 コンテンツディレクター/防災士の鈴木広介氏は、「被災地で話を聞くと『ご飯の時間は楽しみだけど、非常食はあまり美味しくない』『またアレを食べるのか…と気持ちが落ち込む』という声があがっていました。それでプロジェクト第一弾として、美味しい非常食の開発を支援することに致しました。『KNOTOメシ』の由来は、能登と他の地域、今までと未来を結ぶという願いを込めて、“結ぶ”の英語knot(ノット)の表記でノト(能登)と読みます」と説明しました。

Jackeryが商品開発を依頼したのは、「楽しい食卓づくり」をコンセプトに、お腹を満たすだけの食ではなく、人と人を繋ぐ文化のある食の提供を目指すクラフトフードブランド「ONE POT WONDER」です。同社のBench Sasaki Susumu氏は、「KNOTOメシ」には「被災から得た知見を付加価値に変えて、新しい収益を能登に作ること」「ワクワクする、能登から発信する新しい非常食」という展望があると話しました。さらに、「能登には1000年を超える発酵食品の文化があり、能登町ではイカの魚醤イシリが有名です。それにインスパイアされ、同じく魚醤のナンプラーを使ったタイのトムヤムクンを作ろうとなり、“ノトムヤムクン”の開発がはじまりました」と明かしました。「トムヤムクンは酸っぱ辛いですが、ノトムヤムクンは酢っぱ辛くありません。イシリの旨味と鶏ガラスープをベースにレモングラスを効かせ、プチトマトも入れて、子供でも高齢者の方でも食べやすい味にしました。エビはオリーブオイルと一緒に煮込んでいるので、プリプリに見えますが溶けるような食感です」と紹介しました。


パッケージを手掛けたのは能登町定住促進協議会/デザイナーの池崎万優氏です。Bench氏は、「食品のパッケージとは思えない、BEAMSとかUNITED ARROWSに置いてあっても目を引くようなデザインにしてもらいました」と自信を見せました。そして、「全国のセレクトショップや人気のイベントに出店して販売し、能登にいてもデザインや映像の仕事など、できることがあるというワクワクを伝え、能登の関係人口を増やしていきたいです。能登の道が綺麗になり、住むところがあり、人が移り住む地域になる。そんな本当の意味での復興の一端になれればと思います」と期待を寄せました。
防災士研修センターの玉田太郎氏と地域活性ファシリテーターで元中野議会議長の出井良輔氏によるトークセッションも行われました。玉田氏は、「ライフラインの備蓄の話になったときに、ほとんどの人が『水道はペットボトル、ガスはカセットコンロやガスボンベ、電気は懐中電灯やLEDランプ』と答えます。電気は“電力”ではなく“灯り”になるのです。しかし、大災害が起きたときの政府の基本方針は、避難所に直行するのではなく在宅避難です。だからこそ電力の重大さに着目してほしい」と訴えていました。

出井氏は、「地域防災住民組織である防災会の倉庫には、防災資機材や備蓄物資を配備していますが、ほとんどの方がそれを使えない状況にあります。防災訓練に参加している人でも、いざという時にそれらを適切に使える人がどれくらいいるのか疑問です。参加していない人はもっと難しいと思います。これは大きな社会課題で、常日頃からそういったものを身近に置いたり触れたりして、使える状態にしておくことが必要です」と呼びかけました。
だからこそ大事なのはJackeryが掲げる「"たのしい"で、そなえる。」です。玉田氏は、「中野では盆踊りがブームで、イベント会場ではJackeryさんのポータブル電源やソーラーパネルからの電力を使い、かき氷やみぞれハイボールなどを作って販売しています。このように人が集まる場所でポータブル電源というものがあることを広め、それをどういう風に使えるのかチャレンジすることで、災害時だけでなく普段から楽しく使えるようになると思います」と語りました。
近年、ライフラインが止まったと仮定し、ポータブル電源だけを使って家の中でキャンプ体験をして自由研究として発表する子供たちが増えているそうです。出井氏は、「ポータブル電源はキャンプやバーベキューなどで楽しみながら使えるし、これからの防災訓練の一つに、ポータブル電源を使って非常時に備えることを教えるのもいいのではないかと思います」と提案しました。さらに、「災害そのもので亡くなる方より、その後の被災生活で亡くなる災害関連死が非常に増えています。ポータブル電源は社会問題でもある災害関連死の率を下げることにも繋がる、“命を守る電源”でもあるのではないか」と、生死に関わる重要な役割を担うことにも言及しました。


この日は、能登町長の吉田義法氏、能登町定住促進協議会の森進之介氏、デザイナーの池崎氏が能都町からリモートで参加しました。自らが体験した能登半島地震の惨状や、夏祭りが復活した今、「KNOTOメシ」誕生の喜びなどが語られました。

試食会では、「KNOTOメシ」ノトムヤムクンが能登のアイデンティティでもある“輪島塗”の器に盛られて提供されました。見て、聞いて、知り、味わう…そんな能登を体感できるイベントになりました。


