先月の終わり、10月29日は世界脳卒中デーでした。この日は世界脳卒中協会(WSO)が主導し、世界各地で脳卒中に対する意識を高めるためのイベントが行われます。

現在は特に、脳卒中の症状に早く気づき、早く病院に連絡することの啓蒙が重視されており、日本では日本脳卒中協会が主導し、各地でブルーのライトアップを行うなどのイベントが開催されています。

日本でも死亡原因第2位の脳卒中、寝たきりや認知症になる原因にも

今年はこの日、開発中の脳梗塞治療薬で世界市場を目指す創薬ベンチャー"ティムス”がプレス向け事業説明会を実施。脳梗塞の現状と、今後の広がりが期待される治療薬について紹介しました。

「脳卒中」は主に「脳梗塞」と「脳出血」に分かれ、そのうち「脳梗塞」は、血管が詰まり脳への血液の供給が滞ることで生じるもの。この「脳梗塞」は、「脳卒中」の約7割を占めます。

実は「脳卒中」は、世界の死亡原因第2位。日本では第4位で、寝たきりとなる原因の第1位、認知症の原因としても第2位です。脳梗塞になり生存しても、片麻痺、言語障害、記憶障害などさまざまな障害に苦しむことが多く、本人だけでなく家族や医療経済の大きな負担となります。

脳梗塞にかかる人の数は日本でも高齢化に伴い今後も緩やかに増加することが予想されており、まさに他人事ではない病気だといえます。

脳梗塞治療薬の現状の課題

画像: 脳梗塞治療薬の現状の課題

脳梗塞のなかには、急性期脳梗塞というものがあり、これは血栓などが原因で血管が詰まり血流が悪くなることが原因でおこります。脳梗塞にかかると、時間と共に救えない脳が拡大します。時間が経てばたつほど脳や血管も脆弱になり、悪化していきます。

脳梗塞から救う方法には、血栓を除去する血栓溶解療法・血栓回収療法、炎症を抑え、神経細胞の壊死を抑えるなどがあります。

現在、米国FDAに承認されている唯一の急性期脳梗塞の治療薬がt-PA。先進各国で共通に承認されているのもt-PAのみです。この薬は唯一の治療薬にもかかわらず、脳梗塞患者全体の10%未満にしか使われていないと推定されています。これは原則的に発症後4.5時間以内に投与しなければならないことや、血栓を溶かす機能と同時に出血のリスクもあることなどが原因です。

脳血管疾患の年間医療費は1兆8千億円超、「TMS-007(JX10)」実用化への期待が高まる

画像1: 脳血管疾患の年間医療費は1兆8千億円超、「TMS-007(JX10)」実用化への期待が高まる

こうしたことから、長年にわたり、脳梗塞の新しい治療薬が待ち望まれていました。それが、現在開発中の治療薬TMS-007です。

TMS-007は、脳梗塞の出血性変化を抑え、抗炎症作用を併せ持ちます。動物実験でも多様な抗炎症作用が認められており、期待が寄せられています。またt-PAとは異なり、4.5時間ではなく、24時間以内の投薬も可能になります。

画像2: 脳血管疾患の年間医療費は1兆8千億円超、「TMS-007(JX10)」実用化への期待が高まる

今後、臨床試験が成功し承認を得られれば、広い時間枠で多くの脳梗塞患者が適応となり、高度医療が普及していない施設でも投与可能になります。特に、途上国など脳梗塞発症数が多くても有効な治療を提供できない地域でも利用できるようになるため、多くの患者の救済につながります。

脳血管疾患の年間医療費は2022年に1兆8142億円に達しており、脳梗塞は再発率も高く、経済負担の増大にもつながっています。また、後遺症による介護、リハビリテーションにかかる負担増も同様に課題となっています。

こうした状況に、2018年には脳卒中や心筋梗塞などの循環器病の予防推進と、迅速で適切な治療体制の整備を進めることで健康寿命を延ばし、医療・介護費の負担軽減を図ることを目的とした法も成立。国も、脳梗塞をはじめとする脳卒中の包括的予防や治療体制の整備に力を入れています。

2040年には65歳以上が全人口の35%を占めると推計されるなど、超高齢社会が深刻化する中で、経済負担や介護・リハビリテーションの負担増大にも影響する脳梗塞治療の根本的な解決策は急務。その一端を担う「TMS-007(JX10)」の実用化に、期待が高まります。

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