中小企業における人材採用・定着が喫緊の課題となる中、お金の福利厚生制度として注目される「はぐくみ企業年金」が従業員の定着やエンゲージメント向上に寄与する可能性が高いことが、共同調査によって明らかになりました。
「はぐくみ企業年金」の導入効果が示す新たな視点
人材不足の深刻化は、例えば調査会社によれば2025年9月に「人手不足」を一因とする倒産件数が月間最多となるなど、経営にとって大きな問題となっています。人材の採用だけでなく、定着・エンゲージメントを高めることが、今後の企業経営には不可欠です。
また、物価高騰等により、従業員の間には将来の「お金の不安」が強まりつつあり、それを軽減するファイナンシャル・ウェルビーイング施策=“お金の福利厚生”が重要になっています。
今回の調査では、はぐくみ企業年金を導入している企業の従業員データを用いて、「加入要因」と「経営的効果(人材定着・エンゲージメント)」を、福利厚生戦略研究の第一人者である西久保 浩二氏との共同で分析しました。

調査結果ハイライト
・従業員が抱える「お金の不安」について、最多は「老後の生活資金」。60代では92.1%が回答しましたが、20代以下でも56.5%、30代では80.3%という高水準となりました。
・「はぐくみ企業年金」加入者は、非加入者に比べて従業員エンゲージメント(活力・熱意・没頭)の各構成要素および合計スコアで統計的に有意に高い結果でした。
・加入者は、企業が重視する「定着性」「勤勉性」「貢献意欲」の3つの態度指標すべてで非加入者を上回るスコアを示し、良好な労働態度の形成に寄与していることが示唆されました。
「お金の不安」とはぐくみ企業年金の関係
調査対象全体では、「老後の生活資金」が80.6%と最多で、次いで「日々の生活費の確保」(53.9%)、「病気やケガ」(49.8%)が続きました。年代別では、若年層は「日々の生活費の確保」「住宅の確保」が高く、各世代が直面するライフイベントに応じた不安が浮き彫りになっています。

こうした経済的な不安が「年金・資産形成制度」への関心と行動を後押ししており、はぐくみ企業年金の加入行動と背景として重要な要因であることが確認されました。

加入がもたらす経営的効果
人的資本経営の観点から、従業員エンゲージメントは企業価値向上の鍵とされています。本調査では、はぐくみ企業年金加入によって「活力」「熱意」「没頭」を含む全ての要素でスコアが高く、因果分析でもその傾向が確認されました。

さらに、定着性・勤勉性・貢献意欲という従業員態度の指標においても、加入者が非加入者を上回る結果となっており、制度導入が離職率低下・良好な労働態度形成につながる可能性が示されました。


今後の意義と展望
この調査結果は、「お金の福利厚生」であるはぐくみ企業年金が単なる制度改善にとどまらず、従業員のエンゲージメント向上と定着に具体的に影響を与えうるものであることを実証的に示しています。中小企業を中心に、働く人の将来不安を低減しながら人材定着を促す取り組みとして、本制度の活用が今後さらに広がることが期待されます。統計的アプローチでエンゲージメントを可視化し、その効果を定量的に追求することが、組織の持続的成長のためにますます不可欠となるでしょう。
今回の調査は、「はぐくみ企業年金」が従業員の態度形成に与える影響について、統計学的なアプローチで検証を行った点で、極めて意義深いものです。
分析の結果、「はぐくみ企業年金」の導入が、従業員のエンゲージメント向上に貢献する可能性が高いことが、データとして明確に示されました。活力、熱意、没頭といった3つの構成要素で有意な差が確認されています。
中小企業の人材不足は、今後の社会インフラを支える上でも重要な課題です。こうした時代において、本制度のような従業員の将来の安心を支える福利厚生が、定着率や貢献意欲の低下を食い止める手段のひとつとなり得るのであれば、非常に喜ばしいことです。
今後、人的資本経営が進む中で、統計学的アプローチによって従業員エンゲージメントを可視化し、その効果を定量的に追求していくことは、組織の持続的成長のために不可欠な取り組みとなるでしょう。本研究が、その一助となることを期待しています。
ー 山梨大学名誉教授・福利厚生戦略研究所 所長 西久保 浩二氏
今後、「はぐくみ企業年金」のような“お金の福利厚生”が、従業員の安心と企業の成長を両立させる戦略的な手段として注目されそうです。
調査企画・実施:共同研究体制(企業側+西久保氏)
対象:はぐくみ企業年金導入法人に勤務する男女(全国)
方法:インターネット調査/期間:2025年8月1日~8月21日/回答件数:2,744名
はぐくみ企業年金:厚生年金被保険者であれば、正規・非正規・役員も加入可能な確定給付企業年金(DB)。中小企業での導入が中心(導入法人の96%が従業員300名以下)、福祉・医療・教育関連約4割。
制度メリット:難しい投資知識不要、元本保証*、育児・介護休業時・退職時にも受取可能な点など。運用実績により不足が生じた場合は、事業主が補てん。
導入企業・サービス紹介サイト: https://bpcom.jp/hagukumikikin/
