かつて海軍の一大拠点として発展し、現在もものづくりの街として歩みを続ける広島・呉。関東圏では尾道や宮島に比べ知名度が高いとは言えませんが、そのどこか懐かしいレトロな街並みや文化には一見の価値があります。
戦艦「大和」を生んだこの街には、赤煉瓦の建造物や入船山記念館など軍港としての歴史を感じさせる面影が残っているほか、60年以上続く老舗の喫茶店や夜になると現れる屋台街など、戦後に呉の人々とともに歩んできたお店が数多くあります。そしてさらに足を伸ばせば、瀬戸内の多島美のなかに、重要伝統的建造物群が建ち並ぶ潮待ちの美しい港町・御手洗も。
今回は、そんなディープで歴史あるまち、呉の魅力をご紹介します。
呉の駅から車で1時間、美しい港町・御手洗へ

呉に着いたらまず足を運びたいのが、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された港町・御手洗(みたらい)。江戸時代、潮待ちや風待ちの港町として栄えた御手洗には、商家、茶屋、船宿、住宅、神社、寺院などが混在し、大小の道が網の目のように巡っています。17世紀の中頃に形成された御手洗は、江戸時代から昭和初期にかけて、西日本有数の花街として栄えました。多くの人でにぎわった町も、令和の今では人口150人を切る静かなまちになっています。

ゆっくりとまちを歩きながら、江戸の昔に思いを馳せたり、船宿だった建物を改装した海辺の古民家カフェ「船宿カフェ 若長」で外を眺めながら瀬戸内の風を感じたり。映画「ドライブ・マイ・カー」の重要なシーンの撮影に使われた1日1組限定の宿「閑月庵 新豊」で1泊するのもおすすめです。日常から離れた静かな島時間に、ゆったりと心洗われるひと時を過ごすことができるでしょう。
夕日とラッパの音に包まれる、呉ならではのクルーズ

呉と言えば、やはり戦艦「大和」のイメージがある人も多いはず。今もこの港では海軍自衛隊が昼夜問わず日本を守るために活躍しており、ファンの間では言わずと知れた場所ですが、女性や若い人の中にはあまり関心がないという人もいるかもしれません。そんな人にこそ参加して欲しいのが、この夕呉クルーズ。最初は「綺麗な夕陽が見れるかも」、という軽い気持ちで乗船してみるのでもいいと思います。

船に乗り込み、ガイドさんの説明の通りにあたりを見回すと見えてくるのは、戦艦や潜水艦、そしてそこで働く自衛隊員たちの姿です。戦争が行われていた時代、日本の人々がここでどんな風に戦ったのか、そして海軍自衛隊が今、どんな思いで日本を守ってくれているのか。40分間のクルーズでそれを知ると、きっと今ある平和な日々に感謝するはずです。
呉のまちは夜も楽しい!

旅行でローカルな場所へ行くと、夕方を過ぎたらあちこちお店が閉まってしまう、ご飯を食べる場所に困る、することがなくてむしろ普段より早く寝ることになった、なんて経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。
呉に来たら、その心配は無用!一晩では足りないくらい魅力的なナイトスポットがたくさんあります。

晩御飯におすすめなのは、鶏皮を独特の味噌で煮込む呉名物「みそだき」発祥のお店「本家鳥好」。焼き鳥、鳥刺しなど様々な鳥料理や、瀬戸内・広島ならではの豊かな食とお酒を地元で長く愛される味と活気ある店内の雰囲気とともに堪能することができます。かなりの人気で直前では予約が取れないこともあるので、気になる方は早めの予約を。

おいしい鳥料理を堪能したら、2軒目は蔵本通りの屋台街へ。夜になるといつの間にか立ち並んでいる屋台では、ラーメン、焼きそばやおでんなどの屋台めしとともに夜の呉を楽しめます。52年続く、2代目店主が切り盛りする「富士さん」のメニューはどれも絶品。

