10月は「ピンクリボン(乳がん)月間」。乳がんは、特に女性なら誰もがなる可能性のあるがんです。知っているようで知らない乳がん。このがんの啓発に取り組む支援団体、「アッピーチ」の取り組みを取材しました。

「第3回 ピンクリボンde上を向いて!」全国13カ所をピンク色にライトアップ

画像: 「第3回 ピンクリボンde上を向いて!」全国13カ所をピンク色にライトアップ

ピンクリボン月間であるこの10月、「難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ実行委員会」は一般の方への難治性乳がんの啓発を目的とし、広島県の4つのランドマーク「広島城」、「厳島神社五重塔」、「福山すこやかセンター」、「早瀬大橋」をはじめとした全国13カ所をピンク色にライトアップするイベント「第3回 ピンクリボンde上を向いて!」を実施しました。

このような取り組みにより、ランドマークがピンク色になっているのを見ると、「乳がんの啓発イベントだ」と気付く人も増えてきたかもしれません。

さまざまな乳がんの啓発に取り組む「アッピーチ」

2019年に乳がんと診断された人は97,812人。サバイバー5年相対生存率は90.5%となっており、他のがん種と比較して治療後の予後が良いとされています。しかし、治療が発展を続ける一方で、治療の選択肢が限られている、あるいは、進行・再発リスクが高い「難治性の乳がん」と闘う人も少なくありません。

また、乳がん全般への理解は高まってきているものの、乳がんには種類がいろいろあること、それにより治療の方向性や治療選択肢が変わる、といった知識については思いのほか周知されておらず、「難治性乳がん」に対する理解も充分とは言えません。

「アッピーチ」は、乳がんに関する正しい知識の普及を通して「難治性乳がん」への理解を深めることを目的に、難治性乳がん患者を中心に乳がん患者支援団体はもちろんのこと、他臓器のがんの支援団体とも連携し、2021年に創設されました。

知っていますか?難治性乳がん

「乳がん」には、大きく分けて、3つのタイプがあります。

ホルモン療法が行われ、他のタイプの乳がんに比べると予後が良好といわれている「ホルモン受容体陽性乳がん」、HER2 タンパクを標的とする抗HER2療法が使われ、画期的な分子標的薬の登場により、近年予後が大きく改善されている「HER2(ハーツー)陽性乳がん」、そして「トリプルネガティブ乳がん」です。

「トリプルネガティブ乳がん」は、ホルモン受容体であるエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体、そしてHER2(ハーツー)タンパクの3つがいずれも存在せず、効果が期待できる薬剤は副作用の強い化学療法剤のみです。

また、乳がん全体の約10%を占めるトリプルネガティブ乳がんは、他のタイプの乳がんと比較して、再発率が高く、再発後は急速に進行し、生存率も低いと言われています。

トリプルネガティブ乳がんの患者さんからは、多くの再発への不安が寄せられており、再発患者さんからは 薬の選択肢が少ないことへの不安が寄せられています。近年、PARP阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などの分子標的薬が相次いで登場し、選択肢は広がっているとはいえ、トリプルネガティブ乳がん患者の状況はまだまだ改善されてはいません。

また、乳がんの5%~10%は遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられており、中で最も多くの割合を占めるのが遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。HBOCの方は 、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんなどの発症リスクが高いことがわかっています。

難治性乳がん患者さんを応援する「桃凛(ももり)インスタキャンペーン」

アッピーチの活動には、昨年に引き続き実施した今回のライトアップイベントのほか、製薬会社ギリアド・サイエンシズ株式会社と合同で行っている「桃凛(ももり)インスタキャンペーン」”も。

このキャンペーンの目的は、公募により選ばれたアンバサダー(難治性乳がん患者さん、そのご家族や友人および患者さんをサポートする方々)が中心となり、インスタグラ ムへの投稿を通じてトリプルネガティブ乳がん、再発ハイリスク乳がん、再発・進行性乳がんなどの難治性乳がんについて、正しい知識の周知と理解を深めることです。アンバサ ダーは2023年初旬に選ばれ、同5月末からインスタグラムへの投稿を開始し、これまでに400以上の投稿を行っています。それらの投稿にはアッピーチのイメージキャラクターの「桃凛」のフィギュアが常に登場しています。

投稿例

画像: 投稿例

アンバサダーのわにわにです。 トリプルネガディブ乳がんのサバイバーです。 今年も梅シロップが出来ました!青梅が出回ると張り切って梅仕事をしたくなります。 梅味噌、梅酒、梅シロップが定番の商品(笑) 毎年、お友だちが楽しみにしています。今年もたくさんお嫁?お婿?に行きました。 乳がんの治療中は「今年で最後かも...。」と思ったりもしましたが、気がつけばそれから七年!素晴らしい!来年も無事に作れますように。

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がんサバイバー、中川さんからのメッセージ

実は、アッピーチ実行委員会代表の中川圭さんも乳がんサバイバーの1人。中川さんは42歳の時に、乳がんを罹患して、右乳房温存手術と放射線治療を受けました。

ところがその1年半後、がんが肺などに多数転移していることがわかりました。当時は余命半年と言われ、最初使った薬は効かずに進行してしまったそうです。

しかし、新しく出た薬を使うと効果があり、 その後20年以上たった今も治療を続けながら元気に活動されています。

そんな中川さんは、「乳がんは早期発見することが大切で、そのためにも乳がん検診を受けてほしいです。しかし、早期に発見しても、適切な治療をしないと治ることが難しいタイプがあることを理解してください。自分自身や大切な人の命を守るためには、乳がんを正しく理解すること。そして、難治性乳がんへの理解を深めること。現在、乳がんと闘っている患者さんは、多くの仲間がいることを知ってください。決してあなたはひとりではありません。」と語ってくれました。

アッピーチの活動が乳がん患者さんやその周りの方々へはもちろん、1人でも多くの方に届いて欲しいと思います。

桃凛インスタキャンペーン概要

投稿者
・アンバサダー(難治性乳がん患者さん、ご家族、友人、患者さんをサポートする方々)15名
・アッピーチ事務局

アンバサダー選考委員(五十音順)
• 岩田 広治 先生 (愛知県がんセンター 副院長 乳腺科部部長)
• 大石 敏実 (難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ(UPEACH) 実行委員会役員)
• 大野 真司 先生 (がん研有明病院 副院長、乳腺センター長)
• 中川 圭 (難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ(UPEACH) 実行委員会役員代表)
• 中村 清吾 先生 (昭和大学臨床ゲノム研究所所長、昭和大学病院ブレストセンター長(特任教授))

アカウント
@momorichan_campaign

難治性乳がんサポートプロジェクトアッピーチ(UPEACH)

アッピーチは、乳がんに関する正しい知識を普及することにより、トリプルネガティブ乳 がん、進行・再発乳がんなどの難治性乳がんの正しい知識を知ってもらい、理解を深めることを目的としたさまざまな啓発活動を行っています。 そのために、難治性乳がん患者を中心に乳がん患者支援団体はもちろんのこと、他臓器の がんの支援団体とも連携し、広く市民に呼びかけ、解決すべき課題について、医療者、行政、医療関係企業などを含めたさまざまなステークホルダーと協業して広く問題提起し、 問題解決に取り組むために有志の患者・支援者とともに立ち上げられた団体です。

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