夫婦や事実婚といった2人が「ペアローン」と呼ばれる住宅ローンを利用し自身のマイホームを買うケースが増えているそうです。「ペアローン」とは二人が連帯して借り入れるローンのこと。世帯主1人で借りる場合と比べて借入総額を増やしやすいとされ、若い世代や新しい価値観を持った方を中心に徐々に認知が広がっています。一方で、借りすぎて返済に困ったり、どちらかが休業したり、離婚になった場合の対応がかなり困難になるなど不測の事態に備えておく必要もありそうです。

借りすぎて返済に困ったり、どちらかが休業したり、今後離婚になった場合の対応がかなり困難になるなど不測の事態に備えておく必要もありそうです。

「ペアローン」を組んだまま離婚をした方は、適切に対処しないと、連帯保証人としての責任が残り続けたり、財産分与が複雑化したりするリスクがあります。本記事では、ペアローンが残っている状態で離婚した場合の対処法について解説していきます。

本記事に登場するA子さんは30代の女性、最近離婚しました。
しかし、以前「ペアローン」で購入したマンションに元夫と義母が住み続けており、A子さん一人がローンの支払いを続けている状況です。A子さんは東京在住で、不動産や法律の知識があまりないため、この状況をどのように改善すべきか悩んでいます…。

そこで今回、親しい不動産会社のBさんに色々アドバイスを求めました。

A子さん

Bさん

画像1: ペアローンが残ったままの離婚でトラブルに!対処方法にはどんなものがある?

最近離婚をしたのですが、ペアローンを組んだマンションに元夫と義母が住み続けてしまっています。でも、ローンの支払いは変わらず必要で……。どうしたらいいのでしょう?

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それは大変な状況ですね。ペアローンが残ったまま離婚すると、こういった問題が起きやすいんです。

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そうなの?他にどんな問題があるのですか?

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例えば、連帯保証人としての責任が残ったり、財産分与が複雑になったりします。適切に対処しないと、長期的に大きな負担になる可能性があります。

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えー!怖いわ。私、今のままじゃまずいってことですか?

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心配しないでください!対処法はあります。
今日は、A子さんのような状況での問題点と対処法について詳しくお話しします。

ペアローンが残っているのに離婚してしまった場合のリスクとは?

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まずは、ペアローンが残った状態で離婚してしまった場合のリスクについてみていきましょう。

▼連帯保証人としての責任が残る

ペアローンを組んだ場合、離婚後も連帯保証人としての責任は継続します。これは重要なリスクの1つです。元夫がローンの返済を滞納した場合、金融機関は連帯保証人である他方に全額の返済を求める可能性があります。最悪の場合、給与や財産の差押え対象になりかねません。また、元配偶者の返済遅延や滞納により、自身の信用情報に傷がつく可能性もあります。これは将来的な借入れや新たな住宅ローンの組み直しに影響を与えかねないため、注意が必要です。このリスクを回避するためには、離婚時に連帯保証人の解除を金融機関に申し入れることが重要ですが、金融機関が応じるケースは多くはありません。

▼財産分与が複雑化する

ペアローンで購入した不動産は夫婦の共有財産となるため、財産分与の対象となります。これにより、財産分与の過程が複雑化する可能性があります。具体的には、不動産の評価額とローン残高の差額を計算し、分与額を決定します。不動産価値が下落している場合、負債の分担方法について協議も必要です。また、一方が住み続ける場合、家賃相当額の取り扱いについても検討しなければなりません。

▼住宅ローン控除の取り扱いが変わる

離婚後、住宅ローン控除の適用条件が変更される可能性があります。主な変更点として、居住要件を満たさなくなった場合に控除が受けられなくなることが挙げられます。持分を譲渡した場合、譲渡した年分まで控除を受けられますが、それ以降は受けられなくなります。一方、共有持分を維持したまま転居した場合、控除継続の可能性があります。また、控除の按分方法が変更になる可能性もあるでしょう。離婚後の住宅ローン控除については、税務署への確認や税理士への相談が必須となります。

ペアローンで購入した自宅に元夫やその家族が住み続けている場合の対処法とは?

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結局、元夫と義母が住んでいる家のローン、私だけが払い続けている状況にはどう対処したらいいのでしょう?

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そうですね、A子さん。確かにその状況は公平とは言えません。いくつか対処法がありますよ。まず考えられるのは、住宅ローンを夫側に一本化する方法です。

▼夫側に住宅ローンを名義変更して一本化する

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住宅ローンを一本化って、どういうことですか?

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簡単に言えば、A子さんの名義になっているローンを元ご主人の名義に変更し、全ての返済責任を元ご主人側に移すことです。

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それって、簡単にできるのでしょうか?

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実は、いくつか障壁があります。
まず、元ご主人の協力が不可欠です。さらに、金融機関の承諾も必要になります。なお、元夫の収入や信用状況によっては、金融機関が難色を示す可能性も高くなります。ただし、元夫が安定した収入を得ており、これまでの返済履歴も良好であれば、交渉の余地は残されています。

この方法のメリットは、妻が住宅ローンの返済義務から完全に解放されることです。これにより、今後の人生設計を立てやすくなります。

一方、デメリットとしては、家の持分を手放すことになるため、将来的な資産価値の上昇分を得られなくなる可能性があることが挙げられます。元夫との関係性や経済状況を十分に考慮した上で、この選択肢が適切かどうかを判断する必要があります。

▼夫側から相当額の賃料をもらう

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はい、もう1つの方法として、元ご主人から適正な賃料をもらう方法があります。

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賃料? 自分の家なのに、家賃をもらうのですか?