焼きそばが人気のようですが、ラーメンもラーメン特集で取り上げられるほどの本格派です。一見コワモテ、かと思いきや、気さくな店主さんとのおしゃべりも楽しく、呉のまちがより好きになります。

お酒にグルメに大満足、ラーメンで締めたし、とここで帰ってしまうのは勿体無い!呉には平日でも深夜まで営業しているディープなお店がいくつもあります。なかでも注目は、レトロゲームや懐かしの駄菓子が並ぶ、大人心をくすぐる秘密基地のような隠れ家BAR「駄菓子横町三丁目」。

呉の名物店主、ヤスイさんが切り盛りするこのお店は、なんと駄菓子が食べ放題!ですが、魅力はそれだけではありません。ヤスイさんの人柄あってか、お酒を飲んでいるうちにはじめましてとは思えないほどお客さん同士も仲良くなれちゃう。そんな一体感に、帰りたくなくなるほど楽しいひと時を過ごすことができます。
名物シェフのいるホテルで一泊、モーニングも充実の呉の旅

呉観光特使・コワモテ料理長として知られる鷹林勲氏がホテル内の料理長を務めることでも有名なクレイトンベイホテルからは、美しい瀬戸内海を望むことができます。客室も広くロビーも豪華な高級感のあるホテルですが、比較的リーズナブルに宿泊できるところも魅力。綺麗な朝焼けで気持ち良く目覚めることができます。

呉のまちは夜が楽しい、とご紹介しましたが、実は呉は、夜だけでなく朝楽しめるスポットも充実しています。名古屋と並び、モーニングの営業をしているお店がとても多い広島。呉でも朝7時頃から、様々なモーニングを楽しむことができます。

テーブルや椅子、レトロな照明など、創業時から受け継がれるインテリアが印象的な純喫茶「珈琲館飛鳥」では、サンドイッチやトーストについてくるのがなんとスープではなく味噌汁!最初は合うのかなと少し疑っていましたが、これが意外といけるんです。前日のお酒が少し残っている、という人にもピッタリかもしれません。
レトロな街並みと港の風景を巡る、呉のまち歩き

続いて朝のお散歩にもおすすめなのが、明治時代の洋館建築が今も残る、レトロな赤れんがが象徴的な「入船山記念館」。旧呉鎮守府司令長官官舎をはじめ、歴史的建造物が織りなす重厚な雰囲気の中で、呉が歩んできた軍港都市としての歴史や文化を感じることができます。

洋風建築と和風建築がつながった珍しい作りや、洋館の壁紙として使われている美しい金唐紙にも注目です。

入船山記念館までは、予約をすれば定期運行しているレトロな「ボンネットバス」で行くことができるので、ぜひこのバスが走っている日に合わせて訪れてみてください。

そして最後におすすめするのは、旧海軍工廠時代のレトロなレンガ建造物や、当時のまま残る大型クレーンが海沿いにずらりと並ぶ散策路「アレイからすこじま」。潮風を感じながらここを歩けば、かつての軍港の面影と歴史情緒をゆったりと感じることができます。この場所から見える、たくさんの大きな軍艦や船工場が並ぶ様子は、私たちにとっては非日常ですが、呉の人たちにとっては日常です。普段戦争や平和について考えることはなかなかないかもしれませんが、ここに足を運べばきっと、それぞれに何か感じることがあるでしょう。
もちろん、戦争や平和を考えるきっかけになるだけではなく、昭和の面影を残す個人商店や老舗が軒を連ねるレトロな商店街「れんが通り」や、レトロかわいいデザインが目を引く老舗パン屋「メロンパン本店」、大きな窓いっぱいに呉の港町の景色が広がるフォトジェニックなカフェ「さんばしや」など、今回紹介した場所の他にも港町ならではのゆったりとした時間を過ごせる魅力的なスポットが呉にはまだまだたくさんあります。
広島を訪れる際は、尾道や宮島、そして広島市内だけでなく、ノスタルジックで趣深い呉のまちにもぜひ、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
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