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そうです。元ご主人たちが住み続けているのに、A子さんだけがローンを払い続けているのは公平とは言えません。だから、適正な賃料を設定して、それを元ご主人に支払ってもらうんです。

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適正な賃料ってどうやって決めるのですか?

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まずは物件の相場家賃を調査します。不動産業者に相談するのもよいでしょう。それを基に元ご主人と話し合いを持ち、家賃相当額の毎月の支払いを要求します。この方法のメリットは、現状の所有関係を変更せずに、妻の経済的負担を軽減できることです。住宅ローンの支払いの一部、あるいは全額を、この家賃収入で賄える可能性があります。

ただし、この方法にもデメリットがあります。「元夫が支払いに応じるのか」「毎月確実に支払いを行えるのか」という問題です。そうです。元ご主人たちが住み続けているのに、A子さんだけがローンを払い続けているのは公平とは言えません。だから、適正な賃料を設定して、それを元ご主人に支払ってもらうんです。

画像19: ペアローンが残ったままの離婚でトラブルに!対処方法にはどんなものがある?

さらに、税金の支払いについても考慮が必要になります。賃貸収入として申告する必要が生じる可能性があるためです。

ペアローンで購入した自宅を離婚後に売却できる?

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なお、ペアローンで購入した自宅は、原則として離婚後も売却することが可能です。ただし、いくつかの要件があります。

まず、ペアローンで購入した不動産は通常、夫婦の共有名義となっています。そのため、売却するには両者の合意が必要となります。一方が売却に反対する場合、売却手続きを進めることはできません。

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あと金融機関の承諾も必要です。住宅ローンが完済されていない状態での売却となるため、金融機関との交渉が求められます。なお、売却価格が残債額を上回っていれば、売却できる可能性が高くなります。

▼オーバーローンの場合の対処法

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しかし、一般的にオーバーローンですと、売却は非常に難しくなってしまいます。

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オーバーローンとは?

画像24: ペアローンが残ったままの離婚でトラブルに!対処方法にはどんなものがある?

オーバーローンとは、ローン残高が不動産の売却価格を上回る状態を指します。この状況下では、売却自体が困難になる可能性が高くなります。

対処法としては、まず任意売却が考えられます。これは競売よりも高値で売却できる可能性があるため、金融機関と交渉し、売却後の不足分の返済計画を立てることが重要です。金融機関との交渉により、一部債務免除や分割返済の合意を得られる可能性もありますが、金融機関の同意を得ることは一般的には非常に困難です。

▼持分のみを売却することができる

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ペアローンで購入した不動産の売却には、両者の合意が必要です。しかし、相手が売却に応じない場合でも、自分の持分のみを売却する方法があります。

A子さん、相手が売却に応じない場合、「共有物分割請求訴訟」を起こすことも選択肢の一つですよ。

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共有物分割請求訴訟?それは何ですか?

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共有物分割請求訴訟とは、共有物を分割する方法のうち、裁判所を通じて共有状態の解消を行うものです。主に「賠償分割」「換価分割」という2つの方法があります。賠償分割は、共有者のうち一人が他の共有者からその共有持分を購入する方法となります。例えば、A子さんが元ご主人の持分を買い取るか、逆に元ご主人がA子さんの持分を買い取るといったケースが考えられます。換価分割は、共有者が各共有持分を同一の買主に売却し、売却代金を持分に応じて分割することです。この場合、任意売却と競売のどちらかを行うことになります。

任意売却:通常の不動産売買と同じように、自ら買主を探して売却する方法。
競売:裁判所が主導して買主を募り、最高値をつけた人に売却する方法。

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なるほど…。
でも、訴訟というと少し怖いですね。

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確かに訴訟は大変な手続きですが、これは最後の手段として覚えておくとよいでしょう。まずは話し合いで解決を試みることが大切です。それでも解決が難しい場合に、このような法的手段を検討することになります。ただし、これらの手続きは複雑で時間がかかる場合があります。そのため、専門の不動産会社に売却を依頼するのも1つの選択肢です。

【まとめ】ペアローンの悩みは専門家に相談を!

ペアローンを組んで購入した家に関する問題は複雑で、解決が困難な場合がほとんどでしょう。

とはいえ、元夫やその家族が住み続けている状況で、自分だけがローンを支払い続けることは、精神的にも経済的にも大きな負担となります。そのため、このような問題に直面した際は、専門家への相談を強くおすすめします。弁護士、税理士、不動産の専門家など、それぞれの分野の専門家の意見を聞くことで、個々の状況に最適な解決策を講じることが可能です。法的な手続きが必要になった場合も、専門家のサポートがあれば、適切に対応できる可能性が高くなるでしょう。

ぜひお近くの専門家にアドバイスを求めてみてください!

記事監修:ネクスウィル社運営「ワケガイ」

株式会社ネクスウィルは、訳あり物件の買取に特化したサービス「ワケガイ」を提供。一般的な不動産と比べて、売却が難しいとされる訳あり不動産の買取をし、権利関係を整理するなどの手を加え、取扱や売却が困難とされている要因である"訳"を排除して再販をしています。

▼代表取締役 丸岡氏 プロフィール
訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